自社の持ち味を生かした個性化戦略で地域ファーストコールカンパニーを目指す
日本国内においては、人口減少、新築着工棟数の減少など、住宅・リフォーム・建設・不動産をはじめとする「住まいと暮らし業界」にとって厳しい未来が予測される。
とはいえ、当業界は人間の生き方に関わる領域であり、無くなることはない。目先の課題は様々に挙げられるが、 住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会では自社の魅力を最大化し、本質的な価値を提供することで「顧客に選ばれる企業」であり続けるためのヒントを学ぶ。
今回のメインテーマは「個性化戦略」。自社の持ち味を生かした個性化戦略で地域ファーストコールカンパニーを目指す。
縮小市場の中でも貢献価値を尖らせ選ばれる会社に。差別化ではなく、個性化。会員間・業界内で競い合うのではなく、個性化で棲み分けるビジネスモデルを考えて頂きたいと考えている。
第4回は、M&Aという手段を活用し、グループ会社を増やすことで地域密着多角化(ワンストップ)モデルを展開する、ナカミライズホールディングスから学びを得た。
開催日:2024年3月18日(名古屋開催)
名誉顧問 中村 陽公氏
はじめに:地域社会を豊かにするためM&Aで事業を拡大
愛知県東海市で公共事業の土木工事や不動産販売業などを手掛けるナカミライズホールディングス。2011年耐火・耐熱・カッター工事を手掛ける会社のM&Aを皮切りに、グループとして5社以上を譲り受け、内製化やエリアの拡大を図っている。
東海市で生まれ育った企業として、上下水道、道路、河川改修などのインフラを中心に街づくりに関わる事業を通じて、未来の地域づくりに貢献したいという強い思いのもと、核となる土木工事の周辺工事の企業をグループインしてきた(現在グループ会社は13社)。
グループ企業所在地
まなびのポイント 1:業界・社会課題解決(事業承継)に向けた取り組み
帝国データバンクが2022年に行った「全国『社長年齢』分析調査」によると、全国の社長の平均年齢は60.4歳と32年連続で上昇し、過去最高を更新している。
経営者の高齢化が進む一方で、「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022)」によると、後継者不在率は2011年以降で初めて60%を下回っている。
コロナ禍を機に承継に向き合う機会が増えたこと、地域金融機関をはじめとする支援機関相談窓口が拡充されたことで、第三者承継やM&A、ファンド経由の経営再建併用の事業承継などが増加したことに起因している。
社長平均年齢/社長交代率の推移
後継者不在率推移(全国・全業種)
出所:帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2022年)」(左)、「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022年11月16日)」(右)
まなびのポイント 2:時間をかけてでも新たな経営者を育成する
M&Aを成功させるポイントは譲渡オーナーをリスペクトすること。「従業員の待遇が保障されるのか」「給与や役職が下がるのではないか」と不安になりがちのため、そのネガティブな考えをポジティブに変えることが大切となる。伝えたいことがしっかり伝わるように、従業員が心を開いてくれるまで待つことも意識している。
そして、今までのM&Aの経験をもとに説明することが重要。例えばこれまで譲り受けた会社の中に、5期連続赤字で債務超過の会社があった。そのとき社長の給料を取らないことにし、一方で従業員の待遇は変えずに、半年でV字回復させ賞与を出せるまでにすることができた。このような実際の会社のM&Aとその後日談を話すことで、安心してもらえるように意識している。
M&Aを成功させるポイント
まなびのポイント 3:ナカミライズグループの今後のビジョン
ナカミライズグループでは現在62億円の売り上げを200億円に拡大することを目指している。また、ナカミライズホールディングスがM&Aで提携した同業種の会社のデータセンター的な役割を担う構想を練っている。
例えば、これまで現場担当が行っていた竣工書類などの作成について、データセンターに情報を上げ、専門チームが対応することで、品質の標準化や現場の施工管理の生産性向上につながる。実現することで、休みが少なく残業が多い建設業界のイメージを払拭することを目指す。中村名誉顧問は70歳での引退を目標に、残り8年、M&Aを活用しながらビジョン実現に取り組んでいくという。
ナカミライズホールディングスがグループ会社のデータセンター的な役割を担う
※図表は講演資料より抜粋