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研究リポート
新しいものを生み出す組織カルチャー研究会
ビジネスモデルや組織の変革が求められる現代において、人材価値を見直し、その価値を最大限に引き上げイノベーションを起こすことは必須の経営技術です。成長発展の足掛かりとなる「新しいものを生み出す組織カルチャー」を研究します。
研究リポート 2024.05.27

ビジョンを実現する組織とは?~企業文化の作り方~ WORK SMILE LABO

【第2回の趣旨】
新しいものを生み出す組織カルチャー研究会では「文化」を研究対象とし、変革を起こし、持続的に成長している企業ではどのような「文化」を作り出しているのか、すでに「風土」となっているケースも含めて、研究テーマとして扱い、相互に学び合う場としている。
第2回は、WORK SMILE LABO (岡山県)を訪問。破綻寸前の状態から岡山県内の就職人気企業となるまでには70以上もの仕掛けがあった。代表取締役である石井氏の講演とオフィス見学を通じて具体的な取り組み事例を学ぶことで、「ビジョン実現のための企業文化づくり」への学びを深めた。

開催日時:2024年4月25日(岡山開催)

 

 

 

WORK SMILE LABO
代表取締役 石井 聖博 氏

 

 

はじめに

 

WORK SMILE LABOの前身は、石井氏の曾祖父が1911年に設立した石井事務機センターだ。筆や墨を売る文具店として事業を開始し、現在では事務用品・オフィス家具・OA機器の販売を手掛けている。石井氏が2006年に入社し、その後2009年に同社は倒産寸前にまで追い込まれた。しかし、ビジネスモデルを単なるOA機器販売業から「笑顔溢れるワークスタイル創造提案業」と再定義し、「まずは自分たち自身が理想的なワークスタイルを実現できていなければ、顧客に提案できるはずがない」との思いで、働き方改革に着手。その結果、業績が回復し、2022年には岡山県における新卒就職希望企業ランキング1位(山陽新聞調べ)となった。

 

採用や育成、評価、働き方に至るまで、ビジョン実現を目的に一貫した施策を打ち出す同社から、ビジョンを実現するための組織づくりを学んだ。

 


自社を「笑顔あふれるワークスタイル創造提案業」と定義しており、オフィスには社員が笑顔で働けるようさまざまな工夫を凝らしている

 


 

まなびのポイント 1:笑顔で働く研究所「 WORK SMILE LABO」

 

WORK SMILE LABOが目指すのは、社名の通り「笑顔溢れる職場づくり」である。常にもっといい働き方はできないかと問い続け、これまでに取り組んだ働き方改革は70以上にものぼる。

 

最初に力を入れたのはテレワークの推進だった。テレワークという言葉がまだ世の中に浸透していなかった時代から、テレワークによる働き方改革に取り組んだ。委員会制度や福利厚生(健康管理)、職場の小さな工夫に至るまで、さまざまな取り組みを行っており、常に次世代を見据えたワークスタイルの創造に努めている。

 

取り組み1つ1つが社員の意識改革につながり、多様な働き方を望む若い世代を引き付け、業績向上に寄与しているのである。

 


常に「もっといい働き方はできないか」と問い続け、働き方改革のため、70以上もの施策に取り組んだ

 

 

 

まなびのポイント 2:全社で取り組む企業文化づくり

 

同社は、毎年社長方針でいくつかのテーマを掲げ、それぞれのテーマに対して委員会が組織される。全社員がいずれかの委員会に所属し、「会社の質の向上」のため本業同様に本気で向き合っている。委員会活動は評価の加点項目としており、会議への出席率や成果に応じて、社員一人一人を評価するという。

 

また、70以上の取り組みにおいて最重要とされる「8S活動」では、社内のスペースごとに担当者が割り当てられ、綺麗に保つだけでなく、職場の改善案を考え続けることが習慣付けられている。担当場所をローテーションすることで、常に新しい視点を取り入れ続け、場所ごとに何年経っても新しい仕組みやルールが生まれている。

 


「8S活動」の方針(出所:WORK SMILE LABO提供資料より

 

 

 

まなびのポイント 3:企業文化づくりは採用から

 

「全社採用・全社育成」を掲げるWORK SMILE LABOでは、社員一人一人に対して全社で向き合う社風がある。採用においては、自社に合った人材のみを採用する「理念ビジョン共感型採用」を実践。特に力を入れているのは採用で、学生が自分のビジョンを発表する「ワクチャレ」というイベントを選考に取り入れるなど、採用段階から自社のビジョンを徹底して伝えるとともに、学生のビジョンをひも解くことで、自社に合う人材を見極めている。

 

入社後は社長から新入社員まで、全社員が「ビジョン実現シート」を記入し、マネジメントの仕方を変えるだけでなく、互いのビジョンに関心を持ち、応援し合う文化が醸成されている。ビジョンの浸透が社員のエンゲージメントを固め、業績向上へつながっている。

 


当日の様子。講演のほか、参加者同士のディスカッションを行った