物流業界は、業務が忙しいにもかかわらず営業利益率が2%未満の企業と、荷主と直接取引し、営業利益率5%以上を維持している企業の2つに二極化している。そのような中、当研究会ではステークホルダーから“選ばれ続ける”物流会社になるためのヒントを紹介している。
第5回は、北海道・関東圏で物流サービスを展開する共通運送の講義・現場視察を通じて、共通グループ売上高500億円実現に向けた4つの重点経営テーマについて、同社の代表取締役社長である永原敏雅氏より学んだ。開催日時:2023年6月29日、30日
代表取締役社長 永原 敏雅 氏
はじめに
共通グループは、共通運送含め7つのグループ会社(共通商事、北海道共通サービス、共通ロジ、トップワーク、キョーツー、丸一共通運送)でグループ経営を行っている。同社は農産物や加工食品といった食料品の取り扱いに強みを持っており、冷凍・冷蔵食品の保管やセンター通過型の食品仕分配送業務、北海道内長距離輸送、本州との長距離輸送などを手掛けている。
今回の講義では、共通グループの売上高500億円実現に向けた取り組みとして、人財力・DX・従業員エンゲージメントの向上・営業活動という4つの重点経営テーマついてお話をいただいた。
⑴人財力
「自立し共に認め合い、『経営理念』を実現する人財」を求める人材として定義し、教育計画や人事評価制度へ反映
⑵DX
社員の基本的なIT知識の理解やボイスピッキングを導入
⑶従業員エンゲージメントの向上
社員食堂の開催や海外出張の実施
⑷営業活動
営業戦略ディスカッションの実施
ほかにも、理念経営では社員の思いを込めた使命や理念策定の経緯とポイントについて解説いただいた。
まなびのポイント 1:社員を巻き込み共通グループ売上高500億円を目指す
前述の取り組みだけでなく、「共通グループのビジョン達成に向けた社員を巻き込んだ経営テーマの加速化」が挙げられる。
人財力の強化では「次世代戦略会議」を開催し、「共通グループ売上高500億円の実現に向けた成長戦略」を社員自ら考え、経営陣へ提言するプロジェクトを実施。営業活動では、「500億企業にふさわしい社員になろう」「身の丈を超えた大きな望みを持って行動しよう」という考えのもと、東京都にある47階建ての高層ビルを借りてディスカッションを行い、通常の業務から離れた環境で斬新なアイデアを生み出している。ほかにも、インドネシア人技能実習生を受け入れる際の面接時には社員を海外に派遣し、広い視野の醸成や従業員エンゲージメントを高める取り組みも行っている。
物流現場視察に当たっての事前説明
まなびのポイント 2:社員の気持ちを体現する理念経営の実現
同社は使命として、「私達は走り続けます 夢と感動を届け、心豊かで笑顔あふれる未来を創るために」を掲げている。策定に当たり、「社員全員が心に抱く想い」を言語化するためのプロジェクトを始動。策定した使命を社内に浸透させることで、社員の共通グループへの参画意識を高めている。またグループ社風をつくる取り組みとして、感謝祭などのイベントを適宜開催して「共通らしさ」を追究している。
今後は共通グループをホールディングス経営へ移行し、事業会社ごとの使命策定も見据える。
まなびのポイント 3:本社物流倉庫・物流センターの強み
FK第6センターは大手食品メーカーからの完全委託を受けた物流倉庫で、北海道内の量販店や問屋への仕分け業務を提供し、配送部門と倉庫を統合した一気通貫型のサービスを展開している。
同センターの強みは大きく次の3点だ。1つ目は、立地条件である。高速道路や空港へのアクセスが良く、さらに札幌市までの距離も6キロと通勤に便利である。2つ目は、最新の荷役機設備の導入である。これにより社員の負担が軽減され、作業効率も向上している。3つ目は、リスク対策である。非常電源やセキュリティー管理などのBCP(事業継続計画)対策が整備されており、荷崩れを防止する仕組みも備えている。
物流現場視察の様子