【第1回の趣旨】
タナベコンサルティングのPR/広報研究会では、多種多様な他企業の成功事例から、自社におけるPR戦略構築~具体的実装力を強化する方法を学び、自社の魅力を最大限に発信する広報・PRのメソッドを提供する。
第2期第1回のテーマは「チャンスを捉えた戦略的コミュニケーション」。目的とターゲットを明確に定め、その機会をしっかりととらえた戦略的コミュニケーションでステークホルダーとの関係を構築した取り組みについて、ゲスト講師2社(サンコー、獨協大学)にご講演いただいた。
開催日時:2025年2月17日(東京開催)
はじめに
1964年に埼玉県草加市に開学した獨協大学。現在では4学部11学科3研究科を擁しており、約8300人が学ぶ私立文系総合大学である。
本研究会では、2024年に同学が迎えた創立60周年記念に関連する活動をどのように展開したのかを講話いただいた。同学は、全てのステークホルダーをPRの対象と定め、60周年記念事業を単なる節目の行事としてだけでなく、多方面との関係を積極的につなぐ場とし、成功を収めた。
出所:獨協大学HP
セオリーにとらわれない取り組み
一般的な周年記念事業では、コンセプトを決め、そこから計画的にシンボルマークとキャッチコピーをつくり、式典の挙行、記念品の配付、記念誌の発行、講演会、イベント、寄付金募集などさまざまな活動を行う。だが、同校60周年記念事業の企画段階では、コロナ禍の影響もあってセオリー通りの計画ができず、大幅な事業縮小を余儀なくされた。
そんな中でも強力に部門間連携を推進し、活動コンセプトである「つなぐ」を重視しながら企画を練り上げていった。部局提案による企画に加え、若手職員のアイデアの実現や、参加型の企画・イベントを通じてステークホルダーと企画段階から密接につながることで、一般的な周年記念よりも特別感のある企画を多数実施することができた。
また、ステークホルダーの協力が多く集まることで、結果的に全方位にさまざまな取り組みをすることができたのもポイントである。
周年記念に関わる活動に絶対的な「正解」はないので、ぶれないコンセプトを掲げ、誰に向けたプロモーションなのか、ターゲットを明確に持つことが重要である。
出所:獨協大学講演資料
周年を機にしたステークホルダーとの接点づくり
同学の考えるステークホルダーは、学生、教職員、父母、卒業生といった大学関係者だけでなく、未来の学生となる高校生や小中学生、近隣住民、行政や企業団体など多岐にわたる。それぞれのステークホルダーとつながりを持つため、様々な企画を実現していった。
▼企画例
・DOkkyoドイツフェス
・獨大生に伝えたい相馬松原魅力MAPの発行
・ヤクルトスワローズ並木秀尊選手トークイベント
・ポップスピアニストのハラミちゃんによる父母の会寄贈ピアノ披露イベント
・大学紹介ミュージカルPV制作
出所:獨協大学講演資料
周年事業を通したブランドの再構築
同学は60周年を機にメインのコンセプトである「つなぐ」とともに、裏コンセプトとして「RE-BORN」を掲げ、ブランドイメージの再構築を図った。今までのオリジナルキャラクター路線から学生を主役にしたイメージ戦略を展開。学生・教職員・企業との協働プロジェクトによりオリジナルアパレル商品を開発し、ECサイト「[DOKKYO]MARKET」で販売している。学生モデルを広報媒体で露出させたことで、ステークホルダーとの心理的なつながりが強まることにもなった。
同学の記念事業の取り組みは多岐にわたっており、点と点がつながり、面でPRできた好事例である。その上で、全方位のステークホルダーに「自分たちで作り上げた」という意識を醸成させたことで、60周年記念事業が自分事化された点においても優れている。
ハラミちゃんによる父母の会寄贈ピアノ披露イベント
出所:獨協大学HP
