【第3回の趣旨】
当研究会は、デジタル戦略のケーススタディー・ワークショップを通じてデジタル戦略のロードマップを描くことを目的としている。今期は「従来の見える化手法とDXを横断し、マネジメントをアップデートする」をテーマに掲げ、第3回は「デジタルハイブリッド」を研究した。
開催日時:2024年1月26日~27日(大阪開催)
代表取締役社長 友安 啓則 氏
はじめに
1948年に創業した友安製作所は、元来の「ものづくり企業」としての強味を生かしたさまざまな事業を手掛ける。強みであるアナログの技術にデジタルを融合させることで、新たな価値の創造を行っている同社。今回は一般的にはDXと馴染みが薄いと考えられる「町工場」におけるDX推進の勘所を伺った。
開催日:2024年1月25日(大阪開催)
友安製作所の事業概要。インテリアやDIYアイテムのインターネット通信販売事業を中心に世界中の人々のライフスタイルに関わる企業を目指す
出所:友安製作所ホームページより
まなびのポイント1:DXの真の目的はコミュニケーションへの時間投資
なぜDXを推進するのか。DXにより期待される効果は時間短縮・効率化である。では、DXによって得られた時間を何に投資するのか。同社では「“コミュニケーション“への最大限の投資」に行きついた。
工務店事業から新規事業まで6つの事業を行ってきた同社では、かつて 「人」が会社に付いていけず、35%以上にまで離職率が上昇した。そこで、DXによる「見える化」を行い、円滑な社内コミュニケーションによる社員のエンゲージメント工場を図った。
一例として、ウェブミーティングツール「Zoom」の活用が挙げられる。離れた拠点にいる社員に、別の拠点にいるスタッフがすぐに声をかけられるよう常時接続をし、相手の様子をうかがいながらいつでもコミュニケーションができるような環境を整えた。導入当初は社内から「監視されているようだ」との声もあったものの、現在では気兼ねなくコミュニケーションがとれるツールとして定着した。その他にもコミュニケーションへの投資を積極的に行ってきた結果、今では離職率が1%以下となった。
「Zoom」を利用して、常時、全社でコミュニケーションをとっている
まなびのポイント2:ミスアンダースタンディングを埋めるDX
同社では日報をSNS(workplace from Meta)で行っている。行った業務について各自がただ記入するのではなく、業務について具体的に今後に生かしたいことや改善点などの“所感”を記入する。そうすることで、社員感の誤解をなくしたり、社員同士が互いを気遣ったりする風土が醸成されたという。
例えば、隣の席の社員がショッピングサイトを見ていたら通常は「サボり」を疑うかもしれないが、所感を意識すると行動の先を考える。実はその社員は製品のデザインに悩んでいて、ショッピングサイトを参考にしていたといったように、生まれかけた誤解を解消するのに役立つ。小さな出来事の積み重ねが不満の山となり、社員のエンゲージメント低下へとつながる。不満が小さいうちに解消する仕組みを同社はDXで構築した。
事務所の風景
まなびのポイント3:人を熱狂させる
DXツールを導入する際、社内の反発が起こることは容易に想像できる。「なぜ変えないといけないのか」「今までと同じではだめなのか」など、導入に当たってはこのような声が社内から上がるケースは少なくない。
同社でも同じような状況に陥ったが、現在ではDXツールは無くてはならない存在となっている。ポイントは導入当初にリテラシーの高い人たちに使ってもらい、熱狂するほどにツールを好きになってもらうことだという。その光景を他の社員が目の当たりにすることで「やると楽しい」と思わせるのである。人は変化を嫌う。しかし、その変化を「楽しそうなこと」と認識すれば、変化に対応することのハードルが下がるはずだ。
創業者が開発したカーテンフック製造機