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研究リポート
アグリサポート研究会
アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート 2024.02.19

商品のブランド化を目指して 石垣島SUNファーム

【第3回の趣旨】
タナベコンサルティングのアグリサポート研究会(第8期)は、「アグリ分野でのサステナビリティ(持続的成長)モデルを追求する」をコンセプトに、先端技術の活用や新しいビジネスモデルの構築について研究し、成功のポイントを学んでいる。
第3回は沖縄県の石垣島(八重山地域)でアグリ分野の先進事例を視察した。石垣島では、亜熱帯気候と豊かな土壌を生かした作物の栽培が行われ、果物やサトウキビ栽培、畜産などで沖縄県の農業全体の15%を占めている。パイナップルを中心に6次化を展開し、2009年に「全国果樹技術・経営コンクール」で沖縄県内初の農林水産大臣賞を受賞した石垣島SUNファームに、商品のブランド化のポイントを講話いただいた。

開催日時:2024年1月11日~12日(沖縄開催)

 

 

株式会社農業生産法人石垣島SUNファーム
代表取締役社長 當銘 敏秀 氏

 

 

はじめに

 

沖縄・石垣島の気候を生かしたパイナップル生産の歴史は、1930年代に缶詰用として栽培されたことに始まる。第二次世界大戦中は中断していた生産を1946年に再開し、1960年代には基幹作物として最盛期を迎えたものの、2度の貿易自由化によって大きな打撃を受けた。1度目は1971年の冷凍パインの輸入自由化、2度目は1990年のパイン缶詰の輸入自由化である。最盛期には石垣島に10あった缶詰工場は全て閉鎖となった。

 

本研究会でご講話いただいた石垣島SUNファーム代表取締役社長の當銘敏秀氏が就農したのは25歳の時、2度目の輸入自由化で経営環境が厳しいころだった。そこから30年以上にわたる石垣島SUNファームの販路開拓、ブランディング、6次産業化などの取り組みを紹介する。

 

 


石垣島SUNファームのパイナップル畑にて、當銘氏の説明を聞く研究会参加者

 


 

まなびのポイント 1:地の利を生かした高品質パインの生産

 

石垣島出身の當銘氏は進学のため18歳で石垣島を離れ、東京で20~24歳の4年間のサラリーマン生活を経て、25歳でUターンし就農した。その理由は、日本ではパイナップルを沖縄本島北部、石垣島、西表島のみで栽培していたことだった。

 

パイナップル栽培には、年間通じて15℃以上の気候条件であれば成長し、1年を経て開花処理をすれば、どの時期でもほぼ7カ月後に収穫でき、出荷がコントロールできるというメリットがある。つまり、沖縄で出荷の7カ月前に開花処理すれば、年中出荷が可能となるということだ。

 

同ファームは、沖縄県の最高峰・於茂登岳とバンナ岳に挟まれた、水の豊富な開南地区にあり、緩やかで水はけの良い斜面がパイナップルの栽培に最適である。また、長年にわたる生産で栽培技術を向上させた結果、2009年に公益財団法人中央果実協会が主催する「全国果樹技術・経営コンクール」にて、沖縄県内初の農林水産大臣賞を受賞した。

 

 

 

まなびのポイント 2:東京マーケットを開拓

 

販路確保の面では「離島」という地理上のハンデがある中、同ファームは4~5年間の試行錯誤の末、マーケットの大きい東京を目指した。ただ、東京で販売するためには、当時、地元で1㎏50円であったパイナップルの価格を、1個1200円に設定せざるを得なかった。ところが、持って行ったパインは2日で完売した。當銘氏はあらためてパインの価値に気付き、大きな自信につながった。

 

ここで考えたいのは、こだわって作っている商品の価値をどう判断すべきかだ。當銘氏は「1200円という高価格で買ってくれる人はいるのだろうか」と不安を抱えながらも、きちんと利益を出せる値決めをした。しかし、こういった心理的不安が利益を減らしてしまうこともある。値決めやブランディングはターゲットありきである。

 

 


石垣島SUNファームの「ティダパイン」。肌がつるんとした、やや大振りのパインで、酸味が薄い一方で甘みがあり、香り豊か

 

 

まなびのポイント 3:6次化と観光農園化に挑む

 

東京から関東へとマーケットを広げた同ファームは、学校給食として青果のカットパインを納品する事業が主力となっていた。ところが2020年、コロナ禍の影響で学校が臨時休業となり、給食がなくなってしまった。2年の栽培期間を終えたパイナップルが毎日収穫されるものの、納品先がない。積み上がっていくパインに愕然とした當銘氏は、取り急ぎ冷凍加工を行った。しかし、それも一時しのぎに過ぎず、冷凍庫はすぐにいっぱいになった。

 

ところが、給食が再開されると逆に供給不足が起こり、冷凍パインの引き合いがいくつも入って、在庫は全て納品できた。コロナ禍は結果的に同ファームの加工製品の可能性を広げることになったが、當銘氏は本気で倒産を覚悟したという。

 

現在、同ファームは、インバウンド(訪日観光客)の増加を見込み、6次化、観光農園化に挑戦中だ。加工製品にブランド価値を付加し、収益化をしっかりと見据えている。

 

 


6次化に向けて開発した天然果汁100%のアイスバー