【第1回の趣旨】
タナベコンサルティングの住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会(第11回)は、「事業領域拡充×事業サービス化の視点で挑むハイブリッド経営」をコンセプトに掲げている。第1回ゲスト講師のタカマツハウスは、2019年に設立した髙松コンストラクショングループの一員で、首都圏を中心に分譲地や戸建住宅の販売を手掛け、急成長を遂げている。
創業当初は資産価値の高い土地の仕入れに注力し、その後販売網を拡大。現在では、分譲地ブランド「ミラクラス」を展開し、安全・安心で未来を見据えた住宅の提供を目指している。また、「“落ちこぼれ”をつくらない組織づくり」を掲げており、社員の育成に力を入れている。今回は同社の成功事例から、成長する組織づくりや人材育成のポイントを学ぶ。
開催日時:2024年9月17日(東京開催)
取締役専務執行役員 金田 健也 氏
はじめに
木造戸建住宅の企画・販売・用地仕入れを主力事業とするタカマツハウスは、一都三県において「ミラクラス(未来×暮らす)」ブランドを展開し、建売分譲および戸建用地分譲を実施。「お客様と社会が求める、理想の住まい・暮らしづくりを通じて、沢山の幸せを、かたちにしていく。」という企業理念のもと、顧客との信頼関係を強固に築いている。
同社は、2019年12月の創業から3年の2023年12月期に売上高191億円を達成。営業開始からわずか2年で黒字化を果たし、3年目で大幅な成長を遂げた。住宅業界にとって逆風といえる2023年においても、売上高40%増、営業利益33%増を達成し、持続的な成長を続けている。こうした成功の原動力は、同社のチームマネジメントのノウハウにある。
まなびのポイント1:急成長企業の事業戦略・マーケティング戦略
2021年11月、同社は企業理念、コアバリュー、ビジョン、ミッション、そして行動規範を全社員参加型で策定した。これにより、企業の存在意義が明確になり、全社員が共通の判断基準を持って業務に取り組む体制を整えることができた。
同社が目指すのは、単に住宅を提供することではなく、顧客に「見晴らしの良い未来」を届けることである。資産価値を重視する都市部の建売住宅購入者を主要ターゲットとし、インタビューや調査によるフィードバックを基にマーケティング戦略を進化させ、顧客のニーズに応じた住宅提供を目指している。
同社の事業拡大における最重要要素は用地仕入れである。月に2000件を超える土地情報を集め、厳しい基準で選定された土地のみを仕入れている。この徹底した取り組みが同社の急成長を支える大きな要因となっており、事業拡大にも大きく貢献している。さらに、積極的な仕入れ営業人材の採用や外部リソースの活用により、効率的な事業基盤を構築している。
まなびのポイント2:リファラル採用で即戦力人材を獲得
同社の人材採用戦略の大きな強みは、リファラル採用(社員に友人や知人を紹介してもらう採用方法)にある。リファラル採用は全体の36%を占めており、高い内定受諾率につながっている。現社員の推薦により信頼性の高い人材を確保しやすく、企業文化に合った人材を採用することが可能となる。この仕組みにより、持続的な成長と強固な組織づくりが可能となっている。
さらに、採用広報の一環として、「オープン社内報」での情報発信にも力を入れている。社内イベントや企業理念策定の過程など、多岐にわたる情報を公開することで、社内だけでなく求職者へも自社の魅力を発信できている。転職市場が活性化している昨今だが、このような取り組みに共感した多くの人材が、数多く同社の門をたたいている。
まなびのポイント3:“落ちこぼれ”をつくらないチームマネジメント
同社の成長を支えるのは、“落ちこぼれ”をつくらないチームマネジメントによる「湧き上がる組織」の構築である。同社では、個々の社員が困難に直面した際、全社でサポートし、社員を“落ちこぼれ”させない文化がある。会社全体でその人を支える体制を取ることで、どのような状況でも社員が成長し続けられるようにしている。「足りないのは応援」を合い言葉に社員同士の絆や信頼を強め、個人の成長を促進することで、組織全体の力を最大化する企業文化が醸成されている。
また、コミュニケーションの重要性も高い。「取り過ぎても足りない」という言葉が表すように、密なコミュニケーションが同社の組織の基盤である。リモート勤務を採用せず、対面でのやり取りを重視し、朝礼や礼節を大切にする文化を確立している。
また、リーダーからの指導は「厳しさ10倍、愛情100倍」の精神で、部下に任せつつも見守る指導が行われている。同社は、人に対する愛情を常に言動で示すことで、エンゲージメントの高い組織を築いているのである。