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研究リポート
デザイン経営モデル研究会
経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート 2023.07.13

これからの時代のワークスタイルとセンターオフィスのデザイン イトーキ

【第5回の趣旨】
「デザイン経営」とは、デザインを「企業やビジネスモデルそのものを差別化する経営資源」と捉え、受け手側の体験価値を高め、自社らしさを醸成する経営手法である。当研究会では、デザインの力を経営に活用する「高収益デザイン経営モデル」実践企業を視察し、経営の現場でデザインがどう活用され、他社との差別化、社員の活躍と成長、地域社会との共創を実現しているかを体験。
第5回は、三井不動産株式会社の講義で「街づくり型物流施設「MFLP」に見る新たなロジスティクスのデザイン思考」、東京大学の講義で「デザインの力によるイノベーション創出」、株式会社イトーキの講義で「これからの時代のワークスタイルとセンターオフィスのデザイン」についての秘訣を学び、デザイン経営の本質に迫った。

開催日時:2023年6月1日、2日(東京開催)

 

株式会社イトーキ 執行役員 ワークスタイルデザイン統括部長 岡田 直之 氏

 

株式会社イトーキ
執行役員 ワークスタイルデザイン統括部長 岡田 直之 氏

 

 

はじめに

 

国を挙げた「働き方改革」の取り組みやコロナ禍による新生活様式普及が進んでいる。そうした中、イトーキは“ 明日の「働く」を、デザインする。” をミッションステートメントに掲げ、人びとの充実した「働く」という活動を支援するために既成概念にとらわれない様々な取り組みを行っている。

 

中でも、2018年に開設した新本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK」では「自由」と「自律」をキーワードに、「デザインの力」を活用し、社員にイノベーションをもたらす社員体験価値デザインを実現している。働く上で欠かせないオフィスのもたらす力を最大限活かすための、イトーキの考えるセンターオフィスデザインに迫った。

 

 

新本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK」

 


 

まなびのポイント 1:働くこと=アイデンティティの確立

 

働き方改革や新生活様式の普及に合わせ、人々の「働く」ことへの価値観も従来から大きく変化している。仕事をするにはオフィスが必要という概念はもはやなくなり、最も生産性が高くなる働き方を自身の裁量で決めるスタイル(Activity Based Working)が浸透しつつある。生産性を高めるための要素は、オフィスという場所だけでなく、時間、働く相手など、自身の能力を最大限発揮できる環境を創り出すために必要なものすべてのことである。

 

そこには「綺麗なオフィス」だけでなく、働き方の制度の改革も必要であると岡田氏は言う。オフィスはあくまで環境を造り上げるための一助であり、ゴールではない。現代人の価値観に合わせて「働く」に関わるすべてをイノベーションすることが、真の働き方改革である。そうすることで、「働く=やらなければならないこと」ではなく、「自己形成する上で“思わず取り組みたくなる”」という意識に変わり、QOL・QOW向上にも繋がっていくのである。

 

 

イトーキが導き出した次世代の働き方戦略「XORK Style(ゾーク・スタイル)」のフレーム。企業とワーカーそれぞれの価値観を尊重し、「働く」ことへの価値デザイン方法をまとめている
イトーキが導き出した次世代の働き方戦略「XORK Style(ゾーク・スタイル)」のフレーム。企業とワーカーそれぞれの価値観を尊重し、「働く」ことへの価値デザイン方法をまとめている

 

 

まなびのポイント 2:今とこれからの価値観に応えるセンターオフィス

 

コロナ禍においてハイブリットワークが浸透し始めた最中、オフィスの必要性について世間で議論されていたのは今でも記憶に新しい。しかし、次第に「オフィスはむしろ大切にすべき場所」というテーマに議論が変遷した。それは、日々進化する多様な価値観を受け入れる場所としてオフィスの在り方が問われているからではないだろうか。

 

その状況を踏まえ、リスク対応とポテンシャル活用を重視すべきだと岡田氏はいう。例えば組織への帰属意識の低下といったリスクや、テクノロジーを活用したダイバーシティ経営などのポテンシャルである。なおかつ、センターオフィスは業務をする場所ではなく、リアルだからこそできることを実現する場所という性質も忘れてはならない。

 

“日々進化するワークスタイル”と“オフィスの在り方”の両面を適切に捉え、見える形でオフィスに還元することが「センターオフィス」に求められる役割といえるだろう。

 

人が行き交うコラボレーションスペース。家具から導線まで細部すべてで空間演出を行い、ステークホルダー同士のコミュニケーションを醸成している
人が行き交うコラボレーションスペース。家具から導線まで細部すべてで空間演出を行い、ステークホルダー同士のコミュニケーションを醸成している

 

 

まなびのポイント 3:個を尊重する空間デザイン ー働く場所から居場所への変革ー

 

現代のセンターオフィスとして求められるのは、社員体験価値・社会価値がデザインできる空間だとイトーキは提唱する。デジタルテクノロジーが発展しオンラインでの活動が当たり前になっているからこそ、リアルであることの存在意義が重要視されている。例えば、オフィス用品とそれらが造るオフィスというモノ軸や、会社の同僚との信頼感を育む場というコト軸など、オンラインでは成しえないことをオフィスという空間が創り上げていくのだという。

 

その集大成として、「ITOKI TOKYO XORK」を2018年に竣工した。ここはイトーキの考える「次世代のWork Style」を表現した空間であり、単なる働くための場ではない。“人とのコラボレーション”“心身の健康を保つ”“自社製品の体験”など、機能・品質・情緒すべてを網羅する空間である。この空間が社員の自己形成を実現し、オフィスが自身の居場所であるという新たな価値観をデザインしているといえるだろう。さらにはビジネスとしてのプラスインパクトも与えることができ、極めて高い社会貢献価値をデザインしている。

 

イトーキは今までもこれからも、人々の最適な生き方を叶えるオフィスを創造することに余念がない。そして、従来の働き方を次の次元へと進化させるために、これからもオフィスを通じて明日の「働く」を、デザインするのだ。

 

 

心身の健康を保つマインドフィットネスゾーン。気持ちを切り替え自分と向き合う場とすることで、ウェルビーイングを実現
心身の健康を保つマインドフィットネスゾーン。気持ちを切り替え自分と向き合う場とすることで、ウェルビーイングを実現