戦略人事研究会では、「事業と連動した戦略人事を実践する」という企業側の視点と、「社員の活躍を最大化させる」という社員側の視点から、現代に不可欠な戦略人事と組織パフォーマンスを追求していく。
第3回は「戦略的な経営システム」をテーマに、先駆的な取り組みをしている2社にご講演いただいた。
開催日時:2023年3月29日(大阪開催)
執行役員 アシスト本部⾧ 森本 育宏 氏
はじめに
大阪市に本社を構える三和建設は、中堅ゼネコンとして食品工場設計・建設の「ファクタス」、特殊倉庫建設の「RISOKO」、賃貸集合住宅設計・建築の「SI200」の3ブランドを主軸に事業を展開している。
森本氏は2003年に同社に入社し、現在は執行役員としてアシスト本部に所属。経営理念である「つくるひとをつくる」の考えに基づいた、一貫した成長型・理念共感型の取り組みを実施している。経営理念をベースとしたアカデミー(社内大学)による社内教育体制の構築や、「育成評価」や「行動評価」といった評価項目の可視化による、個人の成長実感が得られる新人事評価制度についてご講演いただいた。
まなびのポイント 1:社員をどう成長させるか:アカデミーの設立へ
かつての同社は現場でのOJTに育成を任せており、教育が属人的で偏りのある状態であった。理念に沿った会社を目指し、SANWAアカデミー制度を構築。育成体系を整えた。
SANWAアカデミーでは、「専門技術力」と「統合力」を高めるためのカリキュラムが組まれており、講師は全て自社の社員が務めている。専門技術力では、実践に生かすための体験型のプログラムや、基礎づくりのための理論・概論中心の講座で構成。統合力では、知識の幅を広げるべく、ゲスト講師による講演や他社の作業所見学、社長講演などで構成されている。これらの2軸に対して、機能組織別・グレード別に講座シラバスを作成し、「ひとづくりCloud」という受講管理システムを導入した。
2015年に「SANWAアカデミー」を設立。「専門技術力」と「統合力」を高めるためのカリキュラムを年間約60講座実施。項目や講座内容をブラッシュアップしながら、体系的・継続的に取り組んでいる
まなびのポイント 2:新人事評価制度のポイント(職務職能評価)
同社では次の4点をコンセプトに、新しく人事評価制度を構築した。①成長実感、②評価項目の可視化、③システムによる評価と進捗管理、④目標設定・振り返りサイクルである。評価項目は「職務職能評価」「行動評価」「業績評価」「育成評価」で構成されている。
例えば、職務職能評価は職務に必要な知識・技術を積み、習熟レベルが上がり、一人前に仕事をできるようになったかを評価する。
評価の重点項目を、被評価者が5個選定することができ、月に1度の上司面談を通じて、任意で項目を入れ替えることも可能。毎回の上司面談の際に仮評価が毎月実施されるため、振り返りのサイクルも回りやすくなる。
社員は大きく4つの階層に分けられており、新入社員は1グレードからスタートする。一般職・中堅職では行動評価と職務職能評価、管理職区分からは行動評価と業績評価が行われる。全階層共通で育成評価が適用される仕組み
まなびのポイント 3:新人事評価制度のポイント(行動評価/育成評価)
評価項目のうち行動評価は、経営理念や行動指針に基づく行動を日常的に取れているかを評価。若年層に対しては、行動の習慣化に注力すべく、業績評価は行わないが、管理職層からは業績評価も実施する。さらに、360度評価を行うことで、自身の行動を周囲も認めているのか、行動項目に対する、より客観的な事実を参照できる仕組みとなっている。
評価項目のうち育成評価は、全グレードの社員を対象に、自身の成長に向けて意欲的に学びを得ているか、自身の技術や知識・経験を関係社員にどれだけ教えているかについて評価する。若年層に対してはアカデミーへの「出席数」を、ベテラン層に対してはアカデミーへの「登壇数」が評価の対象となる。
受講管理システム「ひとづくりCloud」を通じてレポートを提出。評価結果へと自動反映される仕組みになっている。また、採用メンターに選ばれた場合には、自動で5Pが付与される