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研究リポート
建設ソリューション成長戦略研究会
人件費・資材の高騰、地方の衰退など、外部環境の変化に合わせて提供価値を進化させている企業を研究し、建設業界の発展に寄与する機会を作っています。
研究リポート 2023.07.21

小田島組が目指す未来の建設業経営 小田島組

【第5回の趣旨】
建設ソリューション成長戦略研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つ様々な企業の現場を「体感」する機会を創出し、経営改革・業務革新のヒントを提供する。
第5回は、人口減少・少子高齢化の進展が顕著な東北・岩手県における定住・交流人口の拡大や、20名を超える若手社員の採用と育成・定着といった実績を上げる企業2社(オガール、小田島組)に講演いただいた。

開催日時:2023年6月21日、22日(岩手開催)

株式会社小田島組 代表取締役 小田島 直樹 氏

 

株式会社小田島組
代表取締役 小田島 直樹 氏

 

はじめに

小田島組は、1970年に創業し、岩手県北上市に本社を置く建設会社である。長年、主に道路改良工事や舗装工事、防潮堤工事などの公共土木工事を展開。近年はITを活用して、他の土木工事会社の現場をサポートする事業(写真整理業務等)を展開している。

 

売上高は約30億円、従業員数は176名である。平均年齢は33.4歳、そのうち10代・20代の社員の割合が約55%と多くの若い社員が活き活きと活躍。業界特有の従来の固定観念やしがらみにとらわれることなく、事業を推進しており、注目されている。

 

徹底したIT化による生産性の向上や経営改革の理解を深める社員教育に積極的に取り組み、首都圏の建設会社に負けない働き方を目指している。

 

小田島組


 

まなびのポイント 1:ルールを守って常識を打ち破る!

同社は、自社を業界のファーストペンギンと位置づけ、以下の姿(=スマートカントリーという)の実現を目指している。まずはじめに、高い生産性により、首都圏の企業並みの賃金体系の実現である。次に、コンプライアンスは重視しながらも、業界や地方特有の『従来のしがらみ』を断ち切り、常識にとらわれないことに挑戦する姿勢である。

 

最後に、未来に希望が持てる人材を育て、人材が都会に流出しない魅力ある地方を作る取り組みの推進である。例えば、生産性改善の取り組みとして通勤革命がある。同社では多くの社員が車通勤をしていたが、電車通勤を推奨し、電車内でできる業務をすることで通勤時間を労働時間とした。

 

その結果、無駄な時間が削減され、交通事故の減少、渋滞緩和、CO2削減をすることができ、社員の自己肯定感が高まる効果があったという。

 

 

大学のキャンパスをイメージした開放的な本社オフィス
大学のキャンパスをイメージした開放的な本社オフィス

 

 

まなびのポイント 2:IT活用と徹底した業務細分化による働き方改革

同社はITを活用し、徹底した業務の細分化を行い、高い生産性の実現を進めている。経験の浅い若手社員でも対応できる業務は若手へ集約し、高い技術力を要する業務はベテラン社員へ集約するというものである。業務を経験やスキルに合わせて、特化することで社員の業務習熟度が高まり、若手・ベテランの双方において、業務の質の向上、ミスの減少、業務時間の短縮に繋がったという。

 

取り組みの中でトライ&エラーを繰り返し、その過程においてITのノウハウが蓄積され、生産性向上に向けた意識が醸成されることこそ、同社最大の強みとなっている。

 

現場サポートサービス「カエレル」

 

 

まなびのポイント 3:現場サポートサービス「カエレル」が現場の残業を月10時間以上削減!

同社では、建設現場の負荷を軽減する取り組みとして、現場サポートサービス「カエレル」を展開している。サービス内容は、他社の現場写真の整理等の業務を請け負うというものである。高得点の現場を担当してきた現場代理人の経験のある社員がリーダーとなり、若いスタッフとチームを作り、「現場経験+IT」で現場を支援している。

 

導入企業においては、1カ月の残業時間が平均10時間以上削減され、本来すべき業務の安全・品質・工程・原価管理業へ集中できる効果があり、全国の建設業へ導入が広がっている。これらの取り組みは、残業時間の減少・IT化による省力化・業務の統一化などが評価され、岩手県から若者雇用促進法に基づいた会社の働き方改革を行ったとして「ユースエール」の認定もされている。

 

現場の写真整理業務をサポートするサービス「カエレル」
現場の写真整理業務をサポートするサービス「カエレル」