【第1回の趣旨】
世の中の技術は加速度的に進化しており、いかにスピーディーに自社のビジネスモデルに最新技術を取り入れるかが、全ての企業に求められている。この状況を踏まえ、タナベコンサルティングの尖端技術研究会は、新たなビジネスモデル構築に向けた着眼点の1つとして「テクノドリブン=先端技術から課題解決をデザインする」という考え方を提唱している。
第1回は、AI・ロボットで企業の課題解決をする最先端テクニカル・カンパニーである知能技術と、「デジタル倉庫サービス®」で職人技術のナレッジ集約を実現した伊福精密を視察し、取り組みについてご講演いただいた。
開催日時:2024年2月21日(大阪開催)
代表取締役 大津 良司 氏
はじめに
知能技術は、代表取締役で生命医科学博士でもある大津良司氏が2007年に設立した。同社は「人工知能(AI)」と「ロボット技術」による最先端テクニカル・カンパニーとして、社会の安全を守ることを企業理念に掲げている。
同社が提供するサービスは、①AI・ロボットの事業化コンサルティング、②AI・ロボットの技術コンサルティング、③AI開発・ロボット開発の3軸である。経済産業省や大阪府などの官公庁・自治体、電力業界(関西電力など)、機械業界(ダイハツ工業など)、建設業界(丸栄コンクリート工業など)といった多様な業界へ、AI×ロボット技術で貢献している。
研究会参加者は、労働力不足、働き方改革、労働安全の確保といった日本の社会課題のソリューションとしての、AI・ロボットを活用した新規事業開発について学んだ。
まなびのポイント1:AIができること
AIには、人間同様に右脳AI、左脳AIがある。どのような目的でAIを使うかによって、使うAIが異なる。右脳系は、画像解析や音声解析、将来値予測などができる。左脳系はクラス分類やクラスタリングなどが可能である。現在のところ万能なAIはなく、目的によって選択する必要がある。
AIは「統計」であり、データがないと学習のしようがない。このためデータ蓄積が必要である。データは人が整理しなければビッグデータにはならない。ディープラーニングが得意な分野は、データ化しやすい分野、過去データが参考になる分野、ルールが明確な分野だからである。
AIを活用する際のポイントは、①AIで解決したい問題を洗い出し、学習データが存在するか確認すること、②AIにどれだけの要求精度を求めるかを決めること。AIはあくまで統計であるため、「100%の正解」を要求することはできないが、人よりも得意な領域がある、と理解する必要がある。
出所:知能技術講演資料
まなびのポイント2:AIで企業課題を解決するポイント
企業の現場で課題解決したい場合は、センサやロボットなどと組み合わせて、あるいは開発して、データを取る、機械を動かす、検査を行うといった「現場の知識」があり、かつAIだけでなくハードウエア開発ができる企業との連携が奏功する。
しかし、多くのAI開発企業には現場の知識がなく、コンピュータ上でしか仕事ができない。そのため、既に自社にデータがそろっており、PCで結果を出してくれたら良いという場合以外は依頼すべきではない。
データがそろっていない場合は、データ蓄積の在り方から自社で考える必要がある。また、センサやカメラなどのハードウエアとの組み合わせが必要な場合は、さまざまなIoTツールのコーディネートができる企業との連携が必要である。
センサや赤外線カメラなどハードウエアとAIを組み合わせて自社の現場課題を解決する
出所:知能技術講演資料
まなびのポイント 3:AI×Robotの開発
知能技術では、ハードウエアとソフトウエアを組み合わせた「AI×Robotの開発」ができる。この開発で実現できることは、画像認識や3次元認識、ロボット自動作業、AIと人の協調による距離が遠く離れた場所にあるロボットの制御など、多岐にわたる。
例えば、プラントの遠隔点検では、自走点検ロボットをプラント構内で走らせることで、外気温と同じ温度のガス漏れを、10m以上離れた非防爆エリアから検出できる。ガス漏れ部分と拡散して行く状況を、動画で瞬時に見ることができるのである。
また、オフィスの現場課題も解決できる。大量の紙の書類を見ながらデータを手入力している作業や、報告書・提案書作成の自動化などである。
自社の現場課題に合わせたAI×Robot開発を推進するポイントは、①自社内に推進組織・リーダーを置くこと、②技術的外部パートナーとの連携である。
自走点検ロボットがプラント構内を走り回り、ガス漏れ部分と拡散した範囲を可視化する
出所:知能技術講演資料