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研究リポート
ホールディングス・グループ経営モデル研究会
6つのホールディング経営タイプをベースに、新たなグループ企業を研究します。自社がどのようなホールディングスモデルとして進化するのか、共に考えましょう。
研究リポート 2025.04.17

新たな価値を創造し続け、成長するホールディング経営 三ッ輪ホールディングス

【第3回の趣旨】
タナベコンサルティングのホールディングス・グループ経営モデル研究会第4回では、三ッ輪ホールディングスの代表取締役社長である尾日向竹信氏を招き、新たな価値創造をし続けるホールディングス経営の考え方や、これまでの成長の軌跡について講演いただいた。
同社は、LPガス事業を中心に展開。カーボンニュートラル化や都市ガスの自由化など、市場の競争激化が進む中、付加価値を生み出すための経営資源活用に課題感を持っていた。
これらの課題に対して、新しい価値を創造し続ける人材開発や、各事業の成長スピードを高める経営スタイルとしてのホールディングス体制への移行など、グループとしての成長に取り組んでいる。
本講演では、同社が抱える課題に対して、ホールディングス体制への移行を通じてどのように解決を図ったのか、その背景や具体的な取り組みを紹介する。

開催日時:2025年3月28日(東京開催)

 

はじめに

 

三ッ輪ホールディングスは、神奈川県横浜市で1940年に練炭製造・石炭販売事業を創業した三ッ輪産業を傘下に持つ。同社は、会社設立やM&Aを積極的に実施することで、LPガス事業や電力小売業を展開し、成長を続けてきた。

 

同社のホールディングス化への取り組みは、さらなる成長を実現するための事業の多角化・深化を「人」を軸に据えて推進している。グループ内企業間のシナジーを最大化し、スケールアップによる付加価値向上を目指す運営体制を構築している点が特徴である。

 

また、ガスや電力といったエネルギーソリューションを通じて、社会課題の解決や貢献活動を実現し、社会価値を発揮することを目指している。さらに、コーポレート機能を集約することでコストの最適化を図り、事業成長と収益力向上を両立させている。

 


グループ全体での事業拡大
出所:三ッ輪ホールディングス講演資料

 


 

事業成長を実現するための人材採用への取り組み

 

カーボンニュートラル化や都市ガスの自由化といった市場競争の激化に対し、どのように価値を発揮していくかが同社の重要な課題であった。このような経営環境を踏まえ、同社は新たな価値を創造し続けることを経営方針として掲げ、その実現に向けた人材採用の強化に取り組んでいる。

 

同社は、「挑戦している事実」を生み出し、それを「挑戦の起点となれる人材」に訴求することが採用活動の命題であると考えた。この方針のもと、同社のビジョンや取り組みに共感し、惹かれた人材が集まることで価値創造が加速するという好循環のサイクルを構築している。

 

人材採用の手法も変えており、経営者自身が直接リクルーティングを行う「一本釣り採用」や、採用部門を社長直轄型の組織にすることで採用スピードの強化と社内における採用ブランディング強化を行った。

 


提供価値を向上させる人材の考え方
出所:三ッ輪ホールディングス講演資料

 

遠心力と求心力で成長を目指すホールディングス化

 

同社は、LPガス事業を祖業とし、現在も既存事業の柱として位置付けている。しかし、前述のように「挑戦をし続ける人材」が入社した後、既存事業の組織文化や人材とのギャップによる“居心地の悪さ”が原因でパフォーマンスを低下させるリスクが存在していた。この課題を解決するため、同社は組織構造を変革し、「同一組織内での同居」から「同一グループ内での同居」へと移行するホールディングス体制を導入した。

 

中核事業を含む各事業会社を並列の関係とすることで、従来の親会社と子会社の上下関係に起因する「都落ち感」を払拭した。また、事業ごとに会社を切り出すことで、各事業の独自性を尊重し、社員が感じていた居心地の悪さを解消することに成功している。このような経営スタイルへの移行において、判断基準として最も重視されたのは「ヒト」である。

 


ホールディングス体制への移行
出所:三ッ輪ホールディングス講演資料

 

ボトムアップ型によるグループブランディングの強化

 

グループシナジーの発揮とグループ人材の共存意識向上のため、ミッションステートメントの策定やロゴマークの作成を実施した。作成プロセスでは、各社の一部役員や社員が参加し、意見を出し合うことで、自社を「ジブンゴト」として捉える意識を醸成するとともに、グループ全体の最適化を視野に入れるきっかけを作った。

 

また、代表者が全拠点を訪問し、社員との対談を行う「トップキャラバン」を実施している。多くの従業員との対話を通じて、基盤ステートメントの背景や想いを直接伝えることで、一体感を醸成することを目指している。

 


ボトムアップ型のグループ横断的な取り組み
出所:三ッ輪ホールディングス講演資料

PROFILE
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尾日向 竹信 氏
三ッ輪ホールディングス株式会社 代表取締役社長