タナベコンサルティングの第6回ナンバーワンブランド研究会では、独自のブランディングの先進事例を学ぶため、「IWA5」というブランドの日本酒メーカー・白岩と、IT事業や電子部品事業、電子機器事業などを展開する立山科学グループを視察。同グループの取締役・川尻浩之氏と執行役員・篠原おりえ氏に講演いただいた。
立山科学グループは、「半歩先の未来」の実現を目指し、技術(仕事)・組織、またインナー・アウター双方でのブランディングを実践している企業グループである。本稿では、立山科学グループの歩みと事業展開、DXの取り組み、インナーブランディングの具体的な施策についてリポートする。
開催日時:2024年8月7日(富山開催)
2022年に竣工した立山科学本部工場(通称・Atrium:アトリウム)
立山科学グループは、1958年に立山科学工業という社名で創業し、2024年8月現在、グループ会社11社を擁するグループ経営企業である。炭素皮膜抵抗器の製造を祖業とし、FA設備の開発・製造を行う立山マシン、精密加工技術を有するタアフ、デジタルソリューションを提供するグループ代表会社の立山科学など、事業ごとに積極的に分社化を促進することにより、コンパクトな企業体で経営・事業をスピーディーに展開している。
これまで蓄積してきたグループの技術とバックボーンを生かし、2001年から高齢者見守りサービスをリリース。2024年8月現在、富山県のほぼ全ての自治体で導入されている。
同グループは「常に半歩先の未来を実現」という経営理念を果たすべく、グループの技術を結集し、技術革新への挑戦を続けている。
ナンバープレートの文字を自動でデータ化する車番認識システム「認識番長3」
抵抗器から始まり、“半歩先”を行くことを軸とした製品開発の結果、ドメイン(事業領域)が広がった同グループ。現在は、チップ型電子部品・温度センサ・位置検知システムのデバイスなど製造のほか、自動設備・搬送ロボットのFAソリューションや、ナンバープレート認識システム、高齢者見守りサービスシステムといったソリューションを提供し、「ハード×ソフト」で強みを発揮している。
各事業の業績を上げる責任・権限を事業単位で追求できること、意思決定スピードが向上することの2点が、事業の強みを生かした分社化の効果である。こうした尖った専門技術はさることながら、各プロダクトのネーミングセンス(「認識番長3」「ロック温」「つくりのミコト」など)も秀逸であり、一度聞いたら頭から離れない。さまざまな業界の顧客をファンにするブランド力を製品ごとに有していると言えよう。
ものづくり統合システム「つくりのミコト」
2022年、同グループは立山科学本部工場(アトリウム)を稼働。同工場では、発電量のほか、各工程の投入数や不良数、エラーなどがリアルタイムでどこにいても確認できる。
同グループが開発したものづくり統合システム「つくりのミコト」は、グループシナジーの発揮により作り上げた生産管理ツールである。生産管理のプロセスが革新的に変わり、品質マネジメントによる安心感と信頼を醸成できる。
また、同グループは「デジタル」を社内定義し、流行に乗っただけのデジタルではなく、自社最適のデジタルに取り組むことを大切にしている。今後は、製品の50%超をデジタル製品にするための新たな取り組みを継続的に行っていくという。
「SDGs宣言」を展示
同グループは「女性活躍推進プロジェクト」を2017年に発足した。女性役職者研修会の開催や、女性社員による部門横断型プロジェクトで課題設定から提案検討まで行う取り組みも行っている。また、社風を変えていくため、女性だけではなく経営幹部向けの研修会も実施している。男性の育児休業取得の推進にも注力。2023年度の取得率は77%で、うち1カ月以上取得した社員が90%だった。
こうした取り組みが認められ、同グループは富山県の「とやま女性活躍企業」や厚生労働省の「えるぼし」認定を取得した。加えて地域・社会貢献活動にも力を入れており、地域清掃・植樹といったボランティア活動への参加や、災害時の施設開放などを実施し、地域との交流やつながりを大切にしている。
立山科学グループの講演の様子