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研究リポート

SDGs・ESG経営研究会

2030年までの成長戦略は、環境・社会・経済のサステナビリティへの挑戦です。SDGs・ESGを通してサステナブルなビジネスモデルの再構築について学びます。
研究リポート 2024.07.10

地域の持続可能な発展を担う経営戦略
~継承という名の事業成長~

阿部幸製菓

【第5回の趣旨】
コロナ禍という100年に一度のパンデミックを経験した食品業界。これからの100年先を見据えて、新潟の地域企業が創造すべき価値について『おコメと和の嗜好品メーカー』として『食文化』の新しい価値を開発し続ける阿部幸製菓。

SDGs・ESG経営研究会では2024年、創業125年の地域企業が世の中に与える存在価値を学び、参加会員企業様が新たな価値を生み出し事業継続するためのヒントを学ぶ。

開催日時:2024年5月22日(新潟開催)

 

地域の持続可能な発展を担う経営戦略

阿部幸製菓株式会社
代表取締役社長 阿部 幸明 氏

 

はじめに:創業125年と事業成長

 

阿部幸製菓様は1899年、現本社所在地に創業。米屋を生業とし、同時に馬市のまとめ役として、地域の経済を支えてきた。現在は業務用の「柿の種」のシェア日本一の企業へ成長し、さらに惣菜、調味料、和菓子、米粉麺、そして新潟県を代表するお土産商品「柿の種のオイル漬け にんにくラー油」の開発など、次々と新しい商品開発やM&Aによる事業展開をしている。

 

100年企業であり地域の食文化を巻き込むその経営戦略について代表取締役社長の阿部幸明氏にご講演をいただいた。

 


 

まなびのポイント1:ブランディング 『柿の種』の新しい魅せ方

 

1950年後半に柿の種を開発・開始して65年余りが経過。阿部幸製菓様は、食卓に新しい提案をすべく、柿の種や米に関する新しい価値を提供している。

 

柿の種のオイル漬け、パスタスナック、米粉麺の店舗展開。『新しい魅せ方』の考え方は、新商品開発=ブランド開発でなく、今あるものを活用すること(自社の棚卸+適切な伝達=ブランド開発)。ブランド開発とは最終的にはお客様との共同作業。また、社外発信よりも先ず社内発信を重視する。社員からの声で開発が進むインナーブランディングもまた、自社の風土だ。

 

商品開発においては『米』という新潟の食文化をベースとしている。

 

高級感あるパッケージの「かきたね」は、梅、わさび醤油、チーズ黒胡椒など7種類の味があり、多くのファンに支持される。 2024年には「元祖新潟濃厚味噌 東横」の事業を継承。
高級感あるパッケージの「かきたね」は、梅、わさび醤油、チーズ黒胡椒など7種類の味があり、多くのファンに支持される。
2024年には「元祖新潟濃厚味噌 東横」の事業を継承。

 

 

まなびのポイント2:M&Aを活用し新潟の食文化を守り成長する戦略ストーリー

 

阿部幸製菓様はこれまでM&A譲受を5社経験。ポイントは、既存事業とのシナジーの発揮。

 

【M&A企業】

①元祖ゆず七味を製造する調味料メーカー

②創業約220年の歴史を持つ和菓子メーカー

③皮から餡まで一貫製造する技術を持つ最中メーカー

④元祖柿の種で有名な大手メーカー

⑤新潟5大ラーメンの中心となる人気ラーメン店

 

関連することは『新潟の食文化』。新潟の食文化に一手間を加えることによって生まれるシナジーと社員の雇用、技術、ブランドを活かし阿部幸製菓のもつ海外販路に乗せて、新潟の食文化を海外にも発信する。あくまでも強みを活かし、おいしいタネをつくる。グループインした会社の社員も自社の商品が世界に発信されることやグループ間で技術を学び合う関係構築にも寄与。M&Aも各社の自立・成長を重視している。

 

 

 

まなびのポイント3:世の中でのパーパス(存在価値)

 

流通の仕組みや個人の食生活が目まぐるしく変化し、様々なニーズが予測される多様化の時を迎えている。そんな時代に求められる当社の使命は、品質・健康・食文化・時代性を理解し、食生活の分野から新しい提案をすること。情報技術を活用し、個人やグループが持つ情報を結びつけて新たな価値を創造する。そして潜在的な購買ニーズを導き出して行く。そのように、常に開発型企業を目指している。持続可能な産業『日本』『新潟』『米』新潟食を世界へ、次の世代に繋げ、持続的に成長していく。

 

【パーパス(存在価値)】

①おコメと和の”嗜好品”メーカーとして、自分の強みを生かす。

②世の中の課題をひとつ解決する。

③世界中の人々に笑顔の輪を私たちの食品を通じて広げてゆきたい。