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研究リポート
学校・教育ビジネス研究会
ICT教育・GIGAスクール構想やビックデータ活用など、時代の先を行く尖った企業のアイデアから、自社の"価値を再発見"をするためのヒントを探していきましょう。
研究リポート 2023.05.11

学園100周年に向けた取組みについて:学校法人四條畷学園

【第3回の趣旨】
当研究会では、大きな経営テーマの1つである「人材育成」について、企業による社員教育ではなく、学校教育現場の取り組みを中心に紹介する。教育の最先端は学校教育現場にあり、保育・幼稚園から大学に至るまでの教育モデル・コンテンツを研究することで、自社の人材教育に生かすことができる。第3回では、日能研関西と四條畷学園を訪問・視察。縮小するマーケットの中で生徒募集・集客に成功している先進事例からポイントを学んだ。
開催日時:2023年3月2日、3日(大阪開催)

法人本部事務局
全学広報 薛翔文 氏

 

はじめに

 

四條畷学園は「報恩感謝(ほうおんかんしゃ)」の精神の下、「教育の目的は人をつくることであり、人をつくることは、徳、知、体三育の偏らざる実施とその上に立つ品性人格の陶冶に依ってのみ可能」とし、牧田宗太郎と弟の牧田環、その妻である牧田メイによって四條畷高等女学校として創立した。その後、幼稚園、中学校、高等学校、小学校、短期大学、大学、保育園を開設し、総合学園として発展。卒業生は5万人を超える。
教育理念を引き継ぎ、豊かな個性と、他人を思いやり、感謝できる人格を育む人間教育に注力し、2026年に100周年を迎える同学園。業界動向の変化が著しく、また厳しい環境の中で、今後どのように維持発展していくのか、その戦略に迫る。


四條畷学園高等部本館の外観。中高一貫コースが設けられており、同じ敷地内には中学校などが併設されている


 

まなびのポイント 1:専願率50%以下からのスタート

 

現在、広報を担当している薛(せつ)氏が着任した2019年当時の同学園は、進路指導に特徴がない上、進学先は推薦および内部短期大学進学、就職先も縁故が少なくなかった。地域の受け皿校としての「学園高校」でも専願率は50%以下であり、ピーク時には500名いた新入生は300名にまで減少している状況であった。

 

具体的な内容やコンセプトはなかったが、「このままでは、7年後の2026年に創立100周年を迎えられないのではないか」と薛氏は考え、当時の教務部長、広報部長とともに改革へのチャレンジを始めた。


四條畷学園大学看護学部の校舎外観。看護師資格取得に特化し、看護師基礎教育にこだわったカリキュラムが組まれている

まなびのポイント 2:常に「何のために」「誰のために」やるのかを問い続けてきた

 

改革を進める中で、薛氏は「とにかく話を聴くこと」に注力したという。法人内の現状把握と「お役立ち」を探し、円滑に改革が進むよう各所との関係性を強化した。また、常に「なんのためにやるのか」「誰のためにやるのか」を自身にも、周囲にも問い続けたそうだ。2020年から始まったコロナ禍で授業への対応に追われる中でも、常にそ視点は外さなかった。

 

改革の具体的内容としては、コース改変計画や中学校・高等学校における広報戦略の見直し、組織の次世代メンバーによる長期目線会議の実行などが挙げられる。その結果、2022年度時点では、専願率が100%、入学者も倍増した。変革の成功要因は、組織の中で共通の価値観を醸成できたことだと言えよう。

 

まなびのポイント 3:数字で特徴を捉え、共感の接点を発見し改革を推進

 

「数字」と「共感」を大事に改革の推進した薛氏。具体策としては「過去のデータ比較」と「コンセプト設計×ペルソナ設計」が挙げられる。

 

過去のデータ比較は、オープンキャンパスへ参加している生徒数、保護者数、保護者同伴数を把握し、その中で受験・入学する人数を把握。保護者の参加数が増加していることを基にプロモーション施策を立案した。また、コンセプト設計×ペルソナ設計では、「コンセプト(四條畷学園らしさの明確化)」×「ペルソナ(どんな子が入学するか、どんな親か)」を基にブランドコンセプトを設計。 「共感の接点の発見(ペルソナがどのようなコンセプトに共感するか発掘する)」が入学志願者数増加につながった。


四條畷学園らしさ」とターゲットの「ペルソナ」を掛け合わせプロモーションを展開。
公式Instagram(左)と、公式YouTube(右)によるプロモーションのイメージ