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研究リポート
ウェルビーイングでビジネスを成長させる研究会
新たな時代で勝ち残るための生活者視点・お客様視点の事業戦略をウェルビーイングの視点から学びます。
研究リポート 2024.10.25

Benesse(よく生きる)とウェルビーイングへの取り組み ベネッセホールディングス

【第4回の趣旨】
タナベコンサルティングの「ウェルビーイングでビジネスを成長させる研究会」では、ウェルビーイングを中心としたビジネス展開や、ウェルビーイング視点で価値創造を行っているさまざまな企業の視察を通じて、ウェルビーイングでビジネスを成長させるヒント、あるいは事業構造を変革するきっかけをつかむ機会を提供している。
第4回は、前回に引き続き「ウェルビーイングビジネスを体験・体感する」をメインテーマに、サブテーマを「ウェルビーイングと自社の交点を見つける」とし、ゲスト講師からウェルビーイングの歴史や大事な考え方を伺うとともに、ビジネスや社内外にどのようにウェルビーイングを取り入れたら良いのかを学んだ。

開催日時:2024年8月28日(東京開催)

 

 

株式会社ベネッセホールディングス
ベネッセ ウェルビーイングLab 副所長
泉 ひろ恵 氏

 

 

 

はじめに:グループフィロソフィ「Benesse(よく生きる)」に込められた意味

 

ベネッセホールディングスは、自社のグループフィロソフィを社名にしている稀有な企業である。ラテン語の「bene(よく)」と「esse(生きる)」を組み合わせた造語であり、このフィロソフィの背景には、2代目社長が世界を見て回った際にラテン系の人々のおおらかな生き方に感銘を受けたことがある。

 

同社における「よく生きる」とは、「志」を持ち、夢や理想の実現に向けて一歩一歩近づいていく、そのプロセスをも楽しむ生き方のことである。「よく生きる」は英語では「Well-being」。同社の考え方が、現在のウェルビーイングの概念にも通じているのは自然のことと言えるだろう。この企業哲学に基づき、同社はお客さま一人ひとりの人生の節目に寄り添い、事業を通じて社会課題の解決に貢献している。

 

「誰の、どのような『よく生きる』を支援するのか」が同社の事業の根幹にあり、「お客さまの『よく生きる』を追求することが、自分たちにとってのウェルビーイングにつながる」と捉えている。誰もが「よく生きる」を実現できる未来を30年以上にわたって考え続けてきた結果が、今日の経営活動につながっているのである。

 

 


ベネッセの事業領域は、企業哲学である「よく生きる」を追求し続けてきた結果である 出所:ベネッセホールディングス講演資料

 

 


 

まなびのポイント1:ウェルビーイングLabを設立

 

同社は2022年12月、対話の機会の提供や情報発信を通じて、ウェルビーイングをでいられることを目指す人々を支援したいと考え、「ウェルビーイングLab」を設立した。このLabの活動コンセプトは「知ろう、話そう、考えよう これからのウェルビーイングを」。ウェルビーイングの土台を広める活動と、深める活動を行っている。

 

(1)広める活動

公式WebサイトやSNSを開設し、 Labだけではなく協業企業やNPO、一般の方の考えを発信する一般プラットフォームを設けることで、さまざまな人との対話や情報共有を可能にしている。過去に開催した一般の方からの投稿募集では、約8000件の投稿記事が集まった。

 

時にはワークショップも開催。社内で実施すると相互理解が深まり、みんなが笑顔になるという。社外では協業企業とともに、自治体とウェルビーイングを考える活動を行った。

 

(2)深める活動

「場のウェルビーイング」として香川県・直島における、島民や訪れる人など島全体でのウェルビーイングについて、大学と協力し研究している。また、「子どものウェルビーイング」をテーマに、「子どものウェルビーイングを意識できる社会づくり」に向けて、専門家やNPOと活動を進めている。

 

 


SNSでは、一般の方に「ウェルビーイング」を考える機会を提供。記事募集の企画に、約8000件が集まった。 出所:ベネッセホールディングス講演資料

 

 

 

まなびのポイント2:ベネッセらしいウェルビーイングの追求

 

同社は自社の企業哲学の浸透やインナーブランディングの取り組みも行っている。次にその取り組みを記す。

 

①毎年1月に、理念への理解を深める機会として「創業日朝礼」を開催

②理念冊子『BATON』を製作し、社員に配布。毎年2つの事例を追加して更新

③「サステナビリティStudy」というweb研修を通じて、社員に考える機会と自分の言葉でアウトプットする機会を提供し、経営に反映

④2024年度から、事業部門メンバーも兼務でウェルビーイングLabに参画。各部門にLabでの学びを生かしている

 

こうした施策は、理念浸透に近道はないことをよく示していると言えるだろう。

 

 


社内カフェテリア「ふらっとCafé」。働くことを通じて多様な社員が「よく生きる」を実現できる環境を提供している

 

 

まなびのポイント3:答えのない“問い”だからこそ、問い続けることに意味がある

 

社内カフェテリア「ふらっとCafé」では、障がいがあるスタッフがいきいきと働いている。スタッフの主体性を大切にし、日々小さな成功を積み上げることを大切にしているという。

 

障がい者雇用促進を目的としたグループ会社、ベネッセビジネスメイトの人材定着率が高い理由は、指導員がスタッフの「よく生きる」を支援できていることにある。うまくいかない時は、不調の要因を多角的に捉えてフォローすることが大切であるため、指導員とスタッフの会話の頻度も高い。

 

これらの活動や結果は、同社が理念に向き合い続けてきた結果である。「答えのない“問い”だからこそ、問い続けることに深い意味がある」というLab 副所長・泉氏の言葉から、研究会参加者は、全社でウェルビーイングについて考える重要性を学んだ。

 

ウェルビーイングについて伝える際には、「ウェルビーイングとは何か」から入らず、まず「自社が何を大事にしているか」を伝える必要がある。世の中と自社の関係を整理し、それをウェルビーイングと関連させることで、自分自身とのつながりが見えてくる。

 


ベネッセ東京本社の屋上にあるプラネタリウム施設「Benesse Star Dome」。地域の子どもたちの「よく生きる」につながる機会を提供している

 

 

 

※ベネッセ「ウェルビーイングLab」の記事はこちらよりご覧ください。