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研究リポート
ホールディングス・グループ経営モデル研究会
6つのホールディング経営タイプをベースに、新たなグループ企業を研究します。自社がどのようなホールディングスモデルとして進化するのか、共に考えましょう。
研究リポート 2025.04.15

中小企業から中堅企業にステージアップするためのポイント メイホーホールディングス

【第4回の趣旨】
タナベコンサルティングのホールディングス・グループ経営モデル研究会第4回では、メイホーホールディングスの代表取締役社長である尾松豪紀氏を招き、中小企業から中堅企業にステージアップするためのポイントをテーマに講演いただいた。
本講演では、経済成長と企業成長が同期しない現代において、中小企業が中堅企業へとステージアップするための戦略を解説している。特に、既存事業の深化と新規事業の探索を両立させる「両利きの経営」をグループ経営によって実現する手法を中心に、5段階の成長プロセスとその実践方法について、実際に取り組まれた経験に基づいて体系的に解説している。
開催日時:2024年3月28日(東京開催)

 

はじめに

 

メイホーホールディングスは、1981年設立のメイホーエンジニアリングを母体とし、2017年に持株会社制へと移行。「増収増益企業を共創するネットワークの拡大を通じて、一人ひとりがしあわせを実感できる会社を創造する」というグループ理念のもと、中小企業経営支援プラットフォームを中核に事業を展開している。

事業領域は、建設関連サービス、人材関連サービス、建設事業、介護事業と多岐にわたり、グループ会社は21社に上る。2021年6月には、東証グロース市場と名証ネクスト市場への上場を果たした。

同社の強みは、M&Aを戦略的に推進し、地域密着型企業との資本提携を通じて全国的なネットワークを構築している点にある。各グループ企業に対しては、経営効率化、人材支援、業務連携などの多角的なサポートを提供し、収益力の強化を後押ししている。尾松氏の指揮のもと、中小企業の集合体として着実な成長を遂げている。


グループ事業の相関図
出所:メイホーホールディングス講演資料


 

両利きの経営で持続的成長を実現

 

現代の変動する経済環境下において、企業が持続的成長を遂げるためには「両利きの経営」が不可欠である。この経営手法は、既存事業の「深化」と新規分野の「探索」を同時に実現することを目指している。しかし、単一企業でこの両立を実践することは非常に困難だ。そこで、グループ経営がこの課題を解決する手段として注目されている。

グループ経営では、複数の企業が役割を分担することで、一部の企業が既存事業の強化に注力し、他の企業が新規分野の開拓に挑戦することが可能となる。この仕組みにより、両利きの経営を効率的に実現することができる。

グループ経営のメリットは多岐にわたり、スケールメリット、リスク分散、シナジーの創出、M&Aによる成長加速、デジタル技術の統合、ブランド力の向上、グローバル展開の加速などが実現する。

これは単なる企業としての規模拡大ではなく、変化に柔軟に対応し、持続的成長を可能にする戦略的である。


両利きの経営
出所:メイホーホールディングス講演資料

 

段階的成長プロセスと本社機能の強化

 

中小企業が中堅企業へと成長を遂げるためには、5段階の戦略的アプローチが効果的である。まず、M&A戦略による規模拡大を実施し、会社として成長への覚悟を固めるとともに、M&Aを推進するための体制を整備する。次に、ホールディング化を通じて事業ポートフォリオを再編し、個社戦略とグループ戦略のバランスを図りながら本社機能を強化する。第3段階では、上場によってブランド価値を向上させ、企業の信頼性と認知度を高める。第4段階では、M&A戦略を加速させることでさらなる成長を促進し、最終段階で中堅企業としての地位を確立する。

これらの成長プロセスにおいては、組織構造、経営戦略、企業文化の適切な調整が不可欠である。特に、本社機能の強化は重要であり、経営企画、総務、人事・労務、内部監査、財務・経理などの機能を充実させることで、グループ全体のガバナンス向上とシナジー創出の基盤を構築する。


メイホーホールディングスの段階的成長
出所:メイホーホールディングス講演資料

 

価値観の共有と人・数字の経営基盤強化

 

グループ経営成功の鍵は、経営者の意識改革と全社員との価値観共有にある。M&Aは単なる企業買収の手段ではなく、価値観や企業文化を融合させるプロセスでもある。経営者は「惚れられる存在」となることを目指し、価値観共有のための教育を実施し、社員との対話を重視する必要がある。「人は正しい意見よりも、好きな人の意見を聞く」という視点を持ち、コミュニケーションを最重要視することが求められる。

また、財務面での基盤強化も欠かせない。月次決算を迅速に行い、財務会計の視点から未来のバランスシートを常に意識することで、健全な投資判断を可能にする。このような財務の透明性と迅速性は、経営の安定性を支える重要な要素である。

人材面と財務面の両輪で経営基盤を強化し、部分最適ではなくグループ全体の最適を追求することが、中小企業から中堅企業へのステージアップを実現する核心である。


メイホーホールディングスが提唱するグループの成長サイクル「弾み車」
出所:メイホーホールディングス講演資料

PROFILE
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尾松 豪紀 氏
株式会社メイホーホールディングス
代表取締役社長