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研究リポート
ウェルビーイングでビジネスを成長させる研究会
新たな時代で勝ち残るための生活者視点・お客様視点の事業戦略をウェルビーイングの視点から学びます。
研究リポート 2024.10.31

ビジョン「世界のための沖縄になろう。」実現に向けて コーカス

第3回の趣旨
タナベコンサルティングの「ウェルビーイングでビジネスを成長させる研究会」では、ウェルビーイングを中心としたビジネス展開や、ウェルビーイング視点で価値創造を行っているさまざまな企業の視察を通じて、ウェルビーイングでビジネスを成長させるヒント、あるいは事業構造を変革するきっかけをつかむ機会を提供している。
第3回は、前回に引き続き「ウェルビーイングビジネスを体験・体感する」をメインテーマに、サブテーマを「事業開発×ウェルビーイング」とし、2社のゲスト講師から自社・事業の成長の歴史と成功ポイントを伺うとともに、ウェルビーイングビジネスのターゲットや、沖縄県を軸としたブランド、商品開発について学んだ。
開催日時:2024年6月18日(沖縄開催)

 

株式会社コーカス 代表取締役 緒方 教介 氏
※2024年10月より株式会社首里石鹸へ社名変更

 

 

はじめに

社名のコーカス(2024年10月より株式会社首里石鹸へ社名変更)は、「コミュニティーサーカス」を語源としている。「コミュニケーションを通じてサーカスのような楽しい会社をつくる」、代表取締役の緒方氏が幼少のころに見たサーカスのように、「どきどき、わくわくするような会社をつくりたい」という思いが社名の由来となっている。

ロゴマークは、ヤモリをモチーフとしている。ヤモリは「家守」と表記される通り、昔から「家の守り神」とされてきた縁起の良い生き物である。「社員とその家族を守りたい」という緒方氏の思いから、ロゴマークのモチーフとしてヤモリを採用している。

同社は、コールセンター事業、オリジナルスキンケアブランドである「Suisavon-首里石鹸-」の販売事業、しゅりそら保育園(本社内で運営している保育園)の運営、この4事業を展開している。これらは全て、同社のビジョン「世界のための沖縄になろう。」の推進が軸となっている。

今回は、沖縄県生まれを誇ることができる事業の創造、自分自身が心から利用したいと思うサービスの提供、誰もが選択できる豊かさのある社会づくり、これらを存在意義とする同社のウェルビーイング価値を研究した。


コーカス本社の壁面には、ヤモリをモチーフにしたロゴマークが大きくあしらわれている

まなびのポイント 1:「Suisavon-首里石鹸-」の誕生

緒方氏は1999年に沖縄県に移住。路上販売を経験後、ある経営者からの誘いがあり、2002年に子会社の社長に就任。2011年3月に退任後、同年4月にコールセンター事業を手掛ける会社を4名で立ち上げた。コールセンター事業がコーカスの起源であり、その後、コールセンター事業は、2015年に「コンタクトセンター・アワード2015」で審査員特別賞を受賞、沖縄県内の企業としては初めての受賞であった。

立ち上げメンバーの1人が結婚、出産を迎えるが、当時は産休明けの女性を再び受け入れる環境がなかった。事業立ち上げ時の貢献者が、復帰しにくい環境になっていることに課題を感じた緒方氏は、石鹸の物販事業をスタート。沖縄県の植物や果物を生かして美容効果が期待でき、物販であれば路上販売の経験も生かせる。子育て中のスタッフが販売するため、肌当たりの優しい手作り洗顔石鹸をコンセプトとした「Suisavon-首里石鹸-」は、社員の働きやすさを追求し生まれたウェルビーイング価値と言える。


150以上の種類を持つ「Suisavon-首里石鹸-」

まなびのポイント 2:全国展開とリピート購買スキームの形成

「Suisavon-首里石鹸-」誕生から、2024年で9年目を迎える。売上高は今期約23億円の見込み、店舗は年平均5店舗のペースで増え、今期28店舗となる予定だ。

コロナ禍で沖縄県への入島数が大幅に減少し、現在もコロナ禍前ほど戻っていない。同社は、沖縄県内での販売が厳しくなったため、県外出店に挑戦し、東京・大阪・名古屋の三大都市圏の一等地に店舗を構えるなど事業成長のきっかけをつくっている。また、「店頭で商品を知り、オンラインで再開」という、来店後のリピートとなるスキームを形成しており、成長の一翼を担っている。

会員は全国に約30万名、その内、沖縄県の会員数は5万名を超えた。そのほか、引き出物利用、ブランドコラボ、ドネーション(寄付)石鹸など、あらゆるシーンで活用されている。


コーカスが運営する「しゅりそら保育園」。社内に保育園施設を有している

まなびのポイント 3:仲間を評価し合うシステム「CABAS(カバス)」

コーカスは、人が考え、人が動き、人が汗を流し、人が悩み、人が解決し、人が価値を生む力を大事にしている。

仲間を評価し合うシステム「CABAS(カバス)」は、「コーカスイズム」12の行動指針をもとに15のバッジを設定、社員同士が互いの良いところを見つけて、実現した仲間同士で評価し合うコミュニケーションの仕組みだ。

「人は、叱られるより誉められる方がやる気になる」という考えのもと、CABASは「誉める」をバッジという目に見える形としている(マイナス評価のバッジはない)。目に見えるから実感でき、集めよう(がんばろう)という気持ちが高まるのだ。誉められた時だけ嬉しくて終わりではなく、楽しく働く価値を実現している。「楽しくないことは続かない」、これは同社の一貫した考えである。

また、バッジは年間で集計し、1番多くもらったメンバーの表彰を行っている。評価を全社員にオープンにする試みである。楽しく評価し合ううちに、行動指針を実践し、働くメンバーが自然に幸せになっていくウェルビーイング経営を実現している。


社員同士が互いの良いところを見つけて、仲間を評価し合うシステム「CABAS(カバス)」で使うバッジ