【第1回の趣旨】
タナベコンサルティングのPR/広報研究会では、多種多様な他企業の成功事例から、自社におけるPR戦略構築~具体的実装力を強化する方法を学び、自社の魅力を最大限に発信する広報・PRのメソッドを提供する。
第2期第2回のテーマは「サービス/商品PR」。自社サービス/商品をステークホルダーへ情報拡散させていく「情報連鎖」を生み出すさまざまな仕掛けを、ゲスト講師2社(ダイショー様、やまやコミュニケーションズ様)にご講演いただいた。
開催日時:2025年4月24日(福岡開催)
はじめに
ダイショーは、創業者が営んでいた焼肉店の焼き肉のたれを販売する大昌食品として創業。約60年間、「焼肉のたれ」「味・塩こしょう」「鍋スープ」などを他社に先駆けて開発し、「おいしさで・しあわせをつくる」を企業理念に、私たちの食生活を豊かにする商品を提供してきた。「“楽しい味”で世界にプラスを。」を新たなビジョンとして掲げ、広告やSNS、店頭などでさまざまな仕掛けを実施し、多くの支持を集めている。
本研究会では、「ダイショーが行う広告・PRとは」をテーマとして、同社デジタルマーケティング課の責任者である宮下秀美氏にご講演いただいた。これまで取り組まれてきたメディア戦略の中で、1つの取り組みで終わらせない「だけじゃないPR」や「お金をかけないPR」など、体的な実践事例を詳しく解説いただいた。
新たなビジョンはプロジェクトメンバーを中心に策定された
出所:ダイショーコーポレートサイトより
代理店任せにしない自立した「だけじゃないPR」メディア戦略
同社の広告は、ただ広告を出稿するだけでなく「+α」の効果を狙ったPRを意識し、戦略的に実施する。テレビCM、ラジオCMを例に特徴を挙げたい。
①テレビCM
いつも同じ企業にお願いするのではなく、コンペ形式をとり、流行を取り入れながら商品を生かすCM動画を創る。生活者(視聴者)だけではなく、流通のバイヤーもターゲットとしているため、CM枠は視聴率だけで判断せず、バイヤーが見ている番組を選択するなど、流通配荷対策にも意識を向ける。
②ラジオCM
CMを展開するだけではなく、 工場見学や農業収穫体験などの協賛イベントを掛け合わせることで、さまざまな拡散が図れるよう仕掛けている。
ラジオと連動したイベント「アナウンサー体験」の告知
出所:宮下氏講演資料
お金をかけないPR手法
食品メーカーの商品をミニチュアサイズに再現した玩具のガチャガチャが増えている中、同社製品はなかなか取り扱ってもらえなかった。そこで、同社からガチャメーカーへ代理店を通してアプローチし、商品化を実現。3日で完売する店があるほどの人気を博し、要望に応えて再販されたほどだ。商品化に際し同社は監修を行ったのみで、費用をかけずに話題づくりや、SNSでの拡散を図ることができた。
YouTubeやInstagramなどのSNSで自社商品だけでなく他社商品をこまめにチェックし、SNS内で紹介してもらえそうなYouTuberやインフルエンサーへDMや商品サンプルを送付。費用を掛けずに取り上げてもらえるよう工夫を凝らす。SNSでは企業間コラボでさまざまな企業とコラボレーションをし、手間を惜しむことなくコミュニケーションをとることで話題作りやフォロワー獲得につなげている。
SNSや店頭で活用される動画は社員が制作。その数は年間100本以上にも上る。今回の視察参加者には撮影体験と簡易的な編集ソフトの操作をレクチャーいただいた。「やってみよう」という気持ちがあれば、社内でも制作できるという気付きを得た。
2024年10月全国発売すると瞬く間に完売したガチャガチャ。25年2月に再販された
出所:宮下氏講演資料
周囲を巻き込んだPRの実践
ダイショーでは、各エリアごとの営業所で強化する商品や時期をヒアリングし、各営業所に最終判断を委ね、戦略的にスポットCMを展開する。パブリシティーでの告知コーナーなどには、できる限り各エリアの自社社員が出演することでPRに対する“自分ゴト化”を図るという。営業も巻き込んだ取り組みを実践することで、PR後の営業活動ともスムーズに連動できる。
動画制作の内製化やSNSへの取り組みなど、同社においてPR活動が活発なのは、経営層や社内のメンバーを巻き込んだことが要因として挙げられる。周囲をどれだけ巻き込み、推進していけるかPR活動の成功のポイントと言えよう。
撮影体験の様子
