【第3回の趣旨】
タナベコンサルティングの第3回ナンバーワンブランド研究会では、独自のブランディングの先進事例を学ぶため、株式会社新和建設と、ゼネラルパッカー株式会社へ訪問しご講演いただいた。
両社はBtoB、BtoCと顧客が違うものの、独自のブランド価値を設計している。自社のベース価値に加えて、強みを長期的経験価値(=「特化した専門性」)と捉え、磨き上げることで唯一無二のブランドを構築している企業である。社屋や工場の視察、社員の方々の説明、そして社長の講演を通じて両社が確立しているブランディングについて参加者の皆様と共に考える機会となった。
開催日時:2025年2月4日(愛知開催)
はじめに
新和建設は、1969年に創業し、57期目を迎える総合建設会社である。同社の経営理念は「木と技と心でお客様の『幸福の城』の実現を図り、社員の成長と会社の発展を目指す。」であり、創業以来この理念を軸に事業を展開してきた。新和建設は、自然素材を活用した家づくりを得意とし、住む人の健康と快適さを追求した住宅を提供している。特に、東濃桧にこだわった木材をふんだんに使用した「木の家」や、地元の気候風土に適した設計が特徴である。
また同社は、注文住宅の設計・施工を中心に、リフォーム事業や不動産事業も手掛けており、地域密着型のサービスを展開。環境への配慮を重視し、自然エネルギーを活用したエコ住宅の提案や、地域の森林資源を活用した木材の使用を推進している。これにより、持続可能な社会の実現にも寄与している。
ドアと床材を実際に組み合わせてお客様の理想を追求するショールーム
人(大工)づくりが、持続的な価値提供を可能にする大工育成ビジネスモデル
業界として大工の高齢化が課題となる中、若手大工の育成に特徴のある同社は、大工の平均年齢が全国平均を10歳下回るなど、業界内でも珍しい若い世代が活躍する環境を整えている。独自の研修プログラムを導入し、基礎から応用まで体系的に学べる仕組みを創業以来構築しているのである。
また業界特有の教育方法として、親方を頻繁に変える制度が技術習得の妨げとなっていることが多いが、同社では6年間同じ親方のもとで学ぶ仕組みを採用し、親方との信頼関係の構築と技術向上を実現している。伝統と革新を融合させ、次世代の職人文化を支える使命を果たしながら、業界の未来を切り開く存在である。
講演資料より引用
施工後もお客様に安心と信頼を提供する「一生おつきあい宣言」を掲げている
人(大工)づくりが家づくり
お客様満足度98%を誇る新和建設は、建設業界において独自のブランディングを確立している。その根幹にあるのが、自社で大工を育成する仕組みだ。高い技術力と専門性を持つ自前の大工がいるからこそ、「一生おつきあい宣言」を掲げ、無期限保障や無料点検システムを実現している。これにより、施工後もお客様の住まいを見守り続け、長期的な安心と信頼を提供している。
また、理想の暮らしを体感できるショールームを展開し、実際の空間で暮らしを想像しながら具体的なイメージを共有できる仕組みを整備。自社大工の存在が他社にはない価値を生み出し、理想の住まいを形にする生涯のパートナーとして、唯一無二のブランドを築いている。
素材のわかる匠の技伝承ビジネスメソッドが2015年にGOOD DESIGN賞を受賞
古民家再生のナンバーワンブランドへ
新和建設は「一生おつきあい宣言」を掲げ、無期限保障や無料点検システムを通じて、顧客に長期的な安心を約束するビジネスモデルを構築している。また、「建設業」から「暮らし」へとドメインをシフトし、顧客が能動的に体験できる接点を提供。事前告知型サービス業として、暮らし全体を支える新たな価値を創出している。
さらに、選ばれた顧客に対して長期的価値を提供するため、自前の大工棟梁による高い専門性を確保。耐久性の高い東農檜や優れた設計力、社会課題解決への取り組みをベース価値とし、工務店ビルダーから「人・街・暮らしの価値創造グループ」へと進化を遂げている。
工務店ビルダーから「人・街・暮らしの価値創造グループ」へ進化を遂げている
