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研究リポート
ナンバーワンブランド研究会
コロナ後の新しい時代に合わせた最新のブランディングを研究し、参加者の皆様が自社で実装するために、コンサルタントがアドバイス・サポートいたします。
研究リポート 2024.07.04

神戸牛の価値を伝える「語り部」を育成 吉祥吉ホールディングス

【第5回の趣旨】
タナベコンサルティングの第5回ナンバーワンブランド研究会では、インナーブランディングの先進事例に学ぶため、神戸牛専門の飲食店を展開する吉祥吉グループと、「残業のない会社」として独自の取り組みを行っているエス・アイに講話いただいた。
「飲食店での神戸ビーフ使用量国内1位」の企業として表彰されるなど、数多くの実績を持つ吉祥吉グループ。神戸牛の価値を伝える「語り部」を育てるには、インナーブランディングが重要だという。顧客にストーリーを語れる社員の育成・教育のポイントを解説いただいた。

開催日時:2024年6月4日(神戸開催)

 

株式会社吉祥吉ホールディングス
トレーニング部 部長 橋本 峻 氏

 

はじめに

 

吉祥吉グループは、神戸市を拠点に展開する飲食店チェーンである。神戸牛を専門とするレストランを中心に、鉄板焼き、レストラン、焼肉、テイクアウトスイーツなど多岐にわたる業態を展開している。吉祥吉ホールディングスをホールディングス機能とし、事業会社である吉祥、八坐和(やざわ)、和のみやの3社が事業を展開している。

 

同グループは神戸牛を1頭買いしているため、商品価格は1000円から9万円まで幅広く、顧客のニーズに合わせたさまざまな食べ方を提案できる。2023年には62万枚のステーキを提供し、コロナ禍を経て業績は右肩上がりである。

 

旅行客だけでなく地元の方々にも愛される神戸牛と、お客さまに喜ばれる形で神戸牛を提供する吉祥吉グループの取り組みについて、トレーニング部の部長・橋本峻氏にお話しいただいた。

 


吉祥吉グループが提供する、神戸ビーフコンテスト最優秀賞の神戸牛


 

まなびのポイント1:世界一厳しい規格基準が「神戸牛」ブランドを確立

 

「神戸牛」は、兵庫県内で生まれた“純血の但馬牛(たじまうし)”を、兵庫県より認定された県内の指定肥育農家で育てたのち屠畜し、世界一厳しい規格基準をクリアしなければ名乗ることができない。神戸牛の年間出荷数は約5500頭と、国内の和牛のわずか0.002%である。

 

規格基準により厳選された神戸牛のみを取り扱っている吉祥吉グループは、さまざまなニーズに合わせて姉妹店・グループ店を展開し、幅広い食べ方を提案することで価値を提供している。

 

橋本氏が入社した当時の店舗数は10店舗だったが、現在は東京・神戸・大阪・博多で50店舗以上を運営。特に神戸に集中して出店し、知名度アップや配送の効率化、食品ロスの低減によって競争優位を得る「ドミナント戦略」を実行している。

 

 

 

まなびのポイント2:ストーリーで魅力を語る「語り部」を育てる

 

橋本氏は、ただ神戸牛の説明をするのではなく、牛の誕生から、どんな試練があったか、また最終的に人に食べられるまでを、ドラマのようなストーリーで伝えることにより、「語り部」として神戸牛の魅力を伝えていた。

 

顧客に吉祥吉グループのサービスを勧めるだけでなく、神戸牛の正しく正確な情報を相手に伝えるということを大切にしており、そこには創業者であり会長でもある赤木清美氏の「神戸牛に感謝を忘れてはいけない」「まずは神戸を楽しんでほしい」という「三方よし」の精神が受け継がれている。

 

橋本氏や社員だけでなく、お客さまにも語り部になってもらうことが、リピート顧客の育成や新規顧客の獲得につながる。研究会参加者は、自社ブランドの語り部を、社内外で育成することが重要であると学んだ。

 


神戸・南京町にある吉祥吉グループのテイクアウト専門店

 

 

 

 

まなびのポイント3:ブランドの体験価値ポイントを常に創り続ける

 

コロナ禍をきっかけに、同グループは「通信販売×ストーリー×擬似体験」を提供するオンライン体験をスタートした。通信販売で神戸牛を届けるだけでなく、擬似旅行体験や、通常はなかなか行けない場所の見学を組み合わせ、ストーリーや魅力を発信している。

 

また、インバウンド(訪日外国人旅行客)への対応として、予約専用コールセンターを設置。海外出身者をコンシェルジュとして雇い、丁寧なフォローを行うことで、誰もがストレスフリーに食事をできるようになった。「神戸牛を食べた」というステータスや体験に価値を感じる方は、神戸牛だけでなく店舗の雰囲気や食事の瞬間という「神戸牛プラスアルファの体験」にお金を払っているのである。