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研究リポート

人的資本研究会

人材を投資により生産性を高められる「資本」として捉え、人的資本と活育サイクル(採用・育成・活躍・定着)の視点で事例研究を進めます。
研究リポート 2024.05.27

破綻寸前から、就職人気企業ランキング1位に ~経営者による戦略採用~

WORK SMILE LABO

【第6回の趣旨】
採用を経営課題と捉え、全社的に推進していく「戦略採用」を実践する企業に、そのエッセンスを学ぶ戦略採用研究会。当研究会では、採用の成功事例を研究し、採用難の時代でも自社の戦略にマッチした人材を獲得するためのイノベーションのヒントを提供している。

第6回はWORK SMILE LABO (岡山県)を訪問。オフィス見学と講義を通じて働き方改革の学びを深めた。同社は、経営破綻寸前に陥ったこともあるが、働き方改革に取り組んで業績を回復。2022年には大学生が選ぶ地元の就職人気企業ランキング1位で輝いた(山陽新聞社調べ)。そこに至る過程には、70以上もの働き方改革の仕掛けがある。その具体的な実践事例から、採用課題に対する働き方改革の考え方や、採用活動の取り組みについて研究を行った。

開催日時:2023年12月15日(岡山開催)

 

株式会社 WORK SMILE LABO
代表取締役 石井 聖博 氏

 

 

はじめに

 

WORK SMILE LABOの設立は1911年、石井社長の曾祖父が「石井事務機センター」を設立したことから始まる。石井社長が4代目社長として就任した後、2009年には倒産寸前にまで追い込まれたが、 自社のビジネスモデルを単なるOA機器販売業から「笑顔溢れるワークスタイル創造提案業」へ再定義。「自分たち自身が理想的なワークスタイルを実現できていなければ、顧客に提案できるはずがない」との思いで、さまざまな働き方改革に取り組んでいった。その結果、業績は急回復し、山陽新聞社が23年春卒業予定の大学生らを対象に調査した「地元就職人気企業ランキング」で1位に選ばれた。

 


オフィスには他社のモデルになるようなさまざまなアイデアが詰まっている。

 


 

まなびのポイント 1:笑顔で働く研究所「WORK SMILE LABO」

 

社名にある通り、同社が目指すのは「笑顔溢れる職場づくり」である。常に「もっといい働き方はできないか」と問い続けており、これまでの働き方改革の取り組みは70以上にもなる。特に力を入れているのがテレワークの推進で、Zoomを使って社員同士が常につながることで日本全国からの勤務を可能にするだけでなく、効率的に業務を分担することで生産性も向上させている。他にも福利厚生から健康管理、職場環境における小さな工夫に至るまでさまざまな取り組みを行っており、働き方改革の常に先を行く。こうした取り組みの一つ一つが採用ブランディングとなり、働き方に対し多様なニーズを持つ若い世代を引き付ける大きな武器となっているのである。

 


今まで実施した働き方改革の取り組みは70以上にもなる。

 

 

 

まなびのポイント 2:「理念ビジョン共感型採用」の実践

 

同社は、自社に本当に合った人材のみを採用する「理念ビジョン共感型採用」を実践している。特に選考フローに力を入れており、学生が自分のビジョンを発表する「ワクチャレ」というイベントを選考に取り入れている。学生は2週間かけて自分のビジョンを真剣に考え、発表までのプロセスを社員が全力でサポート。最後は地元のホールを貸し切って、学生の一人一人が自分のビジョンをプレゼンする。

 

こうした選考プロセスを経て、自社と学生のビジョンが本当にマッチしているのかを見極め、擦り合わせていく。その過程では当然、自社のビジョンに合わない学生も出てくるが、一方でそれが一致すれば、第一志望に選ばれる可能性は極めて高くなる。重要なのは、「母集団をいくら集めるかではなく、第一志望に選んでもらうこと」なのである。

 


「ワクチャレ」の様子。「どうすれば自社を第一志望に選んでもらえるか」を考え、学生に対して魅力的な選考を行っている。

 

 

 

まなびのポイント 3:中小企業にとって最大のリスクは「内定辞退」

 

同社では、内定後のフォローにもこだわっている。社員数十名の中小企業にとって最大のリスクは「内定辞退」であると考えており、5月の内定後から約1年間、内定者と徹底的に向き合っている。6~8月には早くも研修をスタートさせ、営業同行なども実施。年明け以降はアルバイトとして週2~3回の出勤を促している。約1年間、社員が内定者と絶えず関わり続けることで、内定者の働くことへの実感を強め、内定辞退を起こさないようにしているのだ。成長意欲の高い学生には早くから職場経験を積めると好評で、この取り組み自体が優秀な学生を引き付けることにもつながっており、まさに採用における好循環を生み出している。

 


研究会当日の様子。今回は当研究会の最終回として、今までの学びを振り返り、総まとめも行った。