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研究リポート

地域創生型新しいビジネスモデル研究会

地域における課題に対して「産学官民連携」をキーワードとした事業開発の切り口で、地域課題解決型事業を学びます。
研究リポート 2024.06.24

地方創生の新潮流 女性IT人材のリスキルと活用

Ms.Engineer

【第2回の趣旨】
地域創生型新しいビジネスモデル研究会では、「地域創生×産学官民アライアンス」による新規事業開発を実現するため、行政・教育機関・スタートアップ企業・地域創生型ビジネス牽引企業などのゲストを迎え、事業開発の切り口となるイノベーション・共創へのヒントを提供し、社会課題解決型事業の具体化する機会を提供する。
第2回では和歌山県 商工労働部企業政策局 成長産業推進課の吉田氏とMs.Engineer株式会社代表取締役 やまざきひとみ氏をお招きし、行政と協業するための切り口や行政と連携した事業開発の視点をお話しいただいた。

開催日時:2023年4月18日(大阪開催)

 

地方創生の新潮流 女性IT人材のリスキルと活用:Ms.Engineer

Ms.Engineer株式会社
代表取締役 やまざき ひとみ 氏
2007年サイバーエージェント入社。
Abema事業本部にて、2008年より「アメーバピグ」立ち上げプロデューサーを担当。
2015年サイバーエージェント退社後独立。フリーランスとして2015年12月より女性向け動画CMメディアC CHANNEL編集長に。3ヶ月で再生回数1億回に成長し、国内最大級の動画メディアを確立。2016年にはPR/マーケティング事業・動画を中心としたクリエイティブ制作を行うHINT incを設立し、代表取締役に(現任)。その後コロナで悪化した女性雇用環境問題に端を発し、「Ms.Engineer」を創設。

 

 

はじめに

 

本研究会のテーマである「地域創生×産学官民アライアンス」によるビジネスモデルを検討するにあたり、第2回においては行政視点での「協業」について理解を深める回となった。

 

講演のポイントは大きく3点であった。

 

❶ 女性の「真の働きやすさ」とは何か

❷ IT人材不足×エンジニアのジェンダーギャップの視点から見た女性エンジニアの可能性

❸ 地方女性のデジタルリスキリングがもたらす、地域からの人材流出対策

 

同社は社会課題である女性雇用環境の悪化とIT人材不足に着目し、日本で唯一の女性に特化したITエンジニアを育成するコーディングブートキャンプを展開。やまざき氏には、スタートアップの視点で見る社会課題の捉え方、ビジネスを通じた地方女性の雇用創出・人材流出対策等の行政課題へのアプローチがもたらす協業・共創の可能性を発信いただいた。

 

IT人材の圧倒的不足とエンジニアのジェンダーギャップ女性雇用環境の問題提起から、地域・企業・雇用者それぞれの立場にとって女性ITエンジニアの創出による課題解決の可能性を解説いただいた

 


 

まなびのポイント 1:女性活躍の機会を役職だけではなく、職種で可能性を拡大させる

 

各企業において女性活躍の視点から、管理職比率を高める動きなどが顕著になりつつある。一方で働き方が多様化する現在において、必ずしも上記の取り組みが女性従業員のエンゲージメント向上に繋がらない。自分のライフスタイルに合わせた働き方を選択したい、結婚・出産・育児などのライフイベントを超えて働き続けることが可能な仕事をしたい。

 

このようなニーズは拡大傾向にある。更に給与水準は上げたいが、管理職には就くことで、上記の働き方が実現できない可能性があるなど、GAPに悩む女性も多いのが事実である。

 

女性管理職者を増やすという視点だけではなく、社内での女性活躍の視点において、デジタルリスキリングによる可能性は大きい。社内のIT人材の不足に対し、「女性のエンジニア」の登用等、役職ではなく、職種で女性の活躍の場を創出する視点が重要となる。

 

ITエンジニアは女性にとって真のはたらきやすさをかなえる職種

 

 

 

 

まなびのポイント 2:女性エンジニア創出による新たな地域雇用の選択肢を生み出す

 

“日本型雇用”の強い地域においてはジェンダーギャップが生まれやすく、地域から都市部への人材流出を招きやすい傾向がある。都市部に労働人口が流出することは地域にとって痛手となる。

 

地域雇用の創出こそが“地方創生”の重要な取り組みであり、その点において同社の女性エンジニア育成のスキームには独自性がある。地域雇用の創出・IT人材の不足の解消・女性活躍機会の創造・賃金格差の解消など、地域・企業・雇用者それぞれの立場でメリットを生むビジネスモデルにより、事業を通じた社会貢献度は高い。

 

現に受講者の構成比は東京27.4%、地方都市29.8%、その他エリア42.8%となっており、東京以外が7割を占めるなど、地方の女性からの支持は特に厚い。地域格差の是正を女性の働き方という視点で解決する取り組みから自治体の課題解決パートナーの役割を担っている。

 

日本型雇用の強い地域ではジェンダーギャップが生まれやすく、流出を招きやすい

 

 

 

 

まなびのポイント 3:行政と連携したデジタルリスキリングの推進

 

IT人材の採用に悩む企業は多く、自社の社員へのデジタルリスキリングへの投資は課題解決に繋がる一手となり得る。デジタルリスキリングの強みはスキルの「掛け算」であり、様々な分野ですでに活躍した経験やスキルにデジタルスキルを掛け合わせることにより、既存分野でのDX化を推進する活躍人材へと成長する可能性を秘めている。

 

今後はAIの普及により一般的な事務作業等の雇用の需要が縮小するリスクも想定されることから、企業において高生産性人材へと転換する取り組みは重要な人材戦略であるといえる。

 

同社は厚生労働省の専門実践教育訓練講座、経済産業省のリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業に採択されており、省庁との連携によるブランディングにより競争力を獲得することができており、行政との連携をスムーズに行える基盤を構築することができている。

 

行政と連携したデジタルリスキリングの推進