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研究リポート
アグリサポート研究会
アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート 2025.01.15

次世代施設園芸の取り組み ~収量・生産性へのこだわりとさらなる挑戦~ 四万十みはら菜園

【第2回の趣旨】
アグリサポート研究会(全6回)は、「アグリ関連分野の持続的成長モデルを追求する」をコンセプトに掲げている。
第2回は高知県での視察を行った。高知県は一年を通じて平均気温が高く、耕種農業が盛んである。日照時間も多い温暖な気候が特徴であり、森林面積は日本一で、一次産業の割合が高い県である。
1日目はゆずの有機農業面積で日本一の馬路村の取り組み、2日目は四万十町にある四国最大規模の四万十みはら菜園・ベストグロウ様によるIOTを活用した大規模栽培について、現地現場で学んだ。

開催日時:2024年12月5日~6日

 

 

はじめに

 

四万十みはら菜園は2003年に設立され、創業時からトマトを栽培し、カゴメと取引を重ねてきた。現在では1.5haはカゴメ向け、1.4haはカゴメ以外に向けてさまざまな品種のトマトを栽培している。販路については市場に卸さず、取引先と事前に単価と販売数を決めて生産・販売している。

 

また、設立当初から高さ5mの「本社農場」2.7ha、6mの「四万十農場」2.9haでは、複合環境制御装置に代表されるオランダの最新技術を取り入れている。これによって1年中トマトを栽培することを可能にし、高い生産性を誇っている。

 

 

広大な敷地面積を誇るトマト菜園
広大な敷地面積を誇るトマト菜園

菜園内で生産されているトマト
菜園内で生産されているトマト

 


 

収量・生産性へのこだわり

 

四万十みはら菜園では、生産から収穫、選別、出荷に至るまで省人化・省力化にこだわることで高い収量を確保している。

 

生産では、オランダPriva社の複合環境制御装置を採用。センサーを利用してトマトの栽培に最適な温度・二酸化炭素濃度・湿度を維持している。また、天窓やファンを利用することで生育速度にばらつきがないように配慮。さらにクロマルハナバチを利用することで自然に受粉できる仕組みを整えている。

 

収穫では、ずらし作業(つる降ろし)にて果実を一定の高さにすることで、作業者が座ったままでの収穫を可能にした。これにより作業者の負荷は軽減され、効率よく収穫できる。

 

収穫後の選別では、ベルトコンベアを用いて複数人のライン作業で対応。箱詰めや出荷もロボットを用いて自動化に取り組んでいる。

 

箱詰めされたトマトを出荷に向けて積み上げるロボット(左) 6mの苗に対してスライド移動させることで座ったままでの収穫を可能にしている(右)
箱詰めされたトマトを出荷に向けて積み上げるロボット(左)
6mの苗に対してスライド移動させることで座ったままでの収穫を可能にしている(右)

 

 

労務管理の徹底

 

労務管理についてもPriva社製のシステムを採用している。「FS Reader」というキーデバイスを利用することで、いつ、誰が、どこで、何をしたかを管理できる。具体的には「作業者タグ(だれが)」「各レーンに設置された場所タグ(どこで)」「作業タグ(何を)」をFS Readerで読み込むことで、データがサーバ内に蓄積される。

 

これにより、作業者は手書きの日報を作成する負担が解消され、使用者は作業者ごとの能率や労働時間を正確に把握することが可能になった。また、CSVやExcelに出力することで、データを加工し、各種改善につなげることも容易になったという。

 

集めたデータを有効に活用する仕組みも構築している。毎週月曜日に開催されるミーティングでは、責任者間で前週の実績と当週の計画を決定。❶廃棄品の品目やその要因の内訳、❷作業スピードの変化に関する要因、という2点を主軸に実績を分析し、当週の総作業時間と人工を決定する。

 

データに基づいた労務管理を行うキーデバイス「FS Reader」
データに基づいた労務管理を行うキーデバイス「FS Reader」

 

 

6次化への挑戦

 

トマトを無駄にせず、最大限利用するという考えは、生産だけにとどまらない。

 

自社ブランド「凛と」を立ち上げて販売を強化しつつ、規格外品についてもトマトジュース(自社生産)、ドレッシング(OEM)やマヨネーズ(OEM)に加工し、販売することで無駄なく利用し、収益の最大化を図っている。

 

現在OEMで生産している加工品についても、将来的には自社で生産して販売まで手掛けていきたいとの考えだ。

自社ブランドトマト「凛と」
自社ブランドトマト「凛と」

PROFILE
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東 宣雄 氏
有限会社四万十みはら菜園
代表取締役