【第3回の趣旨】
今期の食品価値創造研究会では、「アフターコロナのEATトレンドを学び、持続可能な食事業に進化する」をテーマに、従来の常識・手法・商習慣に捉われることなく、食の*“E・A・T”視点で先進企業から学びを得ることにより、アフターコロナ環境を乗り越え、持続可能な食事業に進化することを目指している。第3回中部開催のテーマは『時代の変化に合わせた食の提供価値変化』。伝統企業の提供価値変化や、消費者の嗜好の変化に伴う業態変化、こだわりが生む外食価値の変化など、“時代の変化”に合わせたさまざまな「食の提供価値変化」を知り、食品業界がこれからも進化するためのポイントを学んだ。
開催日時:2024年6月27日(中部開催)
*本研究会のテーマ「E・A・T」の解説
代表取締役社長 柴崎 忠義 氏
はじめに
三河淡水グループは三河淡水魚を中核に、年間3000トンの活鰻取扱量を誇るウナギ産業のリーディングカンパニーである。また、「三河一色産うなぎ」をブランド化した第一人者である。1977年の創業からウナギ一筋で事業を展開しており、養鰻から加工、流通(外食)までをグループ内で行う6次化を実現。
近年では、2017年に経済産業省の地域未来牽引(けんいん)企業として選定され、2020年には農林水産省から地産地消等優良活動(食品生産部門)を表彰されている。
(88件中、全国で8社のみの表彰)
『存続』を基軸とした事業展開、『認知』を起点としたブランディング、『連携』を活用した地域創生という3つの戦略をポイントとしてご講演いただいた。
2020年度 地産地消等優良活動〈食品生産部門〉表彰(農林水産省)
まなびのポイント1:『存続』を基軸とした事業展開
1977年に活鰻卸業として創業してから、ウナギの消費拡大と並行して順調に販売を伸ばしていた同社。創業10年目の1987年には、競合する取引先にも販売をしていくために、「三河うなぎ」を立ち上げ、需要の拡大に対応していた。
しかし、ウナギは静岡の問屋を通して販売されるため、三河産のウナギは良品として扱われず、常にブランドとしては不利な立場にあった。加えて、中国産のウナギが台頭し始め、国産のウナギのかば焼きが100円均一で売られる事態にまで発展し、結果、生産者価格の暴落とともに、廃業・倒産する生産者が続出した。
そんな中、同社は、養鰻産業の『存続』を一心に、廃業する養鰻場を買い取り、三河産のウナギを消費者に知ってもらい、直接手に取ってもらうことを目的に、事業の6次化をスタートさせた。
ビニールハウスでの養殖
まなびのポイント2:『認知』を起点としたブランディング
先述したように、同社のブランディングは逆風から始まった。取り組みの起点となった考え方は「まず知ってもらうこと」。2001年にウナギのかば焼きの加工場をつくり、量販店へと販売を開始した。全量販売予定だった取引先が撤退し、2008年には中国産を三河一色産として販売した産地偽装事件による風評被害が起こるなど、事業開始後も逆風は続いたという。しかし、ニュースになることが認知へつながり、ほとぼりが冷めたときにはブランド力が強化されていた。そうして2009年には「みかわ三水亭」を開業。外食事業へ進出し、三河一色産のウナギのブランド力は着実に定着していくこととなった。
6次化を実現させた加工場(上)と、みかわ三水亭(下)
まなびのポイント3:『連携』を活用した地域創生
みかわ三水亭の開店をきっかけに、同業者が次々と鰻専門店を開業。当初は、お客さまの取り合いが懸念されたものの、集積の効果が生まれた結果、客数自体が増える環境ができあがった。今では、年間10万人を超えるお客さまが、鰻目的で一色町に足を運び、町全体の活性化につながっているという。
また、同社は小学校や養護学校への体験授業、西尾市観光協会やJR東海とのコラボレーションで、地域創生活動も行っている。一色町を代表する同業者とは“三河一色鰻御三家”と銘打った弁当を販売し、地域、同業者を巻き込んだ仕掛けを次々と企画している。連携を通り越した連動が、三河淡水グループの成長のグッドサイクルにつながったと言えよう。
みかわ三水亭で提供している「うな丼」。こだわりのタレがウナギのうまみを引き立てている