2030年に向けた戦略構築においてサステナブルというキーワードが非常に重要になる。SDGs・ESG経営研究会では、「未来の社会課題を解決するための新たな事業を創造する」というテーマのもと、ビジネスとしてSDGsに取り組んでいる先進的な企業を紹介する。また、デザイン経営モデル研究会との合同開催とすることで、「体験価値」と「自社らしさ」を創るデザインの力を体感。
第1回では、東京大学生産技術研究所より、SDGsへの取り組み方とデザインシンキングを学んだ。
開催日時:2023年9月26日(東京開催)
生産技術研究所 本間 健太郎 氏
生産技術研究所 内倉 悠 氏
はじめに
東京大学DLXデザインラボは、デザイナー・エンジニア・科学者間の密接したコラボレーションにより、革新的な製品やサービスのプロトタイプを作ることを目指している。また、産学官で連携し、フォーラムや展示会、ワークショップを行い、これらの活動を通じてデザインエンジニアリングの手法に関する知見を広め、次世代の育成を行っている。
生産技術研究所の様々な先端技術の中から、デザインによって社会に展開可能なイノベーションの種を探し出すことで、「デザインの力で科学を変える」取り組みを実践している。
まなびのポイント 1:デザインの必要性を学ぶ
なぜビジネスにデザインが必要なのか。それは、研究・開発と社会実装をデザインで結びつけるためである。言葉にならないものを形にして、開発サイクルを加速化させることにより、デザイン投資1に対して4倍の利益を生み出し、上場企業の株価は2.1倍になるとの検証もある。
また、デザイナーは観察の達人であり、顧客の潜在ニーズの発見を主導することで、言葉にならないものを形にして、開発サイクルを加速化させている。
デザイナーは思考プロセスにおいて、①ユーザーへの理解と共感、②課題の定義、③アイデア創出・創造、④試作、⑤テスト・フィードバック、という5つのステップを踏む。
①~⑤を繰り返すことで、少しずつ進化・改善し続け、思考のプロセスをチームに浸透させていくことができる。
出所:価値創造デザイン推進基盤 HP
まなびのポイント 2:デザイナー特有の思考プロセスを学ぶ
デザイン思考の全体像とプロセスを整理すると、以下のようになる。
(1)未来の兆しを見つける:10年先を見ながら、リサーチする
(2)未来のシナリオを創る、妄想する:兆しをマッピングし、世界観をつくり込む
(3)ペルソナ設計:登場人物を明確に描き、誰にどのような価値があるか設計する
(4)問いを立てる:「どうすれば何とかできるか」問いを立て、解決策を出す
(5)アイデア創出:ボトムアップ型やブレインストーミング型が大部分を占める
(6)プロトタイプづくり:アイデアを体現化し、プロトタイプとする
(7)テスト:プロトタイプを通じて、アイデアの実践を繰り返す
(8)(4)~(7)を反復する
まなびのポイント 3:デザイナー特有の思考プロセス体感する
食料問題を題材として、「デザインシンキング」(ビジネスにも活かせるデザイナー特有の思考プロセス)を体験・学習するワークショップを実施。東京大学DLXが培ってきた、ペルソナを活用してアイデアを創出・検証する方法を体験学習した。
具体的には、強制連想カードを使用したアイデア出しや、高速壁打ちによるアイデア検証など、アイデアの探索幅を広げる練習を繰り返すことで、プロジェクト立ち上げにも活かせるスキルを身に付けた。
グループワークのテーマ「食糧問題」
グループワークの「アイデア創出」