採用を経営課題と捉え、全社的に推進していく「戦略採用」を実践する企業に、そのエッセンスを学ぶ戦略採用研究会。当研究会では、採用の成功事例を研究し、採用難の時代でも自社の戦略にマッチした人材を獲得するためのイノベーションのヒントを提供している。
第5回は丸天産業(愛知県)を訪問。オフィス見学と講義を通じ、「採用ブランディング」の学びを深めた。
同社の採用ブランディングの本質は、人材採用を通じた組織風土改革と採用戦略の見直しにある。当日は採用認知度・企業理解度の2軸で同社の採用広報施策を整理した上で、参加企業同士の情報交換、タナベコンサルティングのコンサルタントによる解説・アドバイスを実施。自社の採用課題に応じ、課題を整理する考え方について研究することができた。
講師:株式会社丸天産業
総務人事部 部長 竹内 理恵 氏
はじめに
丸天産業の創業は1950年。『未来を変えよう、「人」と「空間」のチカラで』というパーパスのもと、空間デザイン会社として名古屋を拠点に展開する。
同社はオフィス移転、ファシリティマネジメント、オフィスプランニングなどのオフィス空間に関する業務やオフィス家具販売などを手掛ける。最近の「働く場所」がICT・環境・制度を軸に構成される中、丸天産業は「環境」を主軸とする提案に注力。綺麗なオフィスを作るだけではなく、ダイバーシティ、人材確保、会社風土、長時間労働などクライアントの抱える課題に対してソリューションを提供しているのである。
大学、病院・市役所などにも導入実績があり、東海地方の大学に通う学生の大半は丸天産業が提案した空間や商品を使っているという。今回は丸天産業のこれまでの歩み、採用への取り組み、採用ブランディングについて理解を深めた。
2023年で創業73年を迎える丸天産業。2023年10月、新たなパーパス「未来を変えよう、「人」と「空間」のチカラで」を第二の創業の思いとして策定
まなびのポイント 1:社長直下の業務改善チームで人財定着・採用強化
2018年、社長直下の組織として業務改善チーム「MARUTEN2.0」を発足。目標を「独自の付加価値を提供する企業となる」とし、福利厚生(代休制度など)の整備、HP更新などの見直しを行った。委員会と称し少人数のチームにすることで、自分ゴトとして会社を良くしようと考える社員が増え、社内の人材定着と採用強化が進んだ。
実際、従来は採用活動を総務のみが行っていたことが課題であったが、現在は採用活動やインターンシップを全社で行い、他部署と連携した採用活動に変革できている。インターンシップの効果もあり、大学内でPRもできたことで、新卒採用の母集団を40倍に拡大。媒体などに頼らない独自の採用ブランディングを通じ、新卒採用に成功している。
丸天産業の事業領域。働く空間に関する悩みを解決し、最適なワークプレイス空間を実現している
まなびのポイント 2:オフィス見学を通じた採用のインナーブランディング
同社は2023年6月竣工の新オフィスを大学生のインターン活動やゼミで利用してもらうことで、採用活動に繋げている。新オフィスのデザインは社員がアイデアを出して考案。自分たちの働く環境を自分たちで作ることで、社員のエンゲージメントを向上させている。
オフィスは、春(1階)、夏(2階)、秋(3階)、冬(4階)のテーマでデザインされ、社内の随所で社員が交流しやすい仕組みを導入。例えば社内自動販売機は、社員2名で購入すると無料(福利厚生)になる仕組みにし、部署間を超えた交流を図っている。
また、社外からのオフィス見学も実施。実際に働く場所を見学してもらうことで、丸天産業で働くイメージを掴んでもらい、採用や採用後の定着につなげている。
社員がコミュニケーションを取りやすい工夫を随所に取り入れた新オフィス。
オフィス見学を受け入れたり大学生に利用してもらうことで、採用ブランディングにつなげている
まなびのポイント 3:世代育成プロジェクトによる、若手社員とシニア社員の交流
丸天産業には特徴的なプロジェクトが2つある。1つ目は、「MARUTENアカデミー」という丸天産業独自の社内研修制度である。世代ごとにプロジェクトを組み、プロジェクトメンバー主導で各階層にテーマを設ける。社員の豊かさとお客様の成長を同時に実現するための、ユニークなプロジェクトである。
2つ目の「若手育成MARUTENプロジェクト」は、若手社員とシニア社員が5つのグループに分かれ(新オフィス運用、パートナーとの交流、社内イベント、環境整備、お客様向けのイベント)、社長・役員・幹部層に企画を提案する。実際にプロジェクトを運営することで、若手社員からの意見が多く上がるようになった。プロジェクトを通じ、自身のキャリアアップをイメージすることができ、風通しの良い社風の醸成にもつながっている。
※写真は講演資料より抜粋