【第4回の趣旨】
DX戦略推進研究会では、データの活用による付加価値向上と人材育成の推進、そのための骨太のDX戦略をテーマとして、DX推進のヒントを提供。生成AIなどの先進的なDX推進活動で顧客とのコミュニケーションモデルの創造や、革新的な業務改善に実現している企業を紹介する。
第4回は「デジタルを活用した事業設計」をテーマに、顧客体験の向上、業務効率化、新たなビジネスモデルの創出を実現し、変化の激しい市場環境で持続的な成⾧を続けるためのDX推進の在り方について学んだ。
開催日時:2025年3月17日
DXを積極的に推進
東北大学は1907年創立後、「研究第一」と「門戸開放」の理念のもと、世界最高水準の研究・教育を推進してきた。近年はDXを積極的に推進し、教育・研究・業務の各分野で革新的な取り組みを展開。2020年には「オンライン事務化宣言」を発表し「業務のDX推進プロジェクト・チーム」を中心に「窓口フリー」「印鑑フリー」「働き場所フリー」の業務改革を進めている。
教育のDXにおいては、学生の創造力醸成と社会を先導するリーダーの育成を目的に推進。研究のDXではデータ駆動型研究の推進や、リモート接続による効率的な計測・遠隔教育の実現など、先進的な研究環境の構築に取り組み、国際卓越研究大学にも認定された。
2024年からは「大学DXアライアンス」を始動し、他大学や企業との連携を強化することでDXによる業務改革を戦略的に実行。これらの取り組みを通じて、東北大学はニューノーマル時代にふさわしい教育・研究環境の実現と、社会との共創を推進している。
東北大学ビジョン2030
経営者・IT部⾨・業務部⾨が⼀丸となるためのビジョンと推進体制の構築
グローバリゼーションや新技術が台頭する中、世の中ではSDGsや高齢化への対応が求められている。その中で大学には、未来の変化に対応し、新たな価値創造と社会変革の牽引が求められる。
東北大学ではコネクテッドユニバーシティ戦略を掲げ、2030年目標として「先の読めない大変革時代の課題解決を先導し、社会価値を創造する」というビジョンと、全方位DX、スピーディでアジャイルな経営への転換、共創による成長の3つの方針を設定した。
この戦略では「データ活用による大学経営の高度化」「ニューノーマル時代にふさわしい働き方への変革」「スマート・ホスピタルの創出」を大学経営の変革として定義している。このような世の中ではデジタル技術を使うべき、という信念のもと魅力ある職場環境を創るための「業務のDX推進プロジェクト・チーム」を立ち上げ、組織戦略・推進戦略・事業戦略の各フェーズに合わせてアジャイルに変化しながら業務のDXを推進している。
アジャイルでスピーディなDX推進
東北大学のDX推進では具体的に、「経営の見える化」「働き場所フリー」「印鑑フリー」「学生証・職員証のデジタル化」「生成AIの活用」「人材と組織変革」を実行してきた。
経営の見える化では「データ活用による大学経営の高度化」を目的に、学内のあらゆる情報を集約・統合することでスピーディなデータの見える化を実現。「働き場所フリー」では、コロナ禍の一時的な取り組みでは終わらせず、新たな価値を生むための恒常的な取り組みとして人事制度にも反映させた。
学生証・職員証のデジタル化では、東北大アプリを導入し、入学前から卒業後まで横断的なマネジメントデータ基盤によるデータ活用を目指している。生成AIの活用では、固有のナレッジデータベースを構築し、回答精度向上、回答の最新化、独⾃ドメイン回答などを⽐較的容易に実現。人材と組織変革では、スキルとマインド両面で大学経営の中枢を担う人材を育成するための改革に取り組んでいる。
業務のDX推進プロジェクト・チームでの取り組み事項
VUCA時代のDXの推進について
人口減少が進む現代において、業務負荷の軽減と効率化を両立させるための手段はデジタル化に他ならない。本講義では、経営者、IT部門、業務部門が一丸となり、スピーディかつアジャイルに変化を恐れず、まずは行動に移すことの重要性を学んだ。
特に、サービスを享受する学生の視点に立ち、学生が最もアクセスするツールの選定を行うことがDX推進において不可欠である。「使う人」の視点で改革を進めることで、より実効性のある施策が実現できる。これまでの常識を徹底的に排除し、シンプルで迅速な改革が求められる。
また、DX人材育成のための研修やDXチームへの参画を通じて、全ての部門が一体となった推進体制の構築が必要である。
業務のDX推進プロジェクト・チームの変遷
