ウーマンメイクの農業経営 ウーマンメイク
【第4回の趣旨】
アグリサポート研究会では、「アグリ分野の持続的成長モデルを追求する」をコンセプトとして掲げている。
第4回は、アグリ業界において先進的な取り組みを行う企業を視察。1日目は、ウーマンメイク代表取締役の平山亜美氏より、「ウーマンメイクの農業経営」と題して、ICT、ブランディング、地域連携を活用した「女性のみで経営できる業種」としての農業についてお話しいただいた。
開催日時:2024年3月28日~29日
代表取締役 平山 亜美 氏
はじめに
2015年設立のウーマンメイク(大分県国東市)は、80a(アール)の規模で水耕ハウス栽培(リーフレタス・ホウレンソウ)を手掛けている。
同社の特長は、社名であるウーマンメイクと経営理念「女性が輝く農業を通じて、地域活性化に貢献します。」に基づき、社員全員が女性であり、「女性が働きやすく、働き続けられる職場」を確立していることである。同社は、農林水産省主催「農山漁村女性活躍表彰 農林水産大臣賞」(2020年4月)を受賞。また、「APEC BEST AWARD(アジア太平洋経済協力会議)」(2021年11月)の日本代表にも選出されている。
まなびのポイント 1:女性が働き続けられる事業としてレタスの水耕ハウス栽培を選択
同社設立の背景には、平山氏が出産を機に考えた「どのような仕事であれば、子育てをしながら働き続けることができるか」という思いがある。「農業がしたい」という思いからの出発ではなく、「女性が働きやすい業種は何か」について考え、農業を選択した。仕事と育児の両立を考えた際、仕事を基準に子育てを合わせるのではなく、子育てと親和性の高い農業を選び、女性が働き続けやすい農業に取り組んできた。
品種の選定においても、「女性だけで運営できる農業」を考え、レタスの水耕ハウス栽培を選択した。全員が同じ時間にそろう必要がないこと、出社可能な人員数に応じて栽培量が調整できること、周年栽培ができること、天候に左右されないこと、コンピューター制御できること、重量が重くない野菜であること、など総合的に判断している。
同社の経営理念からはじまる理念・方針体系が事業実践の隅々まで浸透することで、地域の女性から「働きやすく、働き続けられる職場」として選ばれ続けている。
ウーマンメイクが管理する水耕ハウス栽培
まなびのポイント 2:生産性・働きやすさへの投資と雇用の善循環
ウーマンメイクは、女性が働きやすいビジネスモデルを設計し、柔軟な働き方を提供することで人材を集めている。例えば、安定生産による販路の開拓で稼げる体制をつくる。利益と補助金を駆使してICTに投資する。社員の声に耳を傾け、作業工程における重さ・高さ・移動方法などの負荷をアナログとデジタルの両面で改善する、などだ。地域社会に、また、働き続けたい女性に必要な会社として、善循環の経営を実践している。
ウーマンメイクのICTに関する取り組み
まなびのポイント 3:販売戦略とブランディング
ウーマンメイクの経営理念は、商品のブランドコンセプトにも明確に打ち出されている。
“優しいママ”のような愛情を込めて育て、 “野菜そのまま”の新鮮な味を届ける。自社ブランド「やさいまま」は、商品のネーミングからパッケージングまで自分たちで行っている。
創業以来、販路開拓にも注力し、現在90%程度が独自販路となっている。一般的に、野菜は相場の波が大きく、市場に出した後でしか値段が決まらない。生産品種の選定にはじまり、社員の希望で時間の融通を利かせながら、生産性投資により安定生産を実現する。そして、ブランドコンセプトを明確に打ち出した商品として販売する。相場に左右される野菜ではなく、安定した定価が付く商品によるビジネスが、同社の持続的な成長につながっている。
ウーマンメイクの商品群