【第4回の趣旨】
当研究会では、クロスメディア時代の経営モデルに不可欠な本質的価値と最先端事例を学び、メディア・ステークホルダーを戦略的に動かして物やサービスを売る方法や、自社の魅力を最大限に発信する広報・PRのメソッドを提供する。
第4回のテーマは、「社内報をはじめとしたインターナルコミュニケーション」。ゲスト2社(加和太建設様・日本全薬工業様)からPR・広報について講演。社内向けPRの重要性について深く考察した。
開催日時:2024年8月23日(東京開催)
経営企画部 小川 雅史 氏
はじめに
日本全薬工業は、1946年創業の国内大手動物用医薬品メーカーである。
動物の価値を高め、つながる全ての人々の幸福に貢献するため、「伝統と革新の融合によって幸せの輪を広げ続ける」をブランドアイデンティティに掲げている。
研究開発、生産、ロジスティクス(物流)、営業が一丸となり、「製品力+αの価値」を提供するリーディングカンパニーである。また、「グローバル・バイオ・デジタル」をキーワードに、海外展開の加速や新しいビジネスモデルの構築を進めている。
同社は、インターナルブランディング戦略の一環として社内報に注力しており、経営理念やビジョン、会社の情報を伝えるとともに、社員間のコミュニケーションを活性化させている。
ブランド構築に当たって、社員・クライアントを巻き込んで心象調査を行い、キーワードをピックアップ
※日本全薬工業講演資料より
まなびのポイント1:社内報の概要と運用
社内報の大きな役割として、社内の出来事の共有、経営方針の周知、社会の動きと業務テーマの伝達などを通じた社員の意識改革や組織の活性化などが挙げられる。
同社が社内報を発刊する上で重視するのが、①文化を根付かせるバイブル、②社員にとって身近な存在、③社員だけでなくその家族にも情報共有を行い、会社と社員のハブ的な存在となる、④見やすい教科書であること、⑤社員間のラポール(仲間意識)形成のアイテム、この5つである。
また、継続的な活動としていくために、年に1回アンケートを実施している。良い点や改善点の抽出を行い、社員に寄り添った社内報であることをイメージさせている。
まなびのポイント2:社内報の進化
インターナルコミュニケーションを進めるうえで、社内アンケートの回答結果を基に、より社員にとって身近なものに進化させることも重要である。同社の場合、83%の社員が社内報のアプリ化を希望していたことから、デジタル化を実施している。
これまでの冊子配布は、①情報の鮮度が低い、②効果測定が出来ない、③配送・印刷コストがかかる、などのデメリットがあったが、「SNS感覚で発信!会社がもっと好きになる社内報!」という新しいコンセプトのもと、デジタル化という進化を遂げた。
デジタル化1年目の目標設定として、「記事の平均閲覧率25%」を掲げており、社員に直接的なアプローチを行うためにメールを活用することで目標を達成している。
より社員の近いところにある社内報を目指して、2018年に内製化
まなびのポイント3:インターナルブランディング・エクスターナルブランディング
企業ブランディングを推進する上で、社員・会社・顧客をつなぐブランドアイデンティティに基づいた、一貫性のあるコミュニケーションの展開が必要となる。
同社のそのほかのインターナルブランディング施策として、①ブランドガイドブックの配布、②社長教育動画の作成と配信、③社長との1on1による深耕セッション開催、などが挙げられる。
エクスターナルブランディング(自社のユーザーに対する広報活動)施策として、①コーポレートサイトの刷新、②オウンドメディアの発足とコンテンツ配信、が挙げられる。
「良い会社」は、組織らしさや特徴を打ち出し、その価値観に共感する人が集まってできている。社内外問わず、その価値観を浸透するための施策が重要だ。
冊子の発刊だけでなく、アプリ化することで更新頻度を改善。閲覧数や読了率も把握できる