メインビジュアルの画像
研究リポート
ライフスタイルビジネス研究会
変容する社会課題や顧客課題を的確に掴み、ドメインとバリューチェーンの拡大を切り口にした新たな「ライフスタイル価値」を創造するための真髄に迫ります。
研究リポート 2024.04.15

「食」から日本の未来を支える:エームサービス

【第3回の趣旨】
当研究会の今期のテーマは「-ライフスタイルカンパニー100社の創造-10年後のビジネスモデルをデザインしよう」である。第3回は「住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会」 とともに「ライフスタイルビジネスの未来像」を研究するため、3社のゲストにご講演いただいた。人口動態・社会構造の変化をはじめ、産業構造の改革や社会課題・顧客課題の変容というライフスタイルビジネスに大きな影響を及ぼすポイントに対し、3社のゲスト研究を通じて、取り組むべき3点のテーマを掘り下げた。

開催日時:2024年1月26日(東京開催)

 

 

エームサービス
取締役 常務執行役員 紅林 利弥 氏

 

 

はじめに

エームサービスは1976年に三井物産とアメリカの大手給食会社であるアラマーク社の共同出資で生まれた。三井物産本社の社員食堂運営から給食事業を始め、1978年には病院における給食事業を開始。日本初の適温適時サービスや選択食、ベットサイド配膳を手掛けた。

 

1980年代にはオフィスコーヒーやユニフォームレンタル事業など「食」を中心としたサービスを広げ、1994年には広島で開催されたアジア競技大会の選手村食堂を運営。スポーツ栄養の分野でも定評があり、現在はフードサービスの枠を超え、オフィスからスタジアムまで幅広い事業領域でサービスを展開している。グループ全体(全国3900カ所)で1日約130万食を提供している。

 

 


 

まなびのポイント 1:事業領域はエンドレス

社員食堂運営から始まったエームサービスは、病院や学校、スタジアムなどフードサービスの分野でドメイン領域を広げていき事業拡大を図っていった。また、「食」を軸に空間デザインやサービス、顧客の課題を解決する企画力を持ち、売れる仕組みの構築までサポートしている。あるエンターテインメント施設の支援を企画した際は、まずターゲットを絞りこむのではなく、来訪者それぞれのニーズを的確につかむ空間づくりから始めた。

 

特にこだわったのは、子どもが楽しめる空間を創造すること。子どもが主役であるからこその視点で人が集まる場所を作り、購買欲を高める仕掛けなどの工夫を凝らした。

 

これまでの案件全てが成功したわけではない。想定外の動きや事象に対しての失敗を生かして次につなげることで企画力を培い、事業を拡大させた。


オフィス、病院、学校、スタジアム、ホテルなど、ドメインを多角化するとともにソリューションを拡大

 

 

 

まなびのポイント 2:B2B4C

同社のビジネスモデルはBtoBである。クライアントのニーズに対してソリューションを活用してサービスを提供しているが、最も大切にしているのはクライアントの先にいるカスタマーだ。カスタマーの笑顔、喜びを創造することが自社の強みであり、そのためにコンビニやカフェとの共創、コラボイベントなどさまざまな企業とのアライアンスによる唯一無二の価値創造を行っている。また、アフターコロナによって徐々に人が戻ってきたオフィスで、従業員の働きやすさや満足度を高めたいというクライアントに対して、自社ブランドのセルフ売店や国際的なスポーツイベントでも提供されたグラブ&ゴーなど数多くのソリューションから最適解を導き出し、カスタマーの満足へとつなげている。

 

 


本社にある自社ブランド売店の「aimart」の風景。オフィス用の売店の運営方法について学んだ

 

 

 

まなびのポイント 3:食から日本の健やかで豊かな未来を支える

「食」は生きるために重要な要素の1つである。1日約130万食の食事を提供している同社では、安全安心な食事はもちろん、多様化するカスタマーのニーズに応えるべく豊かな「食」の創造やライフステージに合った「食」と「健康」の関係を構築したいという思いを持っている。病院食やスポーツ栄養を手掛ける知見を基に「栄養」や「健康」に対する世界各国の最新のトレンドを押さえ、食の安全や環境配慮にも目を向けている。また、大規模な国際スポーツイベントの食堂運営の経験は、ハラールやヴィーガン、グルテンフリーといった食の多様性への対応力を高め、幅広いカスタマーのニーズに応え得るサービスの企画提案につながっている。「日本の未来を支える」という大きなビジョンを掲げ、社会課題に対して自社が「食」で何ができるかを考え、「人を健康にする」という着眼点で空間から、食材、提供方法、情報発信までを企画できることが同社の強みだ。

 


エームサービスでは、食品安全はもとよりCO2削減などに取り組んでいる