【第2回の趣旨】
「デザイン経営」とは、デザインを「企業やビジネスモデルそのものを差別化する経営資源」と捉え、受け手側の体験価値を高め、自社らしさを醸成する経営手法である。
当研究会の第2期では「『体験価値』と『自社らしさ』を創るデザインの力とは」をテーマに、個性化と高収益を実現する「デザイン経営モデル」実践企業を視察。経営の現場でデザインがどう活用され、他社との差別化、社員の活躍と成長、地域社会との共創を実現しているかを体験する。
第2回は、友安製作所と八清から、デザインによる価値創造のヒントを学んだ。
開催日時:2023年12月1日(大阪開催)
代表取締役社長 友安 啓則 氏
はじめに
大阪府八尾市に本社を構える友安製作所は、インテリア、エクステリア、内装建材などを製造・販売しており、カーテンフックや線材加工品の製造・販売も手掛けている。もともとは、ネジやカーテンフックを製造する町工場であったが、海外製の安価な樹脂製カーテンフックの普及により需要は激減。そのような状況下で現社長の友安啓則氏が入社し、中間事業者を通さずにインテリア商材を輸入販売する事業を2004年に開始した。
2023年11月現在は3万8000点を超えるアイテムを取り扱っており、EC事業・カフェ事業・工務店事業・レンタルスペース事業・メディア事業などを展開。売上高も右肩上がりに成長し、ものづくりに強みを持ちながら、インテリア販売にとどまらない「ライフスタイルカンパニー」として日々取り組みを推進している。
まなびのポイント1:デザイン経営は深化よりも探索
特許庁によれば、デザイン経営とは、人を中心に捉え、その根本的な課題を発見し解決していくことであり、「ブランド構築に資するデザイン」と「イノベーションに資するデザイン」の2つデザインを経営に活用していくことである、と定義されている。
同社では、デザイン経営は「まずは深化よりも探索」と定義している。既存事業の深掘りをするのではなく、あるものを利用してできる新しいことを探すということだ。
ブランディングにおいては、自社の強みを見出し、磨きをかけ、差別化を図ることが重要である。SNSなどをうまく活用し、広報活動を行い、自社にあるものをどれだけ魅力的にみせるかがポイントとなる。
まなびのポイント2:友安製作所Cafe&Bar
同社は、自社のインテリア商材を使い、DIYとカフェが融合した複合カフェ「友安製作所Cafe&Bar」をプロデュースしている。東京・浅草橋と大阪・阿部野、福岡・博多の3拠点にある同店内では、おしゃれな家具や内装などを実際に見たり触ったりして楽しむことができる。
インテリアとDIYとカフェを融合することで、インテリアやDIYに興味のない潜在顧客との接点を持つことができる仕掛けである。また、顧客の反応や声を直接聞ける場ができたことにより、商品企画などのマーケティングにもつなげている。同店はSNSを中心に話題になり、メディアで取り上げられる機会も増えたため、宣伝費をかけずにブランディングができている。
大阪・阿倍野にある「友安製作所Cafe&Bar」。1階はカフェ、2階ではインテリア雑貨やカーテン、タイルなどを購入できる
まなびのポイント3:コーポレートブランディング
同社では、「毎日が文化祭前夜」のように、全社一丸となって商品・サービス・イベントで常に新しい物事に挑戦する姿勢を大切にしている。また、企画デザイン・製造・撮影・ウェブページ制作など、各職務のプロが集結した職場環境であるため、何でも「DIY」でき、圧倒的なスピードで実現できる。全社員が情熱とプライドを持って仕事をし、 “いちいちカッコイイ”というスピリッツを大切にする友安製作所ワールドを創り上げている。
同社は「生きるをあそぶ」というスローガンと、「Tomoyasu Way Of Life」という10個のルールによって、「世界中の人々の人生が彩り豊かになる」というビジョン実現に向け、まい進を続けている。
Tomoyasu Way Of Life 「生きるをあそぶ」をデザインするための10個のルール