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研究リポート
デザイン経営モデル研究会
経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート 2024.03.12

最先端技術×経営理念のシナジーによる新たな経営資源の創造とコミュニケーションデザイン:株式会社やまやコミュニケーションズ

【第3回の趣旨】
当研究会では、秀逸なデザイン経営モデルを持つさまざまな企業・団体の現場の「体験」を通じて、研究会のテーマでもある「体験価値」と「自社らしさ」を創る1つの資源であるデザインの力を持って、差別化と高収益を実現するためのヒントを提供している。

第3回は、やまやコミュニケーションズ代表取締役社長の山本正秀氏より、同社が創出し続けている新たな経営資源に加え、マーケティング戦略の軸となっているタッチポイントマネジメントなどのコミュニケーションデザインについてご講演いただいた。

開催日時:2024年1月30日(福岡開催)

 

 

株式会社やまやコミュニケーションズ
代表取締役社長 山本 正秀 氏

 

 

はじめに

 

やまやコミュニケーションズは、辛子明太子製造、販売をはじめ、水産物および一般食品加工製造、販売・外食事業を展開している。販売する辛子明太子関連の商品数は1164アイテム(2018年実績)であり、業界一のアイテム数を誇っている。

 

同社は辛子明太子の品質にこだわりを持っており、原料から一貫して製造を行っている。これまで、工場勤務の社員がオホーツク海向けの船に乗って辛子明太子の原料になるスケトウダラ漁に同行することもあるという。

 

今回は、代表取締役社長の山本正秀氏に、同社の経営の軸となる企業コンセプトや実践しているマーケティング手法、そして今後の新規事業拡大の3つに焦点を当てご講演いただいた。

 

 


辛子明太子製造の様子

 


 

まなびのポイント1:50周年を見据えPhilosophy(経営理念)・Vision(ビジョン)を刷新

 

同社は1974年に福岡県で創業し、2024年で創業50周年を迎える。50周年という節目を見据え、Philosophy「安心安全で、ワクワクする食文化を提案し続けます。その活動を通じて、幸せな社会の創造に貢献することを使命とします。」、Vision「九州から世界へ、やまやスタンダードを。」を策定した。どちらも、「Made in KYUSHU」という九州の食文化に焦点を当てており、九州の食文化を日本全体、そして世界へ届けるという思いが込められている。

 

同年は、本社機能を有する新工場を福岡県糟屋郡篠栗町へ移転。AIを活用したたらこの自動選別システムを導入するなど、デジタル化にも対応している。同社が常に進化し、新たな価値を提供し続けている背景には、 Philosophyが軸にある。

 

 


一般のお客さまも入ることができる「Yamaya Factory Terrace」に設置された展示物

 

 

まなびのポイント2:マーケティング戦略の軸「タッチポイントマネジメント」

 

同社は元々BtoB事業をメインに展開していたが、「消費者と直接つながることができるビジネスをしたい」という山本氏の強い思いのもと、2000年の代表取締役社長就任とともに社名をやまやコミュニケーションズに変更し、BtoC事業へと価値転換を行った。

 

マーケティング戦略としては、「タッチポイントマネジメント」を実践。本社にタッチポイント(企業や商品・サービスと顧客をつなぐ接点)を最大化させるための仕掛けを数多く設置している。例えば、本社隣接の施設では地域住民・社員・観光客が交流できる場としてレストランを運営、工場見学や明太子の漬け込み体験などの体験型アクティビティを提供するなど、さまざまな形でタッチポイントマネジメントを実践している。

 


やまやコミュニケーションズが展開する施設

 

 

まなびのポイント3:辛子明太子製造にとどまらない新規事業拡大

 

同社が製造する明太子は世界18カ国以上に流通しており、日本の食文化の素晴らしさを世界各地へ届けている。

 

同社は、辛子明太子製造事業のほかにも外食事業やいちご栽培などのアグリ事業も展開しており、いずれも九州の名産品や強みを生かした商品展開・事業拡大を行っている。

 

「やまや=辛子明太子」ではなく、同社は形を問わずに価値提供を行っている。その過程で九州と連携することで、九州のブランディング強化にもつなげている。