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研究リポート
『成長M&A』実践研究会
「戦略」と「実行のスピード」をポイントに、アフターコロナ時代に求められる戦略の方向性と、それを実現するためのM&A・アライアンスの手法を学びます
研究リポート 2025.02.06

裁判例から学ぶM&Aのリスクとリスクヘッジ方法 PLAZA総合法律事務所

【第5回の趣旨】
タナベコンサルティングの成長М&A実践研究会は、M&Aモデルを確立している企業から、独自のM&Aノウハウと業種の特徴を取り入れた事例を学ぶ場を提供。M&Aを活用した成長戦略を実現し、自社の企業価値を向上させるための道しるべを提示している。
第5回のテーマは「コーポレート戦略」。ゲスト講師2社(KYCOMホールディングス、PLAZA総合法律事務所)から「コーポレート戦略・法務DD」について講演いただき、M&Aを積極的に推進する企業の経営戦略・事業戦略について深く考察した。

開催日時:2024年10月25日(東京開催)

 

 

はじめに

 

PLAZA総合法律事務所は、北海道・札幌と東京の2拠点で事務所を運営している。同事務所は、1981年に札幌事務所、2012年に東京事務所を開業し、弁護士に加え、社労士、行政書士が所属し、顧客の個々のニーズに合わせた総合的なサービスをワンストップで提供している。

 

同事務所では、長年にわたり企業再建を支援し、多数の企業の経営再建や事業売却に関わってきた。その経験・実績に基づき体得した「売り手の心」を理解しながら、買い手サイドへの戦略的なアドバイスを行っている。

 

M&Aにおいては、通常は買い手サイドを支援しているが、顧客が買い手側・売り手側のどちらであっても依頼人が優位になるよう、依頼人の立場に寄り添い業務を遂行している。

 


研究会参加者は、具体的な紛争事例を通して法務DDの重要性を学んだ

 


 

法務DD担当の弁護士としての心構え

 

法務DD(デューデリジェンス)担当の弁護士として重要なことは、売り主への法務チェック依頼時の交渉を、丁寧かつ円滑に進めることである。売り主の心情に寄り添う姿勢で対応しないと、DDが進まなくなってしまうからだ。

 

資料提出依頼は売り主と直接やり取りせず、売り主との信頼関係ができているM&A担当者経由で依頼するなど、必要資料の集め方にも気を配りながら円満かつ円滑な承継を目指している。

 

売り主にとってストレスのないコミュニケーションを第一に考え、円満なディールには経験豊富なM&A担当者に間に入ってもらいながら進めることが必要だと感じ、状況に応じてM&A担当者を巻き込みながら最適な対応を行うことを心掛けている。

 

法務DDの主な調査項目は株主関係と労使関係

 

中小企業間のM&Aでは、法務DDは必要不可欠である。特にオーナー企業を買収する場合、売り手に悪気はないが社内制度や規則がなく、従業員の残業代未払いリスクが生じるケースも多くある。買収後に問題が発覚しないよう、法務DDを実施し、リスクに備えることが重要だ。しかし、ディール優先で進める仲介会社もあるので注意が必要である。

 

法務DDでは、主に2項目を調査する。1つ目は株主関係である。株主の変遷や株式の連続性に着目し、株主総会・取締役会の議事録や重要なトピックスは、過去5年分程度用意して確認する。

 

2つ目は労務関係である。特に、管理監督者として勤務しているものの、実態は「名ばかり管理監督者」と判断された判例が多々あるので要注意だ。この場合、管理監督者は管理者ではないため残業代未払いリスクが生じ、M&A後、争いに発展することもある。

 

PROFILE
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小幡 朋弘 氏
弁護士法人PLAZA総合法律事務所
弁護士