メインビジュアルの画像
研究リポート

物流経営研究会

”物流は世の中を支えている”にもかかわらず、他業種と比較して長時間労働、低賃金です。第7期は高収益ビジネスモデル、人財確保・デジタル化への取組を全6社と参加企業から学びます。
研究リポート 2024.09.10

“企業は人なり人づくり会社づくり”の実践

マイシン

【第6回の趣旨】
昨今の物流業界を取り巻く環境は大きく変化しており、2024年問題をはじめ、人手不足や燃料費・人件費の高騰といった課題の解決は日増しに重要度を増している。時代によって変化する“顧客から求められること”に対し、“自社の持ち味”を合致させられるかどうかが重要であり、それが自社の存在価値を発揮することに繋がる。
第8期物流経営研究会は「自社の真の価値を再定義する~バリューコネクトを発見しよう~」をテーマとし、視察企業や学びをもとに“選ばれる企業”になる理由をあらためて明確にするヒントを提供する。また、「デジタル化」「環境対応」「採用」「育成」などの課題に対する解決の糸口になるよう、研究会参加者が学び、高め合う場でもある。
第6回は、「“企業は人なり人づくり会社づくり“」を実践し、人財を重視した取り組みを行っている株式会社マイシンの豊川営業所ひまわりコールドセンターと本社を視察。同社の取り組みについて、代表取締役辻直樹氏に講演いただいた。

開催日時:2024年7月18、19日(愛知開催)

株式会社マイシン 代表取締役 辻 直樹 氏

株式会社マイシン
代表取締役 辻 直樹 氏

 

 

はじめに

 

株式会社マイシンは1979年に設立され、愛知県豊橋市に本社を置く一般貨物自動車運送事業、トラック運送事業者である。ひまわりのマークが描かれた「ひまわり便」が有名だ。

 

輸送範囲は、豊橋を中心とした地場エリア、東海4県の近距離エリア、北関東・関西地区までの中長距離エリアを網羅している。輸送品目は、食品・飲料・菓子類などの食品関連、自動車部品、プラスチック原料から一般雑貨まで幅広く取り扱っている。

 

【企業は人なり、人づくり会社づくり】という社是が示すように、人づくりがマイシンの原点であり、人財を重要視した施策に数多く取り組み、成長を続けている。

 

人手不足が物流業界の大きな経営課題となる中、今回の研究会では、同社の「人のためにある会社にするために」という発想から生まれた取り組みついて学んだ。

 

 

緑の車体とひまわりマークが目を引く「ひまわり便」車両
緑の車体とひまわりマークが目を引く「ひまわり便」車両

 


 

まなびのポイント1:「仕事に人を合わせる」採用から、「人に仕事を合わせる」採用へのシフトチェンジ

 

東日本大震災後、人手不足が深刻化し、求人を出しても応募が来ない状況の中、ある女性からの応募を受け入れたことが転機となった。非常に良い人材であると判断したものの、ご家庭の状況から勤務条件面の制約もあり、社員からは採用に反対する意見もあった。

 

しかし、「人が来ないなら来た人をどう生かすか」と考え、仕事に人を合わせる採用方針に転換を行った。ドライバーの仕事を分解し適した部分を任せることで、女性ドライバーの活躍を促進。営業部門には、女性ができる仕事を取ってくるよう指示し、子供の体調不良などに対応するための配車調整も行った。また、HPやYouTubeを活用して女性活躍を積極的に発信している。

 

それにより女性の応募が増加し、女性トラックドライバー「トラガール」が同社の特徴・強みとなった。ドライバー女性比率は全国平均は2.5%だが、同社は現在24.8%まで向上。未開拓労働市場の掘り起こし(トラガールの積極性用)により慢性的な労働力不足を補い、会社の業績を支えている。

 

 

まなびのポイント2:健康経営と働きやすさの見える化

 

同社では働きやすさの見える化のため、「働きやすい職場認証制度2つ星」や「健康経営優良法人ブライト500」の取得を積極的に推進している。2014年からインフルエンザ予防接種を会社負担で実施。その後女性ドライバーが多く在籍していることから、対象をお子様や扶養者へ拡大した。脳ドックも現在40歳以上の従業員希望者が年1回受診し、従業員やその家族の安心につながっている。

 

定期健康診断では従業員の健康を重要視するため、再検査を義務化し受診率100%を達成した。喫煙率低下に向けては、社内の喫煙環境の公平性を保つ制度を導入し、2023年にトラック車内を禁煙とした。

 

他にも各営業所へ喫煙所の設置や紙タバコの完全禁止、禁煙外来費用の全額会社負担など様々な取り組みを行っている。すべては社員の心身の健康のための取り組みであり、ここでも人を大切にする同社の考えが表れている。

 

「人のためにある会社」を実現するための取り組みが評価され、さまざまな認証や認定を取得している。
「人のためにある会社」を実現するための取り組みが評価され、さまざまな認証や認定を取得している。

 

 

まなびのポイント3:活力朝礼

 

同社は他社との差別化を図り、従業員同士のチームワークの重要性とお客様の笑顔のために「あいさつ」に力を入れている。その一つが「活力朝礼」である。

 

2014年から毎年2月に活力朝礼コンクールを実施(コロナ禍により、過去3回中止)。審査対象として全社員から構成された21グループが参加し、挨拶訓練や職場の教養輪読、経営理念の唱和、ついてるパフォーマンスなど、各グループ独自に工夫を凝らし、真剣な中にもユーモアも取り入れて発表している。長年取り組んできた活力朝礼による「あいさつや礼節」に対する姿勢が、取引先でも評価されているという。

 

活力朝礼や社員のための様々な取り組み、社内満足度調査を通じて、従業員の健康と満足度を高める努力を続けており、グループ全体の今期の業績は初めて45億円に達した。採用においても人手不足とは無縁であり、人財を選ぶことができているという。

 

「人のためにある会社にするために」従業員と真摯に向き合い行動に移し続けてきたことが、同社が「全社員が安心して力を発揮できる会社」となっている理由といえる。

 

 

活力朝礼コンクールの様子。各グループで考えられたパフォーマンスが見所。
活力朝礼コンクールの様子。各グループで考えられたパフォーマンスが見所。