【第5回の趣旨】
当研究会は、「自社のファンを創造・育成するためのコミュニケーション設計を最先端事例から学ぶ」という趣旨のもと、ゲスト講師をお招きし、LTV向上の成功ポイントについて事例を交えながら紹介している。
第5回は、BtoBマーケティングおよび広告の効果測定についてテレシーに学び、パーパス経営と企業ブランディングについてたきコーポレーションIGIに学んだ。
カンパニー代表 井上 元気 氏
アートディレクター 大入 将太郎 氏
アートディレクター 木野村 繁則 氏
はじめに
たきグループは、たきコーポレーションを中心とする、広告制作や企業・商品のクリエイティブを手掛ける企業である。たき工房をはじめとした各社を2023年に統合・再編し、デジタル、グラフィック、ブランドデザイン、UXデザイン、それぞれの専門領域に特化した制作会社「ZERO(ゼロ)」「ONE(ワン)」「IGI(イギ)」「IDEAL(アイデアル)」を新設。2022年3月にスタートした映像制作会社「FOCUS(フォーカス)」、名古屋の制作会社「TAKI iC(タキアイシー)」と併せ、全部で6ブランドの制作カンパニーとなった。
その中でIGIは、「パーパス」×「ビジュアルアイデンティティー」で企業のあらゆる課題の意義をカタチにしていく、ブランドデザインに特化したカンパニーである。
多様化した顧客のニーズに応えるため、また自社で働く社員の指針として最も重要な「パーパス=存在意義」を追求し、企業やブランドの可能性を最大化するブランディングについて、カンパニー代表の井上元気氏、アートディレクターの大入将太郎氏と木野村繁則氏に講話いただいた。
パーパスの定義
出所:たきコーポレーションIGI講演資料
まなびのポイント 1:パーパスに基づいて行動を起こせる組織にする
先行きが不透明な今の時代、顧客や社員は「この会社は経済的な価値だけでなく社会的な価値も創出しようとしているのか」と、企業の姿勢や判断をシビアに注視している。パーパスは、企業が達成すべき課題(責任)であり、在るべき未来(理想)を示す揺るぎない決意でもある。さらに重要なことは、社員にパーパスに共感してもらい、理想の実現を共に目指してもらうことだ。
そのためには、理想と現実のギャップを埋めるアクションが必要である。重要なのは、①空気づくり(「行動を起こして良い」という社内のカルチャーづくり)、②パーパスと自分の業務の結び付きの実感だ。「視覚メッセージを配信する」「全社員を巻き込む」「全員が振り返り未来を考える」といった大胆かつ地道な活動が重要である。
パーパスを生かすには、アクセル(社員がアクションを起こせるか)が大切
出所:たきコーポレーションIGI講演資料
まなびのポイント 2:ブランディングは明るい未来をデザインするための投資
パーパスを実現するには「覚悟」と「熱量」が必要である。覚悟とは、リーダー(経営層)の「やり切る」という強い意思。熱量とは、人的投資と経済投資である。
人的投資とは、パーパスの策定から浸透にまで主体的に関わる人材を選出したり、ブランディングの専門部署を設置したりすること。経済投資とは、策定時の投資だけでなく、浸透に対する投資もあらかじめ検討しておくことである。これにより、中長期的な取り組みがスムーズに実現可能となる。
まなびのポイント 3:ビジュアルアイデンティティーとブランドパーソナリティーの重要性
ビジュアルアイデンティティー(VI)とは、企業やブランドのロゴ、カラー、シンボルマーク、ブランドカラー、フォントなどの視覚的な要素を統一し、企業の価値やコンセプトを可視化することで、ブランドメッセージを伝えることである。理念の可視化、経営戦略との整合性、視認性の確保といった役割を果たすため、新事業や組織再編の旗印になり、ブランディング効果も高い。また、企業や商品・サービスの認知度向上、売り上げアップ、社員のモチベーションの向上、理念の自分事化・行動化を促すといった効果もある。理想的なVIとは、理念が反映されており、社員が自発的な行動を起こすきっかけとなるもの。時代に合わせてアップデートし続けることが重要である。
ブランドパーソナリティーとは、企業やブランドを人に例えたときの「人格」に当たり、ステークスホルダーから見たブランドイメージの統一基準となる。これを確立するとブランドを明確に認識できるため、VI制作においても重要な要素となる。
企業の理念や思い、文化やアイデンティティーを見つめ直して定義し、誰もが分かるカタチで共有することにより、アウター/インナーの両面で効果的なブランディングを行うことができる。
パーパスと現実が乖離(かいり)していると、顧客や社員の不信感が高まって離脱を招く。策定だけでなく継続的な浸透が重要
出所:たきコーポレーションIGI講演資料