アグリサポート研究会では、「アグリ分野の持続的成長モデルを追求する」をコンセプトとして掲げている。
第6回は、アグリ業界において先進的な取り組みを行う企業を視察。
1日目は、株式会社寅福の代表取締役会長 加藤卓也氏より、「地域資源を利用したサステナブルな農業の取り組み」と題して、過疎地域における地域資源(温泉)を利用した持続可能なオランダ式大規模農業についてお話しいただいた。
2024年7月11日~12日開催
はじめに
2014年設立の寅福は、「農業の新たな価値を創造し、地域社会の持続可能な発展に貢献します。」を経営理念に掲げ、人口4,000人強の北海道上ノ国町にオランダ式大規模農業施設を建設し、トマト、アスパラガスやワイン用ぶどうを生産している。
同社は農業経験者ゼロからスタートし、数々のトライ&エラーを重ねながら、「持続可能な農業」を確立してきた。
また、自動化技術も積極的に取り入れることで高い生産性を誇り、現在では創業時と比較して15倍もの売り上げにまで成長している。
寅福が生産するトマト
まなびのポイント 1:ICTの活用と循環型農業の取り組み
複合環境制御システムにより、トマトの栽培に最適な温度、湿度、CO₂濃度になるように環境をコントロールする。農作物にとって最適な環境を維持しつつ、化石燃料の代わりに地域資源である温泉を活用。これにより化石燃料の使用量30%削減に成功している。
また、植物の残渣物を堆肥化し自社のアスパラ農場やぶどう農場に利用するほか、地元の農家に無償提供し、産業廃棄物ゼロの循環型農業を実践している。
環境最適化システムによる生産性向上
まなびのポイント 2:ハンデを克服してプラスに変える
人口約4,000人の過疎地域で人手不足というハンデを抱えながら、収穫から運搬、仕分けまで自動化技術を導入し、ハンデを乗り越えて高い生産性を維持している。
また、多様な人材の活用にも取り組んでいる。
シニア人材も雇用し、柔軟な働き方(朝5時から勤務し、気温が上昇する昼前には退勤するなど)を認めている。外国人の雇用にも積極的で、地域の人口増加にも貢献している(人口増加は自治体の交付金増加につながるため、自治体にとってもこの取り組みは有益である)。
トマト生産の自動化に向けた取り組み
まなびのポイント 3:脱炭素×スマート農業の取り組み~トマトがつなぐカーボン“マイナス”ストーリー~
同社では、現在取り組んでいる循環型農業に加えて、世界的に叫ばれているカーボンニュートラルから一歩進んだカーボン“マイナス”に向けて歩みを進めている。
森林資源が豊富な青森県むつ市で生産された木材の低質材をチップに加工し、バイオマスボイラーの燃料として利用。ボイラーから発生した熱とCO₂(排ガスを浄化装置でクリーンCO₂へ変換)をトマト農場で栽培に活用する。
そして、成長した完全循環型トマトから収益を得つつ、一部を森づくりへ還元する。
このような活動を計画し、現在むつ市で新農場を建設している。
カーボンマイナスに向けた取り組み