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研究リポート
SDGs・ESG経営研究会
2030年までの成長戦略は、環境・社会・経済のサステナビリティへの挑戦です。SDGs・ESGを通してサステナブルなビジネスモデルの再構築について学びます。
研究リポート 2023.07.19

中小企業におけるSDGsの実装 三松

【第5回の趣旨】
2030年に向けた戦略構築においては「サステナブル」というキーワードが非常に重要になる。当研究会は、「社会と企業のサステナビリティを実現し未来を創造する」というテーマの下、ビジネスとしてSDGsに取り組んでいる先進的な企業を紹介する。第5回では、SDGsへ取り組む際の事業存続×SDGs視点での学びを三松から、SDGsを自社のビジネスモデルに落とし込んで企業価値を向上させるポイントを三好不動産から学んだ。

開催日時:2023年5月25、26日(福岡開催)

 

 

株式会社三松
代表取締役 田名部 徹朗 氏

 

 

はじめに

1972年に設立した三松は、シートメタル(薄物板金)加工をベースに各種機械装置の組み立ても行う小ロット製造代行サービス会社だ。月産10万点のうち1個づくりが70%を占めており、1台の試作から数千台の量産まで対応可能である。

 

同社は自社を「縁の下の力持ち」「ロボットSler会社」など、ビジネス業界から切っても切り離せない重要な役割を担うと位置付け、国内は福岡、海外にはベトナム・中国に拠点を構えて幅広い日本企業を支えている。

 

経済産業省の「がんばる中小企業・小規模事業者300社(2014年)」「地域未来牽引企業(2017年)」「スタートアップ・ファクトリー構築事業(2018年)」などにも認定され、日本のモノづくりを支える同社の工場視察と講演を通して学んだ、中小企業のSDGs実装を可能にする3つのポイントを紹介する。

 

 


三松の本社外観

 


 

まなびのポイント 1:外部環境を把握し、自社の貢献価値を定義

同社が掲げるパーパス(存在意義)は、「最先端加工技術の追求とフレキシブルな多品種少量生産でモノづくりを支える企業」。役割は「『ライフサイエンス』『環境』『エネルギー』分野のものづくり支援を通じて、人々の未来を明るく照らす」。自社が社会へどう貢献するのかを文言に落とし込んでいる。

 

同社は、外部環境(環境・社会・経済)に自社がどのように貢献することができるのかという自社の在るべき姿を見つめ直し、経営戦略を構築している。外部環境の視点から自社の役割を定義するアウトサイド・イン・アプローチに基づいた戦略構築が、サステナビリティ経営の実装をかなえているといえよう。

 

 


三松のサービス展開体系図

 

 

まなびのポイント 2:技術レベルの向上を可能にする仕組みづくり

同社は企業内アカデミー「三松大学」で技能教育を行っている。三松大学では、一般社員・パートナーから技術力の高い社員を社内試験・投票により決定し、「三松マイスター」という資格者を輩出する。三松マイスターに認定されるのは難しく、社内におけるモデル人材という位置付けである。この仕組みは、社員のモチベーション向上を図るとともに、全社的な技術レベルの向上や、顧客に提供する商品の品質向上にもつながる。

 

「縁の下の力持ち会社」として全国の企業を支える技術力は、整理された教育体系(三松大学や社内勉強会)と社内資格(三松マイスター)制度を活用した、従業員のモチベーションと学ぶ意欲の向上で実現している。それにより短納期サービスを可能とし、他社と差別化できる競争力やコア・コンピタンスの確立にもつながっている。

 

技術力向上とタレントマネジメントの仕組みを構築した同社は、今後も人材育成環境の整備と仕組みづくりによって自社が選ばれる理由をつくり出していくだろう。

 


社員の教育体系

 

まなびのポイント 3:SDGsの本質を理解し、事業とひも付ける

SDGsを事業活動に実装することは極めて難しい。しかし、自社の事業をSDGsにどのようにつなげることができるのかを継続的に考え、情報のアップデートをし続ければ、そのつながりを見つけることができる。SDGsを本質的に理解するための同社の勉強会では、「環境保全を追求することだけがSDGsではなく、世代を超えて全ての人が自分らしくよく生きられるようにする取り組みが大切である」という結論が出たという。同社はSDGs勉強会で出てきた意見を基に、2050年に在りたい姿を再定義し、全社に共有している。

 

また、2050年に在りたい姿を定義する際には、自社の事業活動をバリューチェーンで整理し、事業活動によってもたらされる社会への影響を「正と負」で区分した。これにより、自社が優先的に取り組むべき経営課題を事業活動ごとに把握。年度計画と中長期的な取り組みへ落とし込むことで、「縁の下の力持ち会社」としての持続的成長につなげている。

 

 


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