【第2回の趣旨】
少子高齢化が進み、労働人口が減少する中、ヘルスケア分野における「効率化」・「質の担保」の必要性は年々増している。課題解決のためにはデジタルトランスフォーメーションが必要不可欠である。
世界を根底から激変させたCOVID-19は、非接触の新しい常識を生み出し、それが推進力となりヘルスケア×IT=ヘルステックがより一層の注目を浴びている。
第2回の1日目は埼玉県日高市にある医療法人伯鳳会グループ医療法人積仁会の旭ヶ丘病院に現地視察を実施。病院の特色を生かした経営を実現しており、統一の理念のもとグループを拡大した同グループにこれまでの経緯や取り組みをご講演いただいた。
開催日時:2023年4月25日
旭ヶ丘病院 理事長 古城 資久 氏
はじめに
超高齢社会によって生じる「2025年問題」は、社会全体に多大な影響をおよぼすことが懸念されている。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる超高齢社会において、日本の医療業界はどのような未来を迎えるのだろうか。
社会インフラとして重要な役割を担っている医療機関において起こりうる問題や、病院側が取るべき対策を検討したい。
まなびのポイント 1:整った院内、5Sの徹底
旭ヶ丘病院は院内の5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)が行き届いている。5S活動はあらゆる改善活動の基盤となる。同院では活動を通じて職場環境を改善させるだけではなく,組織活性化や人材育成を目指しているとのことだ。
5Sを定期点検することで、患者はもちろんスタッフの利便性の向上、ヒヤリ・ハットを含めた安全対策、チームワークの醸成などあらゆる波及効果が生まれる
同院では5Sを推進する上で、スタッフの意識改革に時間を要した過去があった。これから取り組もうとする企業でも同じようなことがあるかもしれないが、利用する全ての人が満足できるレベルの医療を提供するためには必須であると古城氏は話す。
旭ヶ丘病院 新棟
整ったスタッフステーション
まなびのポイント 2:旭ヶ丘病院のM&A戦略基盤について
伯鳳会グループは現在9つの病院からなる医療法人である。その中でも2018年から伯鳳会グループとして運営してきた旭ヶ丘病院は、赤字体質からなかなか脱却できずM&Aを3回実施し現在に至る。 M&Aに乗り出したのには、医療需要が見込まれる地域で良好な経営を行えば確実に成長するという考えが背景にあった。人口や高齢者人口の現状、将来の見通し、医療需給状況、現在の医療とその質、財務シミュレーションなど多角的に検討し外部環境を整備した。
大切にしていることは「人心の荒れていない病院ほど良くなる」という考えだ。「清掃が行き届いている」「患者の整容が整えられている」「接遇が良い」「職員の髪型、着衣の乱れがない」「職員のやりたい医療が出来る病院は良くなる」という5つのポイントを満たしていると判断しM&Aを決断した。
改装した本館の様子
まなびのポイント 3:良い病院、良い医療とは
増収のためには現状を正しく理解し、選択肢を並べ、実行の順序を決定するという経営の基本スタンスをさずに医療の質を担保する必要があった。
そのために、「職場を将来的にも安定・存続させる展望を示す」「職場のステータス、存在意義を上げ、誇りの持てる職場にしていく」「処遇の改善を戦術として実行し旭ヶ丘病院で働くことの誇りを持つこと」を実現していった。
なお、同院は特徴的な医療を行っており、それを望む職員が多い。病院の社会的使命を職員が自覚し、やりたい医療を明文化させてモチベーションを上げている。