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研究リポート
地域創生型新しいビジネスモデル研究会
地域における課題に対して「産学官民連携」をキーワードとした事業開発の切り口で、地域課題解決型事業を学びます。
研究リポート 2024.05.09

リスクとリターンとインパクトのこれから ~社会課題が経営テーマの最前線に~:ソーシャル・エックス

第1回の趣旨
当研究会では「地域創生×産学官民アライアンス」による新規事業開発を実現するため、行政・教育機関・スタートアップ企業・地域創生型ビジネス牽引企業などをゲストに迎え、事業開発の切り口となるイノベーション・共創へのヒントとともに、社会課題解決型事業を具体化させる機会を提供している。
第1回はグローバルとローカルの視点で、社会課題解決・地域課題解決をビジネスとして企業の成長エンジンにするための考え方について講義とディスカッションを通じて理解を深めた。官民共創で取り組む事業創造の考え方や現在のトレンド、未来の戦略について、ソーシャル・エックス代表取締役伊藤氏にご講演いただいた。

開催日時:2024年3月13日(東京開催)

 

ソーシャル・エックス
代表取締役 伊藤 大貴 氏

 

はじめに

本研究会のテーマである「地域創生×産学官民アライアンス」によるビジネスモデルを検討するに当たり、国・行政の方針を理解することは必要不可欠である。パートナー同士がWin-Winになる構図を描くことが重要となる一方で、企業にとっては官民共創について「マッチングの壁」「事業化の壁」「推進の壁」といった複数の壁が存在しており、取り組みたい意思があっても推進できないジレンマの中にいる企業や自治体は多い。

こうした中、ソーシャル・エックスは社会課題解決を目的とした新規事業開発を支援する官民共創プラットフォーム「逆プロポ」の企画運営を手掛け、さまざまな企業・自治体の官民共創を推進する架け橋として活動している。この先進的な取り組みは官民共創に新たな形を生み出しており、社会課題解決事業を生み出す上で重要な存在となりつつある。今回は事業内容をはじめ、官民共創のポイントについてご講演いただいた。



ソーシャルエックスが運営している官民共創プラットフォーム「逆プロポ」。
従来の官民共創の在り方を変え、企業と行政の共創を推進する役割を担っている

まなびのポイント 1:共感形成による行政との共通ビジョンを構築する

官民共創による事業を推進するためには、企業側のマネタイズポイント(ビジネスモデル)と行政の動機(共感ポイント)をどう作るのかが要となる。そのため、事業計画による数字のインパクトだけではなく、民間と行政、双方の信用創造が求められる。「社会にとって重要な価値を持つもの」より「お金がもうかるもの」が優先されるようなビジョンだと、行政側の動機付けとしては弱い。仕組みやルールを提案するのではなく、どのような課題を解決するのか、課題解決によりどのような未来を創造できるのか、ビジョンへの共感形成が重要となる。


講演の様子。参加企業1社ごとの状況や課題に合わせたディスカッションや具体事例を交えた

まなびのポイント 2:DXによる官民共創で生まれる新しい市場領域は拡張している

ビジネスはマーケット規模が大きく、課題解決の難易度が低い位置からスタートすることが多い。かつて、課題解決の難易度が高い領域はマネタイズが困難であり、行政が推進せざるを得ない領域として存在しており、課題解決の難易度が低い領域もマーケット規模が小さくマネタイズが困難な領域として経済合理性がないと判断されていた。しかし、この構図はDXにより変化しつつある。さまざまなコミュニケーションツールにより今後の経済合理性曲線は拡張し、これまで行政が推進せざるを得なかったマーケットの規模が大きくなり、課題解決の難易度が高い領域に官民共創の可能性が生まれている。


行政・高校・企業が連携した取り組み事例より官学民連携の形など共創のさまざまな形について事例を交えて紹介

まなびのポイント 3:社会課題解決型事業の成功のポイントは局地戦にある

新規事業は、新しければ新しいほど、まずはスタートし形にすることが求められる。人は見たことがないものを想像できない。高い熱量を持っていても言葉だけでは理解を得ることが難しいため、まずは規模が小さくとも事業を形にし、手掛けた事例を紹介しながらパートナーを開拓していきたい。

社会課題解決型事業は理想が先行しがちで、実績の伴っていないケースが少なくない。まずは小さく始め、熱量を持って課題と向き合い、事例を創出することを一丁目一番地とすることが新規事業としての成功の一歩目である。