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研究リポート
人材育成研究会
EVP(従業員に対する価値提案)を高め、社員のエンゲージメントを向上させ、自律的に成長する・会社に貢献する人材を生み出していくためのヒントを優秀企業から学びます
研究リポート 2024.07.22

100VISION実現に向けたヤマチユナイテッドの人づくり ヤマチユナイテッド

【第3回の趣旨】
タナベコンサルティングの人材育成研究会は、最先端の教育制度や人材育成の仕組みを持つさまざまな企業の視察を通じて、人材の育成・活躍・定着を成功させるヒントを提供している。
第3回のテーマは「地域エンゲージメント」。全国的にも地元への愛着が強い北海道に拠点を構えるファイターズ スポーツ&エンターテイメント、ヤマチユナイテッドの2社を特別ゲストに招き、地域エンゲージメントを構成する「体験価値」「再来価値」「影響価値」向上のポイントを学んだ。

開催日時:2024年6月28日(北海道開催)

 

ヤマチユナイテッド
代表取締役社長 山地 章夫 氏

 

 

はじめに

 

札幌市に本社を置くヤマチユナイテッドは、2023年に創業65周年を迎えた。同社は「THE 100 VISION」をグループミッションに掲げ、「100の事業・100人の事業経営者創出」にチャレンジしている。

 

道内を中心に建材商社や住宅建築、リフォーム事業、インテリアショップ運営、イベントプロデュース、カフェ運営、デイサービス事業などに取り組む一方、住宅事業やデイサービス事業のフランチャイザーとして全国展開を推進。現在の事業数は50、年商は250億円を超え、北海道の就職人気企業ランキングではトップテンに入るなど、顧客のみならず学生からの注目度も高い成長企業である。数多くの新規事業を創出する同社に、「仕事エンゲージメント」や「組織エンゲージメント」向上の秘訣を学ぶ。

 

 


ヤマチマネジメント 経営支援事業部 カンパニー長 山﨑 舞氏


 

まなびのポイント1:多角化を成功させる4つの形「FORM」

 

ヤマチユナイテッドの基本戦略は「多角化」だ。複数の事業がそれぞれ独立採算管理されながらも、幹部や社員が主体的に経営に参加し、シナジーを発揮することで、複数社・複数事業が1つの会社のように一体感を持って運営される独自の「連邦多角化経営」を行っている。代表取締役社長の山地章夫氏は、次の4つが多角化の成功に向けた形であると話す。

 

(1)F:FC・代理店制度の活用

他社の成功ノウハウ・ブランド・エリアなどの購入

(2)O:ORIGINAL

既存の自社開発商品やビジネスモデルを活用した顧客課題と経営資源の組み合わせ

(3)R:RESEMBLE

成功事例をまねる、ノウハウを教えてもらう、そして少しひねる

(4)M:M&A

再生型、後継者不在型、次のステップ移行型など、それぞれの目的に合わせた買収・売却

 

 


リフォームを行ったばかりのヤマチユナイテッド建材事業部オフィス。コロナ禍で仕事が作業化する中、社員のモチベーションや建材業界のイメージを向上させることを目的に改装された

 

 

 

まなびのポイント2:主体的な企業風土を生み出し、「理想的な会社」をつくるためのビジョン

 

各事業における幹部・社員の「主体性」。それが連邦多角化経営を成功させる鍵の一つである。その主体的な企業風土を生み出す上で、最も重要なのは「ビジョン体系の構築と浸透」であると山地氏は語る。

 

ヤマチユナイテッドでは、夢のある理想の会社をつくるための共通の価値観として、コアバリューを14項目設定するとともに、定着に向けたワークなども実施している。また、「北海道から色んな世界を変えていく」というパーパスを掲げており、これが社内で議論する際の価値判断基準となっている。

 

このように整備された理念体系を基に、山地氏が目指す姿を熱く語り続けたことで、それに共感する人たちが次々に集まり、会社の成長に大きく貢献している。

 

 


ヤマチユナイテッドの現在の事業図。事業数は50を超え、そのセグメントは多岐にわたる
出所:ヤマチユナイテッド講演資料

 

 

 

まなびのポイント3:ヤマチ式「システム経営」による幹部育成

 

ヤマチユナイテッドで生み出された各事業の責任者は、社長ではなく経営幹部が務めている。業績に関しては、管理会計で決算賞与の原資となる財源のルールを決めておき、会議参加や委員会・プロジェクトの自主運営を通じて幹部の主体性を育てる。

 

また、社長は人材育成やビジョン浸透など、中長期的に取り組むべきテーマである非緊急事項に時間を割き、緊急事項は幹部に任せることを重視している。このようなスタイルを採っているからこそ、事業数が増えるほど経営意識を持った幹部が育ち、必然的に権限移譲も進む。

 

社長・幹部を中心としたトップダウンとボトムアップのミックス経営。これこそがヤマチユナイテッドにおける幹部育成の根幹である。