【第4回の趣旨】
デザイン経営モデル研究会では、デザインの力を「体験価値」と「自社らしさ」を創る資源の1つとして捉え、他社との差別化や高収益を実現するためのヒントを探ることを目的とする。
秀逸なデザイン経営モデルを持つさまざまな企業・団体の現場を「体験」する機会を提供しており、第2期、第4回の2日目は、manordaいわて 代表取締役の石川恒介氏に登壇いただいた。デザイン思考で地元企業を支え、共創する取り組みについてひも解いた。
開催日時:2024年3月27日(岩手開催)
代表取締役 石川 恒介 氏
はじめに
manordaいわては、岩手銀行が100%出資する銀行業高度化等会社として設立した。従来の銀行業務の範囲や規制を超え、地域の課題を解決する事業会社である。「デザインとイノベーションで新たな価値を生み出す」というコンセプトを掲げており、地域の持続的発展を目指す。
人口減少と長期化する低金利環境において、新たな事業領域に進出することで地域活性化と産業創出を促し、持続可能なビジネスモデルを構築すること。また、地域産業をデザインし、地域の社会課題の解決と共通価値の創造を図るCSVを実践することを目的とする。
地域の優れたモノ・コト・ヒトの発信拠点を創出し、新しい商流の創造やデジタルを活用した地域経済の活性化に取り組んでいる。
manordaいわてのビジョン ※講義資料より抜粋
まなびのポイント 1:「モノ×コト」のプロモーション促進
同社の事業の1つが販路拡大支援だ。事業者と販売先の間に入って、取引開始しない、継続取引しないなどの課題に対しマッチングをサポートしている。例えば、「新幹線物流」を活用した地域産品の支援が事例として挙げられる。新幹線物流を利用し、午前発の新幹線で食材を東京駅まで直送。「作りたて」「とれたて」の状態を保ちながら都市部の消費者に届けることを可能にし、企業の販路を拡大につなげた。
また、2022年には最新テクノロジーによるライブマーケティングCAFE「AZLM CONNECTED CAFE manordaいわて店」をオープン。同施設は地域産品および情報を展示するOMO店舗( ECサイトへの誘導や関係人口創出のPRを行う業態)である。地域産品に「リアル体験」と「デジタルの仕掛け」を組み合わせることでプロモーションを支援するのが同社の特長だ。
AZLM CONNECTED CAFE manordaいわて店
まなびのポイント 2:デザイン経営で地域ブランド開発
岩手県内在住のクリエイターで構成される組織「いわてデザインリーグ」から最適な人材と企業をマッチングする案件もあるという。いわてデザインリーグは、岩手県内在住のトップクリエーター、デザイナー会員、学生会員の3部で構成される組織だ。ディレクター組織である「岩手アートディレクターズクラブ(岩手ADC)」と連携し、最適な人材を抜擢。デザインの力でブランド価値を高め、企業力向上の支援を行う。
盛岡お土産品の新しい統一ブランド「MOYANE (モヤーネ)」は、地元の方々に盛岡の魅力を再発見してもらい、新たな需要と消費を生み出そうと、本事業により企画されたブランドである。
「もりおかおみやげプロジェクト」MOYANEの全体像 ※講義資料より抜粋
まなびのポイント 3:地域課題解決循環型プラットフォーム
デザインの力で社会問題解決の糸口を広げ、地域における共通価値を創造することをミッションとしている同社は、「官民銀商」による地域活性化企画プロジェクトの企画・運営にも取り組んでいる。一関市の企業DX推進事業(デジタルラボ事業)業務では、各企業においてシステム担当者を配置するためには時間も費用も掛かる課題に対し、「まちのデジタル屋」としてデジタルラボを社会インフラ化することで地域全体のデジタル化を推進した。
また、「イワテメイドアパレルプロジェクト」では、岩手県内縫製工場による自社の強みを生かした新規ビジネスモデルを創出するため、官民連携体制のもとで商品開発・プロモーション・販売出口の構築に至るまで一貫した支援を実施した。持続可能な社会、ビジネスモデルを構築するためのデザインを通じ、地域課題を解決しているのである。
一関市受託 企業DX推進事業の全体像 ※講義資料より抜粋