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研究リポート
ライフスタイルビジネス研究会
変容する社会課題や顧客課題を的確に掴み、ドメインとバリューチェーンの拡大を切り口にした新たな「ライフスタイル価値」を創造するための真髄に迫ります。
研究リポート 2024.06.13

暮らしにフィットネスを ―ライフスタイルにおけるヘルステック市場と事業開発のポイントとは― FiT

【第5回の趣旨】
ライフスタイルビジネス研究会の今期のテーマは「-ライフスタイルカンパニー100社の創造-10年後のビジネスモデルをデザインしよう」である。第5回は「新規事業開発への挑戦」を研究するため、3社のゲストにご講演いただいた。
社会や顧客の変化をいち早くキャッチアップし、自社の成長のために組織に取り入れるとともに、新規事業開発への投資を積極的に行い続ける3社のゲスト研究を通じて、取り組むべき3点のテーマを掘り下げた。

開催日時:2024年5月24日(大阪開催)

 

 

FiT
取締役副社長 小林 幸平 氏

 

 

はじめに

京都府に本社を構え、フランチャイズ型でフィットネスジムを運営するFiT。同社の運営する次世代型フィットネスジム「Life Fit」は、ITの活用と分かりやすい料金体系でユーザーとオーナーの双方から人気を博す。

 

2022年2月にサービスを開始して以来、現在の店舗数は50件、会員数は2万名を超えており、創業から4年で急拡大している。今まで運動に踏み出せなかったり続かなかったりしたユーザーが、無理なく始められて続けられる――。そんな「暮らしに寄り添うフィットネス体験」を同社は提案する。


ユーザーから人気が出た、京都大学付近の低価格利用可能な2店舗目のジム

 


 

まなびのポイント 1:顧客価値・ニーズと事業マネタイズのポイント

日本のフィットネス市場単価は年々増加傾向にある。「所得のある人が健康を手に入れられる」という社会課題を踏まえ、同社では「健康を民主化」させるために月額2980円で利用できる低単価フィットネスジムを展開している。日本人は健康や情報にお金を払う感覚が薄く、現在市場にあふれる高価格帯のジムはフィットネス初心者にとってハードルが高い。フィットネスに興味があるものの、価格が原因で踏み出せない人にも利用してもらえるよう、同社はデイユースから始められる料金体系を取った。アプリで利用状況を管理できるシステムを生かし、顧客の定着化を図っている。ジムを低単価で提供するために、フランチャイズでの店舗出店やマシンの原価調整・DX化などによって店舗の無人化を実現。低単価でも利益が確保できる収益構造を構築した。

 

まなびのポイント 2:顧客とオーナーから選ばれるための提供価値開発の設計

同社では「フィットネス初心者のお客さまが通いたくなるジム体験の提供」に重きを置いている。低単価で始められ、入会・退会などの手続きもアプリで管理できるようにすることで、競合と比較して顧客が利用しやすいように工夫を凝らした。アプリで獲得したポイントは提携店のクーポンに交換できるシステムがあり、ヘルスケア初心者の顧客が楽しみながら健康を維持できるという。

 

店舗は全てフランチャイズ型で出店しており、3年後には全国1000店舗にまで拡大する目標がある。フランチャイズオーナーが事業を始めやすいよう、マシンコストの調整や施工を内製化することで、店舗を出店する際にかかる金額だけでなく回収までの年数をそれぞれ約1/3にまで縮小することを実現した。

 


利用登録から決済まで全て完結できる自社アプリ

 

まなびのポイント 3:IT活用による新たな価値創造モデルの確立と独自化の実現

同社ではテクノロジー投資に力を入れており、従業員の3分の1はエンジニアが占める。DXを推進し、業務の内製化を促進することで競合より前進した新たなサービスを提供することが可能になった。

 

顧客の利用履歴も全て独自のアプリで行っており、フィットネスの履歴だけでなく、健康にまつわる食事のデータも保持している。居住地や性別など、属性ごとに絞ったデータをBtoC企業に提供して、商品開発やマーケティングに活用。都心だけでなく郊外にも店舗を出店しているため、属性の異なるデータが取れるという。

 

事業を行う際、奇をてらった事業にこだわる必要はない。事業に対してビジョンを持ち、顧客にとって圧倒的な価値を提供することが重要である。