【第1回の趣旨】
企業が経営環境の変化に対応しながら持続的に企業価値を高めるためには、事業ポートフォリオのみならず、人材ポートフォリオの構築や、付加価値を生み出す人材の確保・育成など経営戦略と適合する人材戦略が重要である。
当研究会では、「事業と連動した経営戦略×人材戦略の最大化」を探求している。第1回は、VUCA時代※を生き抜くための組織変革の一連の流れや人事部門の取り組みについて、沖電気工業人事総務部⾧の八反田徹氏にご講話いただいた。
※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字。不確実性が高く、将来予測が困難な状況を示す造語
開催日時:2024年2月29日(東京開催)
人事総務部⾧ 八反田 徹 氏
はじめに
発明家であるアレクサンダー・グラハム・ベルが電話機を発明してからわずか5年後の1881年、沖電気工業は日本で初めて電話機を開発するとともに、日本初の通信機メーカーとして創業した。創業以来、「進取の精神」を受け継いで来た同社は、テクノロジーの急速な発展や世界情勢の変化から、未来の予測が難しいVUCA時代を迎えた今、「受け身・均質な働き方」から「前向き・多様な働き方」への組織変革に向けさまざまな取り組みを行っている。
多様で前向きな組織変革を促す「イノベーションマネジメントシステム」
まなびのポイント 1:VUCA時代における多様で前向きな変革
これまでに築いてきた常識や慣習が通用しないVUCA時代を生き抜くためには、前述の通り、「受け身・均質な働き方」から「前向き・多様な働き方」への組織変革が必要である。
同社は、全員参加型の「イノベーションマネジメントシステム」を展開し、改善・改革を積極的に行える仕組みを導入している。
イノベーションマネジメントシステムでは、日々の業務における小さな改善から、新規事業の取り組みまでを対応しており、手段の多様性だけでなく、経験やゴールの多様性も高めている。組織と個人のベクトルを合わせることで、VUCA時代を生き抜く多様で前向きな組織変革へとつなげているのだ。
まなびのポイント 2:組織のパフォーマンスに資する仕組みや風土
組織のパフォーマンスを向上させるためには、組織の中で大きな役割を持つ管理職の役割発揮が求められる。しかし、管理職に求められる「マネジメント」とは、「試行錯誤しながら粘り強く組織の目指すところへとたどり着くこと」である。
同社では、等級ごとの役割を明確化する役割等級制度を徹底し、「マネージャー」「プロフェッショナル」「エキスパート」などの複線型等級制度を設計することで、個人のパフォーマンスが発揮されやすい環境をつくった。ほかにも、役割役職定年の廃止や、テレワーク、副業など多様な人材を受け入れるための働き方を推進している。
沖電気工業が掲げる企業理念や目指す姿、行動指針、企業行動憲章・行動規範
まなびのポイント 3:採用・育成・活躍を支える人事部門の取り組み
同社では、採用・育成・活躍・定着といった適切な「人材サイクル」を回している。採用においては、対象者の見直しとチャネルの拡大を行っている。また、人事施策の対外発信を行っており、求職者に事前に発信することで入社後のミスマッチを防止している。育成では、集合型から個別対応といった「教える教育制度から学ぶ教育制度への転換」を図っており、主体性と研修効果の向上が期待されている。ほかにも、各種人事施策を支えるとともに、人事部門自体の業務効率化の実現に向け、人事情報のインフラ整備やDXにも積極的に取り組んでいる。