【第1回の趣旨】
当研究会では、“食す”のEATになぞらえ、Engineering(技術進化・フードテック)・Association(新結合・オープンイノベーション)・Transformation(デジタル改革・業態転換)を推進している企業から、業種の特徴を取り入れた戦略や独自のノウハウなど、自社が創造すべき価値についてヒントを学ぶ。
第1回目はグリーン・フードマネジメントシステムズと、山田食品産業をゲストとしてお招きし、従来の価値観に捉われず、新たな付加価値を生み出す取り組みについてお話いただいた。
開催日時:2023年3月10日(東京開催)
代表取締役社長 山田 裕朗 氏
はじめに
「心をこめた麺づくり」を使命とし、製麺所としてスタートした山田食品産業。1980年には関東一円の山田うどん店で使用される全ての食材を製造・供給する「入間セントラルキッチン」を設立した。埼玉県では黄色いかかしのトレードマークを知らない人はいないほどソウルフードとして地域のお客様に愛されており、著名人にも多くのファンがいる。
時代に先駆けて女性管理職を積極的に活用し、優秀な店長をスーパーバイザーに起用するなど積極的に女性視点の経営を実現したのは同社の特長の1つである。ファミリー層や女性を取り込んだ店づくりをはじめ、事業承継を機に新たに挑戦してきた取り組みについてお話しいただいた。
「日本人の心から生まれたうどん、そば、ラ-メンを、私たちの手で大切に育てよう。お客様の身になって、その心にいつも満足を与えることを目標にしよう。優れた味を、より安く早く一人でも多くの方に、奉仕することを心掛けよう。」(経営理念「山田の心」)
まなびのポイント 1:経営理念『山田の心』
山田食品産業は、顧客には「食べる喜びと幸せ」、取引先には「感謝の気持ち」、従業員には「働く喜びと幸せ」を提供していくことを原点に事業を展開している。基になっているのは経営理念である『山田の心』だ。
同社は顧客・取引先・従業員の「喜び」のため、時代の変化に合わせて自社を変革させてきた。近年では、ファミリー層や女性の一人客でも入りやすい店舗へ転換するために、2018年に屋号を「山田うどん」から「ファミリー食堂 山田うどん食堂」へ改めたことが例として挙げられる。また埼玉という地域にこだわり、どの店舗でも「同じ」であることを感じさせるよう、直営店で店舗を展開しているのも特徴である。
環境の変化に適応し、提供する価値を変え、「喜ばれ方」をデザインする
まなびのポイント 2:食材への強いこだわり
同社は「高品質」にとことんこだわり、よい食材を使う。加えて、鮮度や安全性にも手を抜かない。とりわけ麺は試行錯誤を何度も重ねている。例えばうどんは、外国産小麦から国産小麦100%のものに変更することで、これまでの山田うどんにはない「コシと風味」を兼ね備えたうどんを作り上げた。そばは、ゆでそばから生そばに切り替えたことで店のこだわりをPRする自慢のメニューとなった。また、2021年にオープンした新業態「埼玉タンメン山田太郎」も好評を博しており、山田うどん食堂が密集しているエリアの一部店舗を埼玉タンメン山田太郎にリニューアルするなどして、今後店舗拡大を図っていく戦略だ。
提供する商品の食材・鮮度・安全性にこだわっている
まなびのポイント 3:3つの価値と人づくり
店舗は女性スタッフが活躍しており、女性の店長(管理職)が全体の半数を占める。FC店舗が増えたことで本部の目が行き届かなった時期があったものの、FC展開から直営店経営に切り替え、さらに優秀な女性店長をスーパーバイザーとして起用することで管理面を強化できた。直営店に切り替えたことで、オペレーションがばらばらにならないような工夫や管理がしやすくなったという。同社はファミリー層や女性客を意識した店づくりに力を入れている。女性が一人でも入りやすい雰囲気を意識し、また、ファミリー層を取り込むことによって顧客同士が気兼ねなく過ごせることからリピーターにつながっている。
多くの女性スタッフが活躍している。店長(管理職)のうちの半数は女性