【第5回の趣旨】
タナベコンサルティングの住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会は「共創―複合価値創造カンパニーを目指そう―」をコンセプトとして掲げている。
第5回のゲスト講師は、北九州未来づくりラボと九州教具の2社。北九州未来づくりラボは、北九州市が抱える課題を解決し、持続可能な地域社会を実現するため、市民・企業・教育機関・行政が一体となり、さまざまな分野でのイノベーションを促進している。
九州教具は、日本の教育関連製品や教材の製造・販売を手掛ける企業。学校や教育機関向けにさまざまな教育資材を提供し、教育現場のニーズに応えることを目指している。
今回は、先進的な取り組みを展開する2社より、人々の暮らしを豊かにするための秘訣を学んだ。
開催日時:2024年5月23日(福岡開催)
理事長 宮地 弘行 氏
はじめに
北九州未来づくりラボは、北九州市が抱える課題を解決し、持続可能な地域社会を実現するためのプロジェクトや取り組みを推進している。展開する取り組みは多岐にわたる。
地域活性化という面では、地域の資源を活用した企画やイベントを通じて地域経済の活性化を目指す。地域活性化に資する人材育成事業では、共に地域活性化を推し進める人材を育成しており、地域社会の全体的な発展を支援している。
同ラボは、「地域の空き家を再生し、住まいや居場所に困っている人に提供する」というミッションを掲げている。地域資源を最大限に活用し、競争力を高めることで、地域の自立性を向上させるとともに、市民が共に成長し、地域の課題に対する解決策を見いだすための取り組みを展開している。
まなびのポイント1:大英産業で学んだこと
大英産業株式会社は、主に福岡県を中心に事業を展開する総合住宅メーカーおよび不動産会社である。同社は建築・不動産開発・リフォーム事業などを手掛け、地域の暮らしを支える多様なサービスを提供している。同社は理念を掲げることで、全社員が同じ方向に向かってまい進できたため、年間1200戸の住宅を供給する九州ナンバーワン企業へと成長した。
北九州未来づくりラボの理事長・宮地弘行氏は、大英産業で副社長として経営を推進していた当時、「理念経営」 の重要性を実感したという。
大英産業の会社概要と事業概要 出所:北九州未来づくりラボ講演資料
まなびのポイント2:住まいと居場所に困っている方を助ける「小嶺マーケット」
小嶺マーケットは、福岡・北九州市の小嶺台にある小さなマーケットである。昔は、鮮魚店や寿司店もあった、にぎやかなマーケットだった。しかし、今は精肉店1店舗となり、建物のスペースが余っていた。
宮地氏は、小嶺マーケットに「新しいにぎわいをつくりたい」という思いから、「月1 小嶺マーケット」を開催。グルメや雑貨の販売、占いなどさまざまなイベントを開催し、地域の人々とつながりを持つことができた。
小嶺マーケットの活用を通じて宮地氏が感じたのは、人々に求められるのは生活の利便性ではなく “人と人とのつながり” であるということ。イベントを開催すれば人と人がつながる。「これからお店を始めたい、自分の想いを形にしたい」と思っている人が小さな夢をかなえられる小嶺マーケットをこれからも発展させ、地域や出展者の方にとっての「居場所」をつくることで貢献し続けるという。
小嶺マーケットのイベント例 出所:北九州未来づくりラボ講演資料
まなびのポイント3:すまいづくり事業
空き家を所有して困っている人と、住まいや居場所に困っている人の悩み解決を行うすまいづくり事業では、高齢者や障がい者の方々を救うべく、安い家賃で住まいを提供する事業を展開。オーナーの多くは、家賃の滞納や入居トラブルを懸念しているが、北九州未来づくりラボがサポートすることで、高齢者や障がい者の方々へ安心な住まいを提供している。
この取り組みは、各団体の協力によって実現しており、同ラボはハブとなって見守りやサポートを行っている。すまいづくり事業は、地域社会の活性化と住環境の改善を目指し、空き家を有効に活用することで、双方のニーズを満たしている。同ラボはこれからも、北九州市の未来をより豊かで持続可能なものにするために、幅広い事業を展開する方針だ。
すまいづくり事業のフロー 出所:北九州未来づくりラボ講演資料