第10期ナンバーワンブランド研究会第2回(東京)のテーマは「宣伝」。優れた技術や商品・サービスを開発していながらも、顧客・エンドユーザーに対してその価値を発信する力が極めて苦手という日本企業は多く、弱い部分でもある。
今回は、2023年10月に「凸版印刷」から社名変更し、TVCMを中心にさまざまなメディアで宣伝しているTOPPANホールディングス株式会社と、特徴的なキャラクターで多数のメディアに登場し、自社のユニークな商品を宣伝するサンコー株式会社のekkyさんに登壇いただき、各種媒体を活用した「宣伝」の仕方について学ぶ。
開催日時:2023年12月7日(東京開催)
2015年営業としてサンコー入社。2017年広報部を設立し、メディア対応やプレスリリースの作成などの広報業務を担当。会社イメージカラーであるオレンジのシャツと蝶ネクタイ、オーバーオールというポップなキャラクターでテレビ出演やSNSで広報活動をしている。
はじめに
サンコー株式会社は、2003年に設立した秋葉原を拠点とする家電メーカーである。従業員数58名と小さな規模であるが、ミッションに「面白くて役に立つ商品を社会に提供する」と掲げており、「着るこたつ」や「どこでも座れるリュック」など日常生活のちょっとした悩みを解決するユニークなアイデア商品を開発・販売し、話題を集めている。
登壇いただいた広報部長の﨏晋介氏は、ekky(エッキー)という愛称を持ち、「ヒルナンデス!」や「ガイアの夜明け」など200回以上テレビ番組に出演し、視聴者が求める家電の最新情報や最新グッズを紹介している。
講義では、「自社の売上を急成長させるメディアとの関係性のつくり方」をテーマに、テレビ局や制作会社との関係性のつくり方やプレスリリース・自社メディアでの発信など、自社をどのようにアピールしていくかをお話しいただき、中小企業が実践しやすい発信のポイントを学ぶことができた。
本社8階(受付)にはサンコーの商品が並ぶ。当日は参加者にユニークで画期的な人気商品を紹介いただいた。
まなびのポイント1:発信力を高めるための行動
どんなに良い商品を開発しても、たくさんの方に知ってもらわなければ意味がない。
サンコーは広告費を一切をかけずに、テレビ番組等の出演を通して数百万人に情報を届け売り上げを伸ばすことに成功した。﨏氏は、番組のエンドロールに載っている制作会社約250社に自社のプレスリリースと企画書を郵送し、制作会社に企画ネタを提供することで、自社の商品を紹介する機会を得ている。
自社の売上を伸ばすための宣伝が目的では取り上げてもらうことはできないため、「夏の電気代を抑える裏技!」など、視聴者が見たいと思う内容を企画し制作会社にアプローチをすることで、出演の機会を獲得を増やしてきた。
発信の機会を得るためには、制作会社へのアプローチや自社のSNSアカウント作成など、まずは行動を起こすことがファーストステップとなる。
「家電評価オブ・ザ・イヤー」をはじめとした賞を獲得。人々の役に立つ商品は社会からも高い評価を得ている。
まなびのポイント2:メディアと良い関係性を築く心がけ
﨏氏が仕事で大切にしていることは、「また一緒に仕事をしたい」と思ってもらい、一度取材をしてくれた方にリピーターになってもらうことである。そのために相手の立場になって行動することを心がけているという。
具体的な行動としては①鮮度が命の情報を扱っているメディア関係者にはレスポンスを速くする、➁制作会社へ送る企画書には情報を詰め込みすぎず、パッと見ただけで刺さるメッセージを載せる、③インタビューでは番組ディレクターが求めている回答を読み取り、視聴者や番組側が欲しい情報を伝えるなど、相手の立場になって+αの行動をすることで、メディア関係者との良好な関係性の構築ができるのである。
また、ニュースレターを毎月配信するなど、定期的に情報のやり取りをすることで関係を強化し、取材やテレビ出演の機会につなげている。
本社9階には工作機械や3Dプリンターなどアイデアを形にする道具が揃っており、社内での試作が可能となっている。
まなびのポイント3:ユーザー視点の開発と情報伝達でユーザーの心を掴む
秋葉原にあるサンコー本社9階には商品調達と商品開発の部門があり、社内でアイデア出しから試作まで実施している。社内は自由な社風で髪色や服装は自由であり、社員自身が日常生活の中で欲しいと思う商品を開発している。
社員が実体験をもとにアイデアを出し合いながら新商品を開発し、販売したものはHPのレビューを通してユーザーの反応をチェックし、アップデートを重ねている。そうすることでユーザー視点の商品開発、改良ができている。
さらに、ユーザー視点に立った役に立つ情報を伝達することで効果的に商品の宣伝ができており、サンコーの認知度・売上拡大につながっているという。「面白くて役に立つ製品でユーザーの悩みに応え続けていく」という同社の今後に期待が高まる。
本社にスタジオスペースを設け、商品ページの撮影を社内で完結。また、社内のスタッフがモデルになることで親近感を持ってもらう工夫も行っている。