【第2回の趣旨】
第10期ナンバーワンブランド研究会第2回(東京)のテーマは「宣伝」。優れた技術や商品・サービスを開発していながらも、顧客・エンドユーザーに対してその価値を発信する力が極めて苦手という日本企業は多く、弱い部分でもある。
今回は、2023年10月に「凸版印刷」から社名変更し、TVCMを中心にさまざまなメディアで宣伝しているTOPPANホールディングス株式会社と、特徴的なキャラクターで多数のメディアに登場し、自社のユニークな商品を宣伝するサンコー株式会社のekkyさんに登壇いただき、各種媒体を活用した「宣伝」の仕方について学ぶ。
開催日時:2023年12月6日(東京開催)
TOPPANホールディングス株式会社 広報本部 宣伝部長 佐藤 圭一 氏
はじめに
TOPPANホールディングス株式会社は、2023年10月より「凸版印刷株式会社」から「TOPPANホールディングス株式会社」に社名を変更。祖業である「印刷」の文字を社名から外した。印刷だけではなく、世界中のあらゆる課題を”突破”するという決意を社名に込め、英字の「TOPPAN」と表記した。
実際、現在は情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスという3つの分野で幅広い事業を展開し、「DX」と「SX」によってワールドワイドで社会課題を解決するリーディングカンパニーになろうとしている。
それを広く世間に知ってもらうために、TVCMを中心として各種メディアで積極的に情報発信し、「印刷だけの会社ではない」という認知と新たなイメージを醸成するリ・ブランディング(ブランド再構築)を推進している。
まなびのポイント1:ブランド=頭の中に存在する価値やイメージの集合体
人は、様々な情報との接触や体験を通して、企業に対する印象を持つようになる。「ブランド」とは、そうした体験の蓄積の結果、人々の頭の中に作られる価値やイメージの集合体と考えることができる。そしてブランディングとは、送り手側(企業)が意図する「あるべき姿」と受け手側(顧客・社会)が捉えているブランドの姿とのギャップを認識し、それを埋めていく活動である。そのために送り手側の「あるべき姿」を明確にして、それをカタチにし、伝えていくことが重要となる。
まなびのポイント2:あるべき姿をカタチにする
ブランディングをしていく上で、まず取り組むべきは自社のあるべき姿を「カタチ(言葉やビジュアル)にする」ことだ。プロジェクトのスタート時では、広報部門を中心に、各部門から選抜されたメンバーでワークショップを実施し、将来のTOPPANがどうあるべきかを徹底的に議論した。その結果、次の共通点が見いだされた。
TOPPANには「発想力」がある
TOPPANには「実現力」がある
TOPPANなら「壁を超える」ことができる
→つまり、TOPPANには「突破力」がある
この「突破力」を英字の「TOPPA!!!」と表現し、それを補完する形で「すべてを突破する」というワードを加えてブランドメッセージを開発。あるべき姿を言語化し、さらにビジュアル化して、すべての宣伝活動に共通して使用している。
これまでのコーポレートカラーである「トッパンブルー」に、「新鮮さ」「アクティブさ」「活気」をイメージするオレンジを使用
まなびのポイント3:企業イメージの転換とエクスターナルコミュニケーション
2020年に企業の認知度調査を行った結果、ビジネスパーソンで約9割、一般個人で約7割が凸版印刷の社名を知っていたが、事業内容まで知っている割合は非常に低かった。また、会社のイメージも「凸版印刷」という社名から、「紙に印刷をしている会社」というイメージを持つ人がほとんどだった。そこで、TOPPANの本来の姿と、世の中のイメージとの大きなギャップを埋めるために、TVCMを中心に大々的に広告宣伝活動を開始。①TOPPANというブランド名、②TOPPANは印刷だけではないこと、この2点に訴求ポイントを絞って宣伝を実施した。
社外に向けた積極的な発信(エクスターナルコミュニケーション)が認知度アップだけでなく、ブーメラン効果となって、従業員の意識変容や組織活性化など社内(インターナル)への影響にもつながっている。また将来的には優秀な人材の獲得や新しい事業の拡大などの効果にもつながることを期待しており、少しずつその効果は表れている。
2021年4月から放送スタートしたTVCMの一例
※画像は講演資料より抜粋