建設⽤3Dプリンターで、⼈とテクノロジーの共存施⼯を Polyuse
【第4回の趣旨】
建設ソリューション成長戦略研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を創出し、経営改革・業務革新のヒントを提供する。
第4回は、建設業における「人材育成強化」「DX技術開発」について、先駆的な取り組みを行っているJR九州電気システム、Polyuse(ポリウス)の2社に講演いただいた。
開催日時:2023年4月26日、27日(九州開催)
代表取締役 岩本 卓也 氏
はじめに
近年、建設業界では、高齢化に伴う慢性的な人材不足、全国的な社会インフラ設備の老朽化、資材費の高騰などの課題がある。これらの解決策として、いま建設用3Dプリンターの研究開発が注目されている。
2019年設立のPolyuse(東京都港区)は、日本で初めて建設用3Dプリンター開発を手掛けたベンチャー企業であり、ハードウェア・ソフトウェア・マテリアルまで一貫して自社開発を行っている。
同社は国土交通省の公共工事での技術採択(2022年1月)を皮切りに、2022年度には全国で約30件の3Dプリンター施工を実施。国土交通省「令和4年度インフラDX大賞」(旧「i-Construction大賞」)の「優秀賞」を受賞している。
建設用3Dプリンター(提供:Polyuse)
まなびのポイント 1:長期的な視点で自社の価値と収益を向上させる
国土交通省は「Society5.0」の実現に向けて「i-Construction」の取り組みを加速しており、ICT施工の工種の拡大を進めている。このi-Constructionの取り組みは、建設会社にさまざまな成果をもたらす。
まず、自社の「工事成績評定」における「創意工夫」の点数の向上が期待でき、翌年以降の工事案件への入札で優位性を発揮できるようになる。また、先進的な取り組みへのチャレンジは若手にとって魅力的に映るため、採用にも効果を期待できる。
しかし、取り組みが形となって実を結ぶまでには、それなりの投資と時間を要する。長期的な視点で、自社の価値向上・収益向上へつなげることが重要である。
3Dプリンターで資材を「印刷」(提供:Polyuse)
まなびのポイント 2:建設業界の課題解決の一翼を担う3Dプリンター
3Dプリンターは、データを読み込ませれば、型枠なしで構造物を製作できるという革新的な技術である。従来の工法に比べ、工事に要する時間を大幅に短縮できることが最大の利点である。2012年から海外を中心に開発が進み、2015年より実用化され、現在は中国や米国などで建築・土木工事に取り入れられている。
今後、日本国内のインフラ設備維持工事の増加が予想される一方で、職人の高齢化と生産年齢人口の減少による担い手不足はさらに進行する。このような中、3Dプリンターは、現場の省人化を図り、生産性を高めるソリューションとして、業界の課題解決を図る一翼を担うとして大きく期待されている。
まなびのポイント 3:できるところから「i-Construction」に取り組む
i-Constructionが進まない理由として、次の4つの理由を挙げる企業は多い。①担い手が社内にいない「人的リソース・体制の問題」、②試す現場がない「実施機会の問題」、③施主への許諾が取れない「実施許諾の問題」、④どのテクノロジーを取り入れるかという「技術選定の問題」である。
これらの問題へのアプローチは、まず経営者自身がリーダーシップを発揮し、①の解決策として若手社員へ権限と予算を委譲することが重要である。②③については、同社の経験上、施主へきちんと説明すると、多くの施主が理解を示して協力体制を取ってくれるという。④については、さまざまな技術の中から興味のあるテクノロジーに着目し、できる現場から実践していく「ファーストトライ」が重要である。
3Dプリンターを活用した施工の様子(提供:Polyuse)