【第6回の趣旨】
CFOは「企業参謀として経営者の戦略意思決定を支援する人」という意味を持ち、ビジネスリテラシーを持った経営者のビジネス・パートナーとして、企業価値を高める役割を担っている。
第6回テーマは、「プロCFOの企業価値向上マネジメント」。企業価値向上に向けて、CFOにどのような役割が求められ、どのように会社経営をマネジメントすべきか、CFOとして現場で価値を発揮してきた講師をお招きし、マネジメントのポイントやESG経営推進の事例を踏まえながら、財務・非財務戦略による企業価値向上の手法を学んだ。
開催日時:2023年12月15日
コーポレートストラテジー本部 ESG室長 岡村 太郎 氏
はじめに
バリュエンスホールディングスは、大手中古品買取・販売企業である。「なんぼや」「BRAND CONCIER」「古美術八光堂」などのブランド事業があり、ブランド品・貴金属・骨董品などの買い取り、販売を行う。
講師である岡村氏は、2015年にSOU(現バリュエンスホールディングス)に入社後、事業開発、社長室、IR、ESGなど複数の重要機能を担当。現在は、同社のESGの責任者として、ESGやサステナビリティ関連の戦略策定や活動推進を⾏っている。
ブランド品等の買取専門店「なんぼや」を国内に100店舗以上展開
骨董・美術品などの買取専門店「八光堂」。骨董専門の鑑定士が出張買取を中心に対応、遺品整理・生前整理なども手掛ける
まなびのポイント 1:サーキュラーエコノミーによる財務・非財務価値の向上
サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動である。資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止を目指すものだ。
同社は、パーパス「Circular Design for the Earth and Us~地球、そして私たちのために循環をデザインする~」を掲げ、自社とパーパスに共感するステークホルダーに向け、サーキュラーエコノミーの実現に関する取り組みを発信し、非財務価値の向上につなげている。
同社は同業他社と異なり、中古品の買い取りに特化している。自社で仕入れた中古品を直接消費者には販売せず、業者向けに販売することで在庫リスクを排除し、財務価値を高めている。
非財務価値を提供できる市場の発見と、その中でどのように財務価値を高めていくか、販売先や提供方法などで他社とは異なるビジネスモデルに差別化している。
サーキュラエコノミーの考え方
まなびのポイント 2:ブランド価値を自社で再定義
欧米企業は日本企業に比べ、サーキュラーエコノミーの取り組みが進んでいる。2018年に英国の高級ブランドであるバーバリーが、42億円相当の売れ残り商品を値崩れ防止のために焼却処分し、糾弾されて以降、高級アパレルブランドは自社の中古品やリセール品の取り扱いを開始している。
中古品業界では、メーカーが系列店で中古品販売を開始したことがきっかけで、非系列店の売り上げが落ち、「品質や保証体制は系列店の方が上だ」と、認知されてしまった背景がある。
同社では、中古品のブランド価値の維持・向上に投資しており、サーキュラーエコノミー実現を推進する「国際慈善団体エレン・マッカーサー財団」や、ファッション業界の企業が参画する環境負荷低減に向けた国際イニシアチブ「The Fashion Pact(ファッション協定)」において、国内リユース企業として初めて加盟するなどのポジションを確立している。
また、三越伊勢丹のリサイクル買取サービス業務の請け負いや、一次流通企業とのアライアンス、銀座・表参道・心斎橋などの一等地への店舗進出など、「安かろう、悪かろう」といった従来の中古品のイメージから、特定のブランドに縛られず、高品質なリセール品を手に入れられるという新たな価値創造に取り組んでいる。
同社は、商品だけではなくブランド価値の向上に経営資源を配分し、「ブランド価値は従来の考えに囚われず、自社で再定義することができる」ことを体現している。